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クラスで一番の美少女が俺と一緒に住むことになりました  作者: 紅狐
第一章 月が照らす公園の中で
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姫川の写真


 無言で廊下を歩き続ける二人。

一人は天童司てんどうつかさ、俺の事だ。もう一人は杉本彩音すぎもとあやね

今日初めて会話をしたクラスの女子。いままで俺との接点は皆無。


 杉本の髪は三つ編み、そして長い前髪がメガネも目も隠しているので、うまく表情が読み取れない。背は姫川よりも少し低いくらいの、図書委員だっけ? 今日少し話した感じでは暗い女子って感じだった。


 そんな女子に『好きな人はいますか?』と聞かれました。

どうして今日、初めて会話した女子にそんな事を聞かれるのだろうか? この先どうなるかも分からないし、濁して答えても問題ないよな?


「いない訳ではない」


「それは、少しは気になる人がいると……」


「まぁ、そんなところだな。どうしてそんな事を聞くんだ?」


「そんな事、聞くだけ野暮ですよ……。ご想像にお任せします」


 屋上ではあまり話さなかった杉本。今は、結構話をしている気がする。

人見知りなのか? それとも、他の理由があるのか?


 俺の隣を歩いていた杉本は少し早歩きで遠ざかっていく。

俺との距離が少し離れたところでクルリと振り返り、俺の方を向いた。


「今日の髪型、いつもと少し違いますね。その方が似合うと思いますよ」


 そして、杉本はそのまま走って昇降口の方へ向かって行ってしまった。

返事も何もできないまま、あっけにとられ俺は一人廊下に立っている。


 いったい何がどうなったのか自分の中で理解に苦しむ中、保健室前に到着。

一体俺に何を求めているんだ? 随分変な質問だったな。

保健室の扉を開けると、なぜか数名の生徒がすでにいる。


「すんませーん。天童ですが」


 少し遠くにいた熊さんに声をかける。


「おう、来たか。今日一日どうだった?」


「思ったより痛みはなくて、なんとか授業も普通に受けることができました」


「そうか、じゃ、湿布貼りなおして、テーピングをもう一度するから座って」


 相変わらずタポタポしているお腹。

横にいる女生徒はなぜか、熊さんを見てうっとりしている。肉がいいのか? 揺れる肉がいいのか?


 熊さんは丁寧に俺の手をモミモミ、伸ばし伸ばし、ひねりひねり。

今朝ほど痛みもなく、なんとか普通の生活に戻れそうな気がした。


「多分これで平気だと思うけど、激しい痛みが出たら医者に行くんだよ」


「分かりました。ありがとうございます」


 一言、熊さんに礼をいうと、なぜか熊さんは俺の頬を両手でつまんできた。


「なぁ、天童。おまえ最近何かいい事でもあったか?」


 特に思い当たる節はない。いい事? うーん、何かあったかな?


「いえ、特には」


「そうか。お前、少し前よりいい顔してるな。結構な事だ」


 熊さんは代えのテープと湿布を俺に渡し、再び奥の方に行ってしまった。

手前には相変わらず数名の生徒が。この方々はいったいここで何をしているのだろうか?


 熊さんも生徒を追い出すわけではなく、何か世間話をしている。

これも先生としての仕事なのか?


 俺は痛みの引いた手で扉を開け、保健室を後にする。

指も何とかなりそうだ。これで姫川に迷惑をかけなくて済む。

俺は内心ほっとしている。


 昇降口で靴を履きかえていると、数名の生徒がやや急ぎ足で靴を履きかえている。


「急げ! 体育館裏だって! 奴らが高山を呼び出したらしいぜ!」


「まじか! 早く見に行こうぜ!」


 そんな会話を目の前でされたら、行くしかないですよね? 男として。

俺はバッグのベルトがしっかりと閉まっている事を確認。これで振り回しても、多分平気だよな?


 少しだけドキドキしながら俺は目の前を走っていく彼らの後に着いて行き、体育館裏を目指す。

大丈夫か高山。さっきは問題ないと言っていたのに……。


 いいだろう、もしバトルになっていたら加勢してやる。

その代わり、購買の焼きそばパン買ってもらうからな!


 そして、体育館裏に着いた俺は驚愕の光景を目の前にし、放心する。

高山は一人仁王立ちの状態でふんぞり返っている。


 そして、さっき教室にきたメンバーは、腰を直角に曲げ、なぜか高山に頭を下げている。

何が起きている? こいつらは高山の舎弟なのか? 状況を理解できないまま、教室にきた不良っぽい奴が頭を上げた。


「お願いします! 是非、高山さんに!」


「「お願いします!」」


 他のメンバーも声を揃え、頭を下げている。

一体何が起きている?


 俺は恐る恐る高山に近づき、耳打ちする。


「一体何がどうなっているんだ?」


「おぉ、天童か。いや、こいつら『姫川ファンクラブ』で、俺を勧誘したいんだってさ」


 ふぁ、ふぁんくらぶ! まさかファンクラブまであったのか。


「ナデシコ様と本日昼食を取られたと噂を聞きつけ、本日勧誘の為、お声をかけさせていただきました!」


「「ました!」」


「その実行力と、ナデシコ様の信頼を得ている高山様には、是非ファンクラブに参加していただけないかと!」


 その声は大きく、周りに人はちらほら数名見え隠れしている。

幸いなことに姫川本人はすでに校内にはいないと思われる。

そこだけは良かったと、心の底から思ってしまった。


「んー、めんどいからいいや。それに今、俺忙しいんだ。またな」


「そこを何とか! 今ならこのナデシコ生写真十枚セットをプレゼントする!」


「か、会長! あの生写真ですか!」


「そ、それだったら私も欲しいです!」


「ダメだ! これは有望人材の勧誘する時のとっておき写真なんだ!」


 会長と呼ばれた男は、俺達に見えるように写真を広げてくる。

んー、その写真きっと隠し撮りですよね。本人は知らないところで取引されているのですか?


 俺と高山に見せてきた写真は登校中の写真、机で勉強している写真、校内を歩いている写真、購買で買い物をしている写真など様々。

確かに目線はカメラに向かっていないけど、なかなかいい写真な気がする。


「カメラ部のエースが撮影した写真です。どうですか!」


 一枚だけ、校庭を歩いている写真があり、風にあおられスカートを押さえている写真があった。

結構太ももが露出しており、偶然にとれた写真だと思われる。


 そんな写真をファンクラブ内で回しているのか?

写真を見た俺は、ちょっとだけイラッとする。


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【連載中】 微笑みの天使の恋心 ~コスプレイヤーの彼女は夢を追いかけるカメラマンに恋をした~

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