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チャージオン~光らせたい男と不器用な女のお話  作者: 水渕成分
第四章 水の惑星Ⅱ

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126/230

126 犬じゃないんだから

 坊っちゃんは少し緊張していた。旦那(だん)さんとこれだけ別行動になるのは久しぶりだ。


 今回は「チャージオン」後の回復をラティーファに全面的に委ねた形である。


 体質だから仕方ないとは言え、どんなに近くで長く接していても、「チャージオン」するときれいさっぱり忘れる男である。


 (作戦行動開始時にはじめて一緒になるようなもんだからなあ~。よそよそしくても嫌だなあ)


 作戦行動のための航宙機はアナベルとオキニィを乗せて「副都心惑星」を発ち、「学術研究惑星」で旦那(だん)さんを乗せ、最後に「アクア3(スリー)」で坊っちゃんとレーザーブラスター使い5人を乗せることになっている。


 航宙機はゆっくりと「アクア3(スリー)」の宙港に着陸する。


 固い表情で坊っちゃんは一人一番前の席に座る旦那(だん)さんに声をかける。


 「あの、旦那(だん)さん。僕、坊っちゃんだけど……」


 次の瞬間、旦那(だん)さんは起立し、直立不動となった。

 「あっ、あっ、あっ、坊っちゃんね。全然、憶えてないけど、お世話になったそうで、よっよっよっ、よろしくね」


 「あの、僕のこと憶えてないのは仕方ないけど、何でそんなに緊張してるの?」


 「ラっ、ラティーファがあんたは坊っちゃんにはうんとお世話になったんだから、ちゃんと挨拶しろと、後で坊っちゃん本人に確認して、挨拶出来てなかったら、プロレス技で締めると」


 (ふうっ)

 坊っちゃんは息を吐いた。

 (少なくともよそよそしくはならずに済みそうだね)


 「大丈夫。ラティーファ(お姉ちゃん)には、ちゃんと挨拶できたと言っておくよ」


 「よかったぁ~」

 

 一気に緊張が解けた旦那(だん)さんは椅子に座りこむと、航宙機の機長に声をかけた。


 「ところでさ~、今回、強い奴はいるんだろうね。それでどこに行くんだっけ?」


 「さっき、航宙図を渡したでしょう」

 機長は呆れて言う。


 「あ、これか。で、どれが一番強いの?」


 「それをこれから調査するんですよ」


 「面倒だなぁ。匂いで分かるとかないの?」


 「犬じゃないんだから。ためしに航宙図の匂い嗅いでみたらどうです?」


 「成程。くんくん…… 駄目だ。同じ匂いしかしない」


 「そりゃそうでしょうよ」


 ふと見ると、アナベルにオキニィ、レーザーブラスター使いも笑いを噛み殺している。


 (やっぱ、旦那(だん)さんは旦那(だん)さんだ。緊張した自分が馬鹿みたいだ)

 坊っちゃんはそう思った。




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