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チャージオン~光らせたい男と不器用な女のお話  作者: 水渕成分
第四章 水の惑星Ⅱ

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135/230

135 宿願かなって

 ルカイヤは画面を眺めていた。

 「『ラティーファ・ラフマーン』。やはり、伝説の航宙機エンジニア『アブドゥル・ラフマーン』の孫。あの時の赤ちゃん……」


 19年前のあの日……


 いつになく早めに帰宅したルカイヤの父は至極上機嫌だった。

 「やったよ。とうとう要望が通った。ラフマーン技師長のチームに入れることになった」


 上機嫌の父に母も笑顔になる。

 「よかった。ラフマーンさんと一緒に航宙機の設計がやりたくて、ミッドラントに入ったんだもんね」


 「うん。学校出て10年目。やっと宿願がかなったよ」


 「じゃあ。今日はごちそうね。ルカイヤ。準備手伝って」


 「はーい」


 あの時の「ビル・エル・ハルマート」は好況に沸いていた。

 何故、好況に沸いていたかなど、当時6歳のルカイヤには知る由もなかった。



 ◇◇◇



 「ルカイヤ。俺の上司のラフマーン技師長の家で初孫が生まれたそうだ。これからお祝いを持って挨拶に行くけど、一緒に来ないか? 赤ちゃん、見られるぞ」


 「赤ちゃん? 見たいっ!」

 6歳のルカイヤは父の提案に飛びついた。


 市街地のはずれにあるごく普通の家。生まれて間もなく大人の両手くらいの大きさしかないラティーファはそれを囲む大人たちの笑顔に囲まれて、静かに横たわっていた。


 「かわいい」

 ルカイヤからはそんなセリフが自然に出た。それがまた一層周囲の大人たちを笑顔にさせた。


 「ルカイヤちゃんだっけ? 抱っこしてみる?」

 声をかけたのはラフマーン技師長(長老)だった。


 「いえ、そんなもし落としでもしたら」

 あわてるルカイヤの父だったがラフマーン技師長(長老)は笑顔で返した。


 「大丈夫だよ。大人が後ろで支えてやれば」


 抱き上げた小さな命は温かだった。その後の19年間、ルカイヤは赤子を抱き上げるということをしたことがない。


 惑星『ビル・エル・ハルマート』が『銀河連合』の爆撃機に空襲され、市街地が灰燼と化すのはこの日からわずか10日後のことだった。


 


 

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