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高山の計画


 空には太陽が輝き、遥か上空では雲が流されている。

そんな昼下がり、俺達四人は学校の屋上にシートを敷き、ランチを楽しんでいる。

今日の一押し品は杉本産三段弁当と自家製ゼリー。


 昨日は誰かのせいで自習室が我慢大会となってしまった。

今日はそんな事になりませんように!


「きょ、今日は大丈夫だろ。しかし、杉本さんのお弁当、すごくおいしいよ! ありがとう!」


 高山が少し動揺しながら話し始めた。

エアコンの話題から、即弁当の話に切り替えてきた。


「いえいえ。どういたしまして。そんなにおいしく食べてもらえると、作った私も嬉しいですよ」


 表情が読みづらい杉本の顔に少しだけ赤みが帯び、照れているようだ。


「ほんと、こんな弁当なら毎日食べたいぜ!」


 ど直球な高山の発言に対して、俺が照れてしまう。

良く大声でそんなこと言えるな。恥ずかしくはないのか?


「た、高山さん。そんな大声で話して、恥ずかしくないんですか?」


 俺の代わりに杏里が聞いてくれた。

きっと、俺達の心はどこかで通じているんですね。


「ん? まったく恥ずかしくない。心の底から思う本当の事だ。この弁当だったら毎日食べたい!」


 笑顔で杉本の弁当を食べている高山。それに対して杉本の動きがさっきより鈍くなっている。

なんだ? 恥ずかしがっているのか?


「天童も弁当うまそうだよな。お互いうまい弁当は幸せを感じるよな!」


「そうだな、作った人の想いが弁当に込められるからな」


 高山とそんな会話をしていると、向かいに座っている女性陣が何かまごまごしている。

互いに目線を交わし、恥ずかしがっているようだ。


「彩音の作ったお弁当、本当においしいね。でも、毎回だと大変じゃない?」


「そんな事無いよ。お弁当とかお菓子とか作るの好きだし。誰かに食べてもらって、喜んでもらうの、私も好きだし嬉しいから」


 な、なんていい娘なんだ。料理やお菓子、それにデザートを作るスキルを持ちながら、それを苦としない。

素晴らしい、そして隣の高山も瞼に涙をうっすらと浮かべながら、笑顔で食している。


「杉本さん……、俺は嬉しい! 今度何かお礼をさせてくれ!」


「え、別にお礼なんていいですよ。たいした事していないですし」


「いや、もらってばかりでは悪い! よし、今度何か外食でもおごらせてくれ! こればっかりは譲れないぞ!」


 おっと、高山さん。そうやって映画の後の事を仕組むのですか?

中々の策士ですね……。


「え、でも、そんな……」


 杉本さんは少し動揺しながらも、まったくの拒否をしているわけではない。

ここは助け船を出しますか。


「杉本さん。高山にも男のプライドがあるんだよ。ここはおごってもらってくれないか?」


 写真の件とか高山には世話になっているしな。


「う、うん。ありがとう。では、お言葉に甘えますね」


 笑顔になった杉本さんは、頬を赤くしながらも、その優しい微笑みを高山に向けている。

しかし、弁当を片手にがっつきながら食べている高山の頬は、若干吊り上りニヤついている。

例えるなら悪代官のような口元だ。

やっぱりディナーの件をからめてきたんだな? わかりやすい奴だな。


「よし! じゃぁ、テスト終わったら詳しく話を進めよう! もちろん、姫川さんも天童も一緒に行こうぜ!」


「お、悪いな。では俺もお言葉に甘えて、豪華なディナーでもおごってもらおうかな」


「いや、天童は自腹でお願いします」


 四人が笑う。久々に笑った気がした。

杏里も杉本さんも笑っている。そんな時間を俺は大切にしていきたい。


 俺達は少しだけ同じ時間を共有し、四人で歩き始めている。

この先、誰がどうなるかは分からない。でも、今この時間を大切し、一緒に過ごしていくのは悪くない。

俺にとっても一度しかない高校生活。それは、ここにいる四人が同じこと。


 このまま毎日を楽しいと感じることができるように、この先の事も考えておかなければならない。

俺はこの先どうしていけばいいんだろうか。

俺が相談できる相手は、この学校にいない――。


 いた! いたじゃないか!


 思いだした。相談するのにぴったりで、しかも信用できる人がいたじゃないか。

少しでも早い方がいい。今、この時間を使って、相談しに行こう!


 弁当も食べ終わり、雑談タイムに入っている。

昼休みが終わるにはまだ早い。行ける。


「い、いたたたた……」


「どうした? 天童、腹でも痛いのか?」


 心配そうに見てくる杏里と杉本、それに高山。

悪い、演技なんだ。本当はどこも痛くない。

よし、腹が痛い事にしておこう。


「は、腹が急に……」


「だ、大丈夫? 急にどうしたの?」


 杏里が心配そうに近寄ってくる。


「腹が急に痛くなった。ちょっと保健室に行ってくる。俺の事は待たないでいいから、先に教室に戻っていてくれ」


 俺は、空になった弁当箱を片手に、その場を去った。

俺の方を見てくる三人。すまん。俺にも理由があるんだ。


 きっとあの人なら、俺の問題を解決してくれるはず。

あの人ならきっと……。



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