119 研究者としての資質を問われる
「この方が、銀河最強と言われるレーザーセーバー使い……」
マリア教授はしげしげと旦那さんを眺めた。
旦那さんは緊張のあまり、硬直している。
後ろで苦笑しているのは、シナンとエウフェミア、それにラティーファである。
ここは「偵察局」の「学術研究惑星」出張所の応接室。
と言えば聞こえはいいが、偵察局長が言ったとおり「学術研究惑星」には「偵察局」の施設はなかった。
かと言って、シラネの言うとおり旦那さんをラティーファと同棲させる訳にはいかない。
第一、ラティーファは寮住まいで、部外者を入れる訳にも行かなかった。
かくて、急遽、空いていた事務所兼居住施設を「偵察局」が借り上げ、新設の「出張所」が誕生したのである。
ラティーファは甲斐甲斐しく「出張所」に通いつめ、シナンとエウフェミアもまめに顔を出すようにした。
研究室にめっきり顔を出さなくなったラティーファについて、マリア教授がシナンとエウフェミアに問いただしたのがことの発端である。
「知的好奇心が服を着て街を歩く」マリア教授が黙っている訳がなく、今回の面会と相成ったのである。
◇◇◇
「失礼。何人ものテロリストを倒してきたそうで」
マリアの質問に、旦那さんは緊張して答える。
「そっ、そっ、そっ、そのようですね。なっ、なっ、なっ、何も覚えてないんですが……」
「ふむ」
マリアは右手の親指と人差し指で自らの眼鏡のフレームをつまむと、独り言ちる。
「いや、一研究者として、人を外見で判断するというのは、あるまじき行為であると重々承知しているはずなのだが、これは……」
「ふう」
下を向いて、息を吐くと呟いた。
「まるで、私の研究者としての資質が問われているかのようだ……」
シナン、エウフェミア、ラティーファは一様に同じ思いだった。
(いや、マリア教授。旦那さんの外見のギャップには誰もがそう思いますって……)




