114 くらえぇぇーっ
その雄たけびは双方同時に上がった。
「チャーーージィィィィオォォォォンッ!」
(パウリーネも『チャージオン』使うのか? これは……)
白い光は島全体と「航宙艇」をすっぽり覆い隠し、その光の柱は大気圏を抜け、宇宙まで届かんばかりの勢いで立ち昇った。
やがて、白い光が少しずつ消えて行きはじめた頃、周囲の者の眼に入ったのは、旦那さんはラティーファに、パウリーネはルカイヤに手を引かれ、後方へ下がっていく姿だった。
「ラティーファっ! さすがだ。シナンさんっ!」
シナンは坊っちゃんと顔を見合わせると、パウリーネとルカイヤに向かって、レーザーガンとレーザーブラスターを発射した。
今にも命中せんとしたレーザー光は、パウリーネとルカイヤの真後ろに突き刺さった。
「!」
シナンはもう一度発射する。しかし、やはり、パウリーネとルカイヤの真後ろに突き刺ささる。
◇◇◇
見れば、敵兵も撤収を開始している。
「追撃します。但し、くれぐれも無理しない範囲で」
坊っちゃんの指示に訓練生も動きはじめる。
おのおのレーザーブラスターを発射するが、巧みな撤収に命中は見られない。
焦りからか、思わず前に出る訓練生も出てくる。
「焦らないで下さい。相手の思うつぼです。相手の射程距離外から、気を入れて、アウトレンジ攻撃です」
坊っちゃんの的確な指導に、訓練生の射程距離は伸びる。しかし、敵兵はそれを見切るかのように、撤収していく。
◇◇◇
遂には敵兵は、全員が「航宙艇」内に撤収し、エンジン音が鳴り響く。
「シナンさん。離水時に最大出力で、あの『航宙艇』にレーザーガンぶっ放して下さい」
「おうよっ!」
坊っちゃんの指示にシナンは頷く。
「航宙艇」は頭を四十五度の角度に上げると、一気に離水した。
「くらえぇぇーっ」
シナンは全精神力を込めて、レーザーガンを放った。




