110 今回は花を持たせる約束です
戦況は膠着状態になった。双方が射程距離に入れず、お互いを窺っている状況である。
「よしっ!」
坊っちゃんはレーザーブラスターを強く握りしめた。
「僕が前に出て前線を突破します。みなさん、援護して下さい」
訓練生は頷いた。
(旦那さん程じゃないけど、僕だって強い相手と戦いたいんだ。行くぞー)
勇躍、前に躍り出た坊っちゃんの足元に敵のレーザーブラスターの一撃が刺さった。
◇◇◇
「なっ」
当惑する坊っちゃんを二撃目三撃目が襲う。
(駄目だ。いったん引き返そう)
坊っちゃんは素早く後退する。
下がった坊っちゃんは改めて前線の状況を確認する。
(馬鹿な。あの距離を撃って来たって? 僕だってギリギリの距離だ。そんな凄腕が敵にいる?)
坊っちゃんは手元の双眼鏡で相手を確認する。
「えっ?」
◇◇◇
(ラティーファ?)
坊っちゃんは一瞬そう思った。
だが、そんな訳ないと思い直し、もう一度見た。
(うん。褐色の肌と銀髪はそっくりだけど、背は20センチは低い。別人だ)
(『ビル・エル・ハルマート』出身だろうか? ラティーファの知っている人?)
坊っちゃんの思いはいろいろ錯綜した。
◇◇◇
(あれが『坊っちゃん』ですか……)
攻撃軍ではルカイヤが前線を窺っていた。
(最大射程とは言え、私の射撃を躱すとは…… 評判倒れという訳でもなさそうですね)
(一度、一対一でやり合ってみたい程の腕ですが、今回はパウリーネ様に花を持たせる約束ですからね。またの機会があれば…… です)




