141 悪女として歴史に名を残すのもいいでしょう
ルカイヤから下される冷徹な指令に「洗脳機関」の砲兵は背筋に寒いものが走った。
(これはもう戦争だ。だが、指令に従わない訳にはいかない……)
「洗脳機関」の砲兵が照準を上空の輸送機に切り替えた時、それは起こった。
◇◇◇
(ミッドラント社製『フランク』戦闘航宙機!)
高高度で哨戒していた護衛機は急降下すると、対空砲付近に機銃掃射を浴びせた。
対空砲の砲座はあっと言う間に破壊され、砲兵はその場に倒れた。
「すぐに負傷した者を宙港に後送し、他の惑星の医療機関に送って下さいっ!」
ルカイヤが最初に下した指示はそれだった。
「私たちもすぐに駆けつけます。それまで無理のない範囲で持ちこたえて下さい」
ルカイヤたちが到着する前に、旦那さんと坊っちゃんは既に地上に着いていた。
「洗脳機関第五軍団」のレーザーセイバー使いが応戦に前に出る。
後方では、輸送機からアナベルたちも空挺降下を開始する。
(ふふふ。この『銀河の火薬庫』で本格戦闘やろうってんですか? シラネ・スカイ。いいでしょう。貴方となら、二人で『第二次大戦争』の導火線に火を付けた悪女として、歴史に名を残すのもいいでしょう)
ルカイヤは一人そう思った。
◇◇◇
旦那さんは、「洗脳機関第五軍団」のレーザーセイバー使い二名を向こうに回し、互角以上の斬り合いを演じていた。
坊っちゃんは背後でレーザーブラスターを構えながら、旦那さんの戦いぶりを注視する。
拠点工場に籠った「洗脳機関第五軍団」の兵も射撃を中止し、戦闘に見入る。
(…… 旦那さん)
坊っちゃんは気が付いた。
(強くなっている。『ビル・エル・ハルマート』で二人を相手にした時は、苦戦していたのに、今はむしろ圧倒している……)
(強くなっている理由は…… やはり……)
パウリーネとの戦闘だろう。だが、それは裏返せば、パウリーネも強くなっているということだ。
「どうなるかな……」
坊っちゃんは呟いた。




