113 ヤキモチ焼いてる場合じゃないよ
「何あれ?」
ラティーファは己の不機嫌を全く隠さずに、右肘で坊っちゃんをこづいた。
「まさかパウリーネもシラネさんと同じで、旦那さんの妹ってオチじゃないでしょうね?」
(うーん。参ったなぁ、色んな意味で……)
坊っちゃんは内心頭を抱えたが、質問に答えない訳にはいかない。
「旦那さんの兄妹はシラネさんしかいません。それは厳然たる事実です」
「ふーん。そうなの?」
ラティーファの不機嫌さは更にひどくなった。
「(ラティーファ、ヤキモチ焼いている場合じゃないよ)この調子だと、もうすぐにでも『チャージオン』するよ。しかも、今回は旦那さんが勝つかどうか分からない状況なんだ。ラティーファっ!」
「なに?」
ラティーファは思い切り不機嫌な声で応答したが、坊っちゃんはこれにめげてはいられない。
「旦那さんが『チャージオン』したら、すぐに旦那さんを回収してっ! 今回はパウリーネが『チャージオン』後に戦闘能力を残しているかもしれない。危ないから、すぐに回収しないと……」
「うっ、うん」
自分が旦那さんの支えになると聞き、ラティーファの機嫌は少し直った。
「シナンさん。そういうわけだから『チャージオン』後に、パウリーネをすぐにレーザーガンで撃って下さい。これは僕もレーザーブラスターで撃ちますが」
「了解。坊っちゃん」
「アナベルさん。パウリーネが『チャージオン』後に戦闘能力を残していた場合、レーザーセイバーで戦って貰うことになるかもしれません。準備をしておいて下さい。大丈夫です。仮に旦那さんが勝てなくても、パウリーネにも相当の打撃を与えている筈です。十分に戦えます。自信を持って下さい」
「分かりました」
アナベルはレーザーセイバーを強く握り直した。
◇◇◇
旦那さんとパウリーネは、お互い十分な距離を取ると、レーザーセイバーを大上段に構えた。
「『チャージオン』来ますよ。準備お願いします」
坊っちゃんの呼びかけに、各人は身構える。
攻撃軍の陣営ではルカイヤがレーザーブラスターを構えた。
(万一、パウリーネ様が負けることがあっても、死ぬことはありません。だって、私がいるんですから……)




