140 対空砲を使いなさい
空中降下してくる旦那さんと坊っちゃんには地上から強烈な射撃が浴びせられたが、もちろんそれを喰らうような二人ではない。
苛立つルカイヤは次の指示を出した。
「対空砲を使いなさい」
「対空砲……ですか?」
部下は思わず聞き返した。
対空砲で発射された弾は空中で破裂し、破片で航宙機や人間を破壊又は死傷させる。
確かに命中率は通常の銃よりはるかに上がる。
だが、これはもう完全なる「兵器」である。個人戦闘の域を超える「戦争」への導火線になり得る。
そして、ここは「銀河帝国」と「銀河連邦」の勢力圏の境界線にほど近い。言わば「戦争」への「火薬庫」だ。
「銀河帝国」の勢力圏の真っただ中にあり、もみ消しの可能な「ビル・エル・ハルマート」や「アクア3」とは訳が違う。
「構いません。責任は私がとります。対空砲を使いなさい」
ルカイヤは今度は強い口調で言った。
「はっ、はい」
部下は周囲の者に指示を出した。
「対空砲『アハトアハト』出せっ!」
周囲に緊張感が走る。
◇◇◇
黒光りした対空砲はゆっくりと拠点の工場内から引っ張り出された。
「撃てっ」
命令一下、撃ちだされた榴弾は、空中で破裂した。
破片は一面に広がるが、旦那さんがレーザーレイバーを振り回すことで、至近の破片は全て蒸発した。
「こうなることは予想できましたからね。撃ちまくりなさい」
ルカイヤの指示の下、対空砲は次々発射されるが、その全てを旦那さんは難なくクリアしていく。
「これも予想出来ました。目標変更です。目標を旦那さん及び坊っちゃんから、上空の輸送機に変更」




