131 今更何を言ってもしょうがない
「!」
旦那さんは素早く真後ろに跳躍する。
元いた場所にはレーザーブラスターの一撃が突き刺さる。
「勝負は下駄を履くまで分からない。まさにそのとおりですね」
工場の裏から姿を見せたのは、パウリーネとルカイヤであった。
◇◇◇
「どうやって来たの? 宙港は『偵察局』が押さえているはず」
坊っちゃんの疑問に、今度はルカイヤが微笑を浮かべて答える。
「あら、空挺降下は貴方たちだけの専売特許ではないですよ」
「じゃあ、どうして、僕たちがこの惑星に来てるって、分かったの?」
「あんだけ強い気配振りまいていましたらねえ。こちらも気付きます」
「くっ、こっちはアナベルさんたちの救援で頭がいっぱいで、そこまで気が回らなかった」
◇◇◇
「いよーしっ、戦闘しようぜ。戦闘しようぜ」
パウリーネはレーザーセイバーをぶんぶん振り回す。
「いいねぇ。強いよね。君」
旦那さんも満面の笑みを浮かべる。
「その前に、ケガをした人を連れて、撤退して下さい」
ルカイヤは負傷していない方の「指揮官」に命ずる。
「ルカイヤちゃん、早く戦闘させてよ」
パウリーネは手足をバタバタさせる。
「少しくらい待って下さい。見なさい。旦那さんだって、やる気満々じゃないですか。逃げやしませんよ」
◇◇◇
その場は旦那さんと坊っちゃん。パウリーネとルカイヤしかいなくなった。後方は工場に「洗脳機関」の兵。反対側の後方に「偵察局」のレーザーブラスター使い五名。
「私はパウリーネ様の意思を最大限に尊重し、この勝負に一切関与しません。貴方も野暮は言いませんよね」
ルカイヤの呼びかけに、坊っちゃんも頷く。
「そんなことしたら、僕は旦那さんに殺されかねないよ。やれと言われたって、出来ないよ」
「よろしい。パウリーネ様。存分におやり下さい」
「旦那さん。今更何を言ってもしょうがないのはよく分かってるから、好きにして」




