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クラスで一番の美少女が俺と一緒に住むことになりました  作者: 紅狐
第一章 月が照らす公園の中で
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額縁の中身


 洗濯機の上に置かれたままの生徒手帳やペンなどを回収し、ポケットへ突っ込む。

そして、再び姫川の方に目を向けると、目の前に姫川の写真が。

いちまーい、にまーい、さんまーい……。

ん? 九枚しかない。


 おかしいな、確か十枚セットって言っていた気がしたんだが……。


「これで全部か?」


「こ、これで全部です。なぜ、私の写真を司君がこんなに持っているの? これって、隠し撮りだよね?」


 はい! 大正解!

正解したあなたにはナデシコ生写真をプレゼント!

とか、している場合ではない。


「せ、説明すると長くなる……」


「つ、司君は私の写真、ほ、ほしい、の?」


 すこし照れながら聞いてくる。

畜生! お風呂上りの姫川に、そんな目をされながら言われたらー!


「も、もし、姫川が行方不明になったら、写真は必要だろ? うちには姫川の写真一枚もないし」


 あー、無理ですね。こんないい訳ではごまかせません。

どうする? 高山をいけにえにささげるか?


 きっと、姫川は学校のファンクラブなんて存在を知らないだろう。

こんな写真を知らないところで回されていたら、きっと傷つく。


「確かに、写真は必要かもしれませんね……」


「だろ。必要だろ?」


 あれ? 納得してもらえた? そんな馬鹿な。

もしかして、姫川はチョロ、ゲフンゲフン……。

純真な心の持ち主なのか!


「だったらこんな変な写真ではなく、ちゃんとした写真を差し上げます。あと、司君の写真も、く、下さいねっ!」


「俺の写真か?」


「司君も行方不明になったら、写真が必要じゃないですか。私も持つ理由があります!」


 ぐいぐい俺に迫ってくる姫川。

その眼はかなり真剣で、純粋無垢な瞳で俺を見てくる。


 俺の心がチクチク痛い。


「あ、あぁ。後でアルバム渡すから適当に持って行っていいぞ」


「分かりました。良い写真が無ければ、スマホで写真撮らせてくださいねっ」


 そう言うと、姫川は手元にあった写真九枚を俺に渡してきた。

よし、ミッションコンプリート? でも、一枚足りないよね? どこに消えた?


 もともと九枚? 高山が一枚抜いた? 姫川が一枚まだ持っている?

どこから攻めるべきだ?


「では私は洗濯ものを干してきますね」


 振り返る姫川。まだ頭にタオルを巻いている状態で、洗濯機からネットを取り出し始めた。

それを見た俺は、その場にいない方がいいなと判断し、台所に移動し始める。


 先に自室に戻り、生徒手帳をバッグに入れ、写真は机の上にそのまま置いた。

台所に戻ると母さんがソファーでアイスを食べながら雑誌を読んでいる所が目に入ってくる。

こんな姿、姫川に見られたくないな……。もう少し、何というか、母親っぽくと言うか……。


「母さん、少しだらしなくないか?」


「ん? ここは私の実家でもあるのよ? ゆっくりくつろいでも良いと思わない?」


 うーん、正論なのか?

まぁ、隠しても無駄だし何時かはばれるんだし、いいか。


「ほどほどにな」


「はいはい」


「つか、いつまでタオル一枚なんだよ。早く服位着てくれ」


「はいはい」


 あー! イライラする! なんで父さんと母さんはこんなに性格が違うんだ!

どちらかと言うときっちりタイプの父さんに対して、この状態の母さん……。

俺が肩をプルプルしているとアイスを口にくわえたまま、俺の部屋に入っていく。


「司、母さん週末までここに居るからよろしく」


「はぁ! なんでだよ!」


「母さんにもいろいろあるし、あんたも関係してくるんだから。その指じゃ、家事も大変でしょ? 週末までは母さんが家事してあげるからさ」


 そう言われてしまえば、言い返せない。

確かに、この状態だったら数日は家事を控えたいのが本音だ。

姫川一人にやらせるわけにもいかない、生死がかかってくるかもしれないしな。

それに、洗濯も姫川にやってもらうとか、絶対に無しだな。


「分かったよ。で、どこで寝るんだ?」


「んー、どうしようかな」


 俺の部屋に荷物を置いていたらしく、白のワンピースパジャマに着替えてきた母さん。

手にはなぜか額縁が二つ。そして、口にはアイスが刺さっている。


「その額縁は?」


 額縁を二つテーブルの上に置き、口に刺さっていたアイスを手に持ち直す。

あ、口の端っこからアイスが垂れている。だ、だらしない!

俺が手にティッシュを一枚持ち、母さんの口を拭く。


「お、気が利くねっ」


「頼むからもう少しシャキッとしてくれ……」


「はいはい、考えておきますねー」


 アイスを食べきった母さんは棒をごみ箱に捨て、額縁の説明もないまま、台所を出ていく。

あれ? 忘れているのか? おーい……。

そして、遠くの方から甲高い声が聞こえてくる。


『杏里ちゃーん、一緒に髪かわかそー』


 まるで同世代のような話し方。

隣に並んで、それなりの格好をしたら、姉妹にも見えるのか?



――ブォォォォォォ


 ソファーに女性二人が並んで座っている。

俺は一人、床に転がっている状態だ。

母さんが姫川の髪を乾かしている。姫川も目を閉じ、うっとりした表情だ。


「髪の毛サラサラでいいねー」


「そ、そうですか……。ありがとうございます」


「あ、司はその額縁の中身確認して、リビングのどっかに飾って」


「ん? ああ、分かった。で、これ中身は何なんだ?」


 姫川も気になったようで、閉じていた目を開け、テーブルに乗っている額縁を見ている。


「見ればわかる。もし、司が中身を見て、わからなければ司の勉強不足だ」


 俺はゆっくりと額縁の中身を確認する。

そこには『修了証』と書かれた防火管理者講習修了証。

そして同じく『修了証』と書かれた食品衛生責任者養成講習会修了証。

と、母さんの名前が書かれたプレート一枚が出てきた。


「これをリビングに開示しておけばいいのか?」


「そうそう。で、これの意味は分かるよね?」


 少し前にネットで調べただけで、そこまで詳しくはないんだよね。

本当はこの一年かかけて色々と調べる予定だったのに、詳しくは調べてない。


「あー、下宿を営業する時に必要な許可書?」


「まぁ、そんなところだね。いつかは司も必要になると思うけど、とりあえず今は私が責任者。と言う事で、よろしく!」


「お、お義母さんもここに住むのでしょうか?」


「ん? 私も別に仕事があるから帰るよ。流石にここから通える勤務場所じゃないからね」


 少しほっとしたような表情の姫川。その気持ち俺にも分かります。


「じゃ、週末までここに残って何するんだ?」


「設備の確認とかかな。火災報知器とか、鍵の確認とか、避難訓練とか、二日もあれば終わるしね」


 設備の確認はともかく、避難訓練とかするの?


「あ、そういえばマンションにいた時も避難訓練したことありました」


「そ。いざって時にすぐに対応できるように、訓練と実施した事を報告しないといけないんだよ。ね、司」


 そうなんですね。そこまで調べていませんでした!


「と言う事で、二人には申し訳ないけど、明日の朝に避難訓練するよ」


 突然決まった避難訓練。

自宅で訓練とか初めてだけど、何すればいいんだ?


 俺と姫川は目線を交差させ、互いに疑問符を頭の中で浮かべているだろう。

防災頭巾なんて、あったっけ?


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 隠し撮りは普通に犯罪だから、姫川はまだしも母親が何も言わなかったことに疑問。
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