111 来た! 来た! 来たぁっ!
「シナンさん。レーザーガン使って、敵の前線崩せないですか?」
坊っちゃんの問いかけに、シナンは首を捻る。
「撃つことは撃てるが、敵も散開しているし、どこまで効果があるのか…… 後は強いの撃ち過ぎると、後ろの『航宙艇』が飛べなくなる可能性が……」
「成程。『航宙艇』が飛べなくなると、敵はここに孤立した形になるから、死に物狂いで来ますね。勝ててもこっちも相当の損害が出る」
「そう。それと坊っちゃん。さっきからどうにも理解に苦しんでいるんだけど……」
「はい?」
「速度の遅い『航宙艇』で侵入する技術があるんなら、僕だったら『爆撃機』侵入させて、ここの施設丸焼きにしちゃうけど……」
「!」
言われてみればそのとおりなのだ。
その方がリスク面でも労力面でも絶対いい。
敵があえてそうしない理由は?
◇◇◇
「坊っちゃんっ! もう俺が行っていいよなっ!」
レーザーセイバーをぐるぐる旋回させた旦那さんが前に飛び出す。
「うっ、うん」
坊っちゃんは渋々ながら頷く。
(本当はもうちょっと敵の戦力見たいけど…… どうせ止めたって行っちゃうだろうし……)
旦那さんはいつものとおり、敵味方のレーザーブラスターの射撃が飛び交う中、平然と前線に躍り出る。
◇◇◇
「来たあぁぁっ!」
パウリーネは絶叫した。
「来た! 来た! 来たぁっ! 行っていいよね? 行っていいよね? ルカイヤちゃんっ!」
ルカイヤは淡々と返す。
「行って下さい。今回は全てこのための作戦ですから」
「わーい。行って来まーすっ!」
パウリーネはレーザーセイバーをぐるぐる旋回させて出て行く。
その様子は、旦那さんのそれに酷似していた。




