138 歪んだ愛情やめてください
「あーっ、ルカイヤちゃん。一人笑いしてるーっ。きしょーい」
突如、ツッコミを入れるのはもちろんパウリーネである。
「笑ってなんかいませんよ」
「いーや。笑ってたね。ねえ、何がおかしくて笑ってたの?」
「笑っていませんたら」
「ほーっ。上司のあたしに逆らおうってんだね。なら、こうだっ!」
パウリーネはまたもルカイヤの両脇に手を突っ込み、くすぐりだした。
「きゃははははっ、やめっ、やめて下さいって」
「やめてほしければ、何で笑っていたか白状するのだっ!」
「きゃはは、わ、わたしが何で笑ってたって、いいじゃないですかー」
「いーえ、愛する人のことは何でも知りたいの。それがあたしの愛情」
「きゃはは、そっ、そんな歪んだ愛情やめてくださーい」
「やめないっ! さあっ! 吐けっ! 吐くのだっ!」
「ひぃーっ、死ぬ死ぬっ、笑い死ぬーっ」
◇◇◇
レーダー上に現れた輝点は明らかに惑星「ウィルツ」を目指している。
優れたレーザーブラスター使いとしての直感も、強き者、恐らく旦那さんと坊っちゃんの接近を告げていた。
「ふーっ」
ルカイヤは溜息をついた。
(何かがおかしい……)
(何故、あえて「ウィルツ」を狙って来る? 「ウィルツ」と「サン・ヴィット」は「洗脳機関第五軍団」が宙港を押さえている。他なら宙港に着陸出来るのに、何故わざわざ危険な空挺降下を何故やろうとする?)
空挺降下は見た目は華麗だが、実は貴重な精鋭部隊を少なからぬ損害に晒す可能性の高い、あまり褒められない作戦だ。どうしてもほしい戦略目標がある、敵が弱体化して危険が少ないといった理由がない限りは実行は考えにくい。
考えられる理由としては旦那さんと坊っちゃんだけを投入するつもりなら、なくはない。あの二人は偵察局員だから、隠密に潜入させるというのならある。
しかし、あの二人の行動は「洗脳機関第五軍団」にはバレバレだ。「偵察局」だって、それは分かっている筈だ。




