121 まともじゃないか
「えっ? パウリーネ様?」
いつもはパウリーネの攻撃に十分注意しているルカイヤだが、この時は仕事が一段落ついた安心感からか気が抜けたようだ。
「ようし、あそぼ、あそぼ」
「ちょ、ちょ、パウリーネ様。ちょっと待って」
「むふふ。もう遅いっ!こちょこちょこちょ」
「わっ、わっ、わっ、ちょ、ちょっと本当にやめて、もう、やめてくださいっ」
「やめんっ! いつも、ルカイヤちゃんには怒られてばっかいるから仕返しだっ!」
「ひーっ、やめてやめてやめて」
◇◇◇
「ご苦労だった。訓練生はみんな喜んでたよ。特にアナベル君は君と別れがたいようだったね」
偵察局長が慰労の言葉をかけると、シラネも頷く。
「あっという間に訓練期間が終わったねぇ~。正直、もうちょっと期間が長ければとも思うけど、そうなったら、そうなったで、更に期間延長とか思っちゃうんだろうな~」
「それで今後の予定は・・・」
「予定通り『アクア3』に帰して、訓練生同士で訓練して貰って、あたしがその動画を見て、通信教育かなあ。後は坊っちゃんにも出来る範囲でフォローして貰うんだね。旦那さんは当てにできないし……」
「それでいつ頃に実戦投入出来そうだ?」
その言葉にシラネの表情は一変して厳しくなる。
「絶対無理は駄目だよ。ようやくここまで育てたんだからね。そうだね。『洗脳機関』の活動の情報が入ったら、あたしにも逐一教えてくれるかい。それを見て、出来そうなら無理のない形での実戦経験からだね」
「うーん。初めは無理のない形での『実戦経験』からか」
「そりゃそうだよ。旦那さんはまともじゃないんだから、すぐあれと一緒にしちゃ駄目だよ」
「まともじゃない……か」




