125 世の中には岡目八目という言葉があってな
出来るだけフォロー出来るようにしたとは言え、危険な作戦には変わりない。
偵察局長は志願者を募った。
真っ先に手を挙げたのはアナベルである。
「やっぱ、あの『アナベル』が手を挙げたか」
シラネは考え込んだ。
「まずいか? 『アナベル』は真面目で一所懸命で優秀だろう」
偵察局長が宥めにかかる。
「だから、困るんだ。土壇場で命を捨てて、目的を果たそうとしかねない。『洗脳機関』の戦いは長期戦になる。途中で死んでほしくない」
「『相棒』に冷静な奴を置いたらどうだ?」
「おっ、局長にしてはナイスアイディア。そうだな…… 『オキニィ』はどうだ? 多分、引き受けると思う」
「局長にしてはとは何だ? それに何故『オキニィ』が引き受けると分かる?」
「世の中には『岡目八目』という言葉があってな。あたしも結婚してからそういうのが分かるようになったのさ」
「よく分らんが、確かに『オキニィ』は冷静な男だ。頼んでみるか」
◇◇◇
偵察局長は、アナベルとオキニィを呼び、惑星「ウィルツ」への派遣を言い渡した。
「はいっ!」
次の瞬間、アナベルは大きな声で了承した。
オキニィは緊張のせいか、硬直している。
(ええと)
偵察局長はシラネから指示されたメモを再確認すると、オキニィに耳打ちした。
「オキニィ君。シラネ君から伝言だ。『何としてもアナベル君を守れ。男を見せろ。但し、死ぬことは許さん。二人とも生きて帰れ。これは絶対命令だ』だそうだ」
それを聞いたオキニィは真っ赤になった。
(成程。そういうことか。合点がいった)
偵察局長はしきりに頷いていた。




