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クラスで一番の美少女が俺と一緒に住むことになりました  作者: 紅狐
第一章 月が照らす公園の中で
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連絡先


 昨夜遅い時間に高山からメッセを受け取った。

俺は姫川の連絡先を知らないことになっている。というか、高山には教えてない。

そして、今朝は早々に高山と教室で合流しているので、俺が姫川に昨夜の事を伝えるタイミングはなかった。


「っへ? あ、えーっと、今朝、登校中に天童さんからその話をいただきましたので」


「そうそう。たまたま俺が登校中の姫川を見かけて、たまたま昨夜の事を伝えた」


 俺達の目線は互いに行ったり来たり。あわてるな、俺達ならクリアできる。


「天童! 時間の事まで伝えたのか! そこは話さなくてもいいじゃないか!」


「は、いや、えっと、話の流れでつい話してしまった。すまん」


「と、とりあえずですね、緊急時はいいですが連絡のやり取りは二十三時までにしましょう!」


「そ、それは姫川さんの連絡先を、教えてもらえるという事ですか!」


 や、やばい。

高山のテンションが限界突破しそうだ。何とかしないと、そのまま屋上から飛んで行ってしまうかもしれない。


「す、杉本さんは映画好きなのか?」


 無理やり話題を変えてみた。


「あ、彩音は結構恋愛小説が好きでね! 今回の映画の件を話したら是非見たいって!」


 ナイスアシスト姫川さん。ありがとうございます。


「そうですか! 映画に行けるといいですね! 天童頑張れよ!」


 よし、流れが変わった。いいぞ高山!

勉強は多少していますが、勝率は良くて五分五分ですね。


「まぁ、それなりに頑張るよ。高山も勉強してるんだろ?」


「まぁな! 流石にノーベンはまずいだろ。赤点取りたくないしさ。杉本さんは勉強してるの?」


 高山が弁当を食べている杉本に話を振る。

コミュ力が高い所が少しうらやましい。


「少しだけ……」


 うーん。本当に高山とは性格が正反対だな。

温度差が激しい。


「そうそう、こないだ風邪で休んじゃって、いま天童からノート借りているんだけどさ、結構見やすくていい感じなんだ。でも、途中から変な字になっててさ、解読不可能に!」


 って、そこでその話をするのかい。

何かの罰ゲームですか? そこで出す話題じゃないだろ?


「別に貸さなくてもいいんだぜ?」


「いや、ノートは借りたいが、読めない字はちょっとな」


「私のノート貸します? 今日中に返していただければ貸してもいいですよ?」


 姫川が高山に話を振る。俺の字が少しだけ読めなくなっているのを知っているからか?

それとも他に何か理由があるのか?


「いいんですか! 是非是非!」


 高山は再度テンションを上げる。


「では、昼休みの後にお渡ししますね」


「助かります! これで俺も高得点を狙えます!」


 無言でお弁当を食べている杉本。

高山のテンションについていけないのか、この場にいづらいのか。


「杉本さんは姫川さんと仲がいいのか?」


 俺も頑張って話を振ってみた。

なぜか姫川の目線が俺に突き刺さってくる気がする。


「普通……」


 はい、会話終了。相手は手ごわいです。

先生、勝てる見込みがありません。どうしたらいいですか?


「彩音は図書委員でね、私が良く図書室に通っていたから、そこで仲良くなったの――」



 そんな会話をしながら、俺達の昼休みは過ぎ去っていく。


「そろそろお昼も終わりそうだし、戻りましょうか?」


 姫川が立ち上がろうとした時、高山がスマホを取り出す。


「連絡先、交換しませんか!」


 女子二人に頭を下げ、両手でスマホを捧げている姿はとても潔い。


「きっと、映画に行けます! 俺も天童も頑張ります! お願いします!」


 お、男らしい。そこで俺だけの名前を出したら突っ込みを入れる所だが、自分も頑張ると言った。

もしかしたら、高山も表には出さないだけで、陰で色々と頑張っているのかもしれない。

今朝も勉強していたし、俺のノートを頑張って写しているし。


 どう反応するのか俺の目線は姫川と杉本に移る。

二人とも手にスマホを準備する。お、予想外の反応。


「高山さんも勉強頑張ってくださいね」


「これ私のコード……」


 二人とも高山に画面を見せている。


「え、いいんですか! ありがとうございます!」


 少し涙目になりながら高山は二人の画面を見つつ、自分のスマホを操作している。

どうやら無事に登録も終わったようで、互いにメッセの交換をしている。


 俺はそんな輪に入らず、持ってきたパンの袋と牛乳パックをかたづける。

ふと、視界にスマホの画面が入ってきた。


 目を向けると杉本さんが俺の目の前に自分のスマホを差し出している。


「交換……」


「俺とか?」


「そう……」


「俺から特に連絡する事無いと思うが?」


「私からあるかもしれない……」


 うーん、別に気にすること無いか。

登録だけして、あとは放置しておけば問題ないよな。


「じゃ、交換するか」


 俺はめでたく(?)二人目の女子の連絡先を自分のスマホに登録した。

それぞれが教室に戻る準備をしている中、姫川の目線は俺に向いている。

何か言いたそうな、少し悲しげな表情。どうしたんだ? 俺に何を伝えたいんだ?


 もしかして、高山と番号交換したくなかったのか?

帰ったら聞いてみるか。


 こうして、俺達は昼休みの終了を告げるチャイムと共に終わった。

教室に戻り、姫川からノートを借りた高山はテンションを高くし、自分の席へ戻る。

その間、スキップをしながら、鼻歌を歌いながら。嫌でも目立つ高山。俺は少しではなく、大分離れて自分の席に戻る。


 自分の席に着いた高山は姫川のノートを開き、自分のノートに写し始める。

次の授業までまだ少し時間があるからだ。


「いやー、流石はナデシコ。良いまとめ方しているし、誰かと違って字がきれいで読みやすく、そして分かりやすい!」


 それは俺に対してか? ノート貸さなくてもいいんだぞ?


「それは良かったな。でも、さっさとノート返さないと姫川も困るんじゃないか?」


「だから急いでるんだろ。集中させてくれ!」


 つか、話しかけてきたのおまえだろ!

と言う事はいわない。高山にも勉強してもらった方がいいと思うからだ。


「はいはい……」


 突然、高山のペンを走らせる音が消えた。

ん? 何かあったのか?


「なぁ、この姫川のノート。使っているマーカー、天童と同じマーカーか? 良く見ると、天童の母さんと字もそっくりな気がするんだが……」


 初夏。少し暑くなり始める季節。

俺は今までにないくらい、背中に汗をかき始めた。


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