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クラスで一番の美少女が俺と一緒に住むことになりました  作者: 紅狐
第一章 月が照らす公園の中で
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恋話


 今夜はカレーだった。母さんの作るカレーは絶品だ。

今日も三人で食卓を囲み、楽しい夕食の時間が流れる。


「お義母さんの作るカレーはおいしいですねっ」


「そうかしら? でも、カレーってその家の個性が出るのよね」


 俺は無言で二人の会話を聞いている。

自分の気持ちを自覚してしまい、姫川と今までと同じように接することができない。


「司。あんたさっきからひたすら食べてるけど、カレーは飲み物じゃないんだよ?」


 そんな事は分かっている。だが、これで三杯目だ。普通においしいからいいじゃないか。

それよりも姫川を直視できない。動揺している俺がいる。


 母さんは昨夜、姫川と同じ部屋で寝たので俺は一人で寝ることになった。

今夜も一人で寝ることができれば、少しは気持ちの整理もできるだろう。

今夜が勝負だ。明日の朝にはいつもの俺がいる、はず……。


「母さんの作るカレーがおいしいので、ついつい無言になってしまうだけです」


「何その言葉使い? 熱でもあるの?」


 カレーを食べながら不安そうな目で俺を見てくる姫川。

やめてくれ、その目を俺に向けないでくれ。


「司君、大丈夫? 体調悪いの?」


 悪くないっす。元気そのものです。

姫川を直視できない、その目を真っ直ぐに見れないだけだ。


「いつも通りだ。特に、なんでも、ない……」


「本当に?」


 姫川の手が俺のおでこを触ってくる。

だから、その天然な行動が、俺の調子を崩す原因なんですよ。

今まで起こらなかった、感じなかった感情が自分の中で沸き起こる。


「おかわり!」


 俺は四杯目のカレーを盛る為、席を立つ。脱出成功だ。

そして、俺の背中には二人の目線が突き刺さってくるのを感じる。


「まぁ、食欲もあるし大丈夫だね。あ、あと今日は三人で寝ようか」


 俺の手からしゃもじが落ちる。たった今衝撃的な言葉を聞いてしまった。


「え? 三人ですか?」


 姫川も疑問に思ったのだろう。当たり前ですよね。


「そう。今日スモークしたんだけど、二階からまだ少し匂いが抜けてないんだよね。明日には抜けると思うから、今日だけね」


 逃げ場が無くなった。俺はどう切り抜けるか頭をフル回転させながらカレーを盛る。

肉を多めに。あ、福神漬けも追加しようかな。


「俺はソファーで寝るから、二人は俺の部屋で寝てくれ」


 一応、回避策を提案してみる。

そして俺の皿には四杯目のカレーが。


「だったら、私がソファーで寝ますよ」


「えー、母さんは司と杏里ちゃんとみんなで寝たいのにー」


 意見がバラバラですね。


「俺のベッドはダブルサイズだろ? 二人で寝たらいいじゃないか。俺はソファーでいい」


「ダメですよ、怪我しているのにソファーで寝るなんて」


「だったら、あみだくじで決めましょう。ここは公平にねっ」


 母さんは変な提案をしてくる。

こういう時の母さんに何を言っても無駄だ。

自分が楽しいと思ったら、とことんやるタイプなのだ。


「母さんに任せるよ……」



――


 第一回どうやって寝ましょうかあみだくじ大会! 結果発表。


 どうしてこうなったのかは分からない。母さんが仕組んだのか、それとも偶然なのか。

そもそも、発案者の作成したあみだくじをそのまま使ったのが間違いだろう。

が、まだ妥協できる結果になった。


 俺のダブルベッドには姫川、母さん、俺の三人が寝ている。

もともと大きめのベッドだし、母さんも姫川も小柄なので、何とか寝れる。

が、少し狭くありませんか?


「何だか楽しいよね! 修学旅行みたいじゃない?」


「そーですねー」


 返事は適当に返し、すでに布団にもぐりこみ寝に入いろうとしている。

姫川も同じく、反対側の布団に腰まで入った状態だ。


「んもぅ、せっかくなんだしさっ! 恋話でもしようよ!」


 なぜ親と恋話しなければならない?


「お義母さん、昨夜結構話しませんでした? その、色々と……」


 昨夜は二人で結構話しこんだのか?

姫川の言葉から推測すると、すでに二人はそれなりに仲良くなっているようだ。


「えー、良いじゃん。恋話楽しいしさっ!」


 恋か……。恋ってなんだろうな。

好きとか、嫌いとか、一緒にいたいとか、誰にも取られたくないとか。

恋愛ってゲームだと思っていたけど、実はそうでもないのかな……。


「じゃぁさ、今日は私が話すよ。私と、お父さんの恋話。でも、お父さんには内緒だよ?」


 おっと、そう来ましたか。

確かにそれは気になる話ですね。いままで両親の話とか聞いたこと無いし。

プロポーズは父さんからしたとか、式はどこで行ったとかは聞いているが、実際のなれ初めは聞いていない。


 よし、参考程度に聞いておこう。あの悪役のような父さんと、いまだ女子高生のような母親の恋。

どうやって出会い、どうやって付き合い、結婚したのか。


「そ、それは私も気になりますね……。是非、聞かせてください」


「まぁ、母さんがどうしても話したいと言うなら、聞くよ」


 母さんが電気を消し、常夜灯のみが部屋を照らす。

まだそこまで遅くない時間。俺達は三人同じベッドに入り、真ん中にいる母さんの話を聞き始める。


「ふふふ……。じゃぁ、まずはどこから話そうかなっ!」


 一人はしゃいでいる母さん。

その隣には息子の俺、反対側には姫川がいる。


 母さんから見たら俺達は同じ年の息子と娘になるのだろうか?

それとも……。


「よし、じゃぁ、まずはやっぱり出会いからだねっ」


 こうして夜の恋話が始まった。

明日の朝は、少しゆっくり目に起きよう……。


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【連載中】 微笑みの天使の恋心 ~コスプレイヤーの彼女は夢を追いかけるカメラマンに恋をした~

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