108 強い波動みたいなものが頭に
「ふーむ」
通信の相手方は、偵察局長である。
「坊っちゃんを責めている訳ではないが、では何故。『洗脳機関』はああまで『レーザーセイバー』使いを繰り出せるのだろう?」
「わかりません。『偵察局』では作れていない教程があるのかもしれませんが、だけど……」
「だけど?」
「『洗脳機関』の『指揮官』で『チャージオン』を使えたのは一人もいません。また『偵察局』サイドで『チャージオン』を使える三人を倒せたのもいません」
「成程、それだけ『才能』がものを言うってことか。だがな、旦那さんのような最強が一人だけというより、ある程度戦えるのがたくさんいた方がやりやすいのも事実だ。改善できるようなところは改善して、出来るだけ成果が上がるようにしてもらえないか?」
「はい……」
坊ちゃんは頷いてはみたものの、先行きにとても自信は持てなかった。
◇◇◇
約束していた派遣期間である二週間は瞬く間に過ぎた。
課題であった「レーザーセイバー使い」の養成はお世辞にも達成できたとは言い難かった。
そんな中でも、僅かな救いを求めるとすれば、多少は経験のあったアナベルとラティーファのレベルアップと他の者はとにかく「レーザーセイバー」に触れることが出来たということだろうか。
もう、明日には臨時で派遣された学生たちは「学術研究惑星」に帰らなければならない。
そんな、日の昼下がり、事件は起きた。
◇◇◇
「来るっ!」
真っ先に気付いたのは、やはり、旦那さんと坊っちゃんだった。
二人はすぐさま己の武器を装備した。
「何か、強い波動みたいなものが頭に響いてくるんだけど……」
「シナンさんもですか? あたしもなんです」
「敵が、それも強いのが近づいて来てるんだよ。二人とも覚悟してっ!」
ラティーファはシナンとエウフェミアに声をかける。
ある程度の期間、「超心理学技術」になじむとそういった勘が働くようになるらしい。
敵の輸送機は一度島の上空を旋回すると、宙港ではなく、島の近くの海面に着水した。




