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クラスで一番の美少女が俺と一緒に住むことになりました  作者: 紅狐
第一章 月が照らす公園の中で
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家庭教師


――ピピピピッ


 いつものように朝が来る。

昨日はお好み焼きのせいか、台所にまだ香ばしいにおいが漂っている。


 ジャージに着替え、玄関に行くとすでに姫川が待機している。

昨夜は結構遅くまで勉強していたので、今日は起きてこないと思ったがそんな事はないようだ。


「おはよう」


「おはようございます!」


 元気にあいさつしてくる姫川は、いつもより何だか調子が良いように感じる。

俺もここ最近色々あったが、思ったより体調を崩さない。

逆にちょっと調子がいい。バランスのとれた食事に、規則正しい生活のせいか?

それとも他の要因があるのか……。


「調子良さそうだな。何かあったのか?」


「特にありませんよ。ただ、好きな物を楽しく食べたり、二人で勉強したり。以前の生活と比べると『生きてる!』って感じがしますね」


 まぁ、今までそっけない生活をしていたと思われるので、相対的に見てそのように感じているのか。

俺の方はそこまで生活が変わった訳ではないが、確かに食事は楽しい時間へと変わりつつあるのを感じている。


 きっと、姫川の料理スキルが伸びていくのを、俺は嬉しいと思っているのだろう。

これからも一緒に何か作ったり、食べたりしてその成長を見届けよう。


「そっか。まぁ、生きるためには食べる。食べるなら楽しい方がいいしな」


「はい。今日もいつものコースですか?」


「あぁ。いつもと同じコースだ」


「では、行きますか」



 笑顔で玄関を出ていく姫川。姫川の足取りは軽く、やる気に満ち溢れている。

そんな姫川を横目に俺は並んで走り出す。


 美しいと感じる真っ黒な髪が時折俺の視界に入ってくる。

姫川の頬にはうっすらと流れる汗が。懸命にまっすぐ正面を向き走っている。


 その先に姫川の未来があるのだろうか?

そして、姫川の望んでいる未来に、真っ直ぐと進めているのだろうか?


「天童君、少しペースを上げますね!」


「大丈夫なのか?」


「昨日のお好み焼きのカロリーを消費しないと!」


「じゃぁ、俺もついていくか」


 俺の目の前を走り出す姫川。

その日が来るまで、俺は少しだけ支えていこう。

ほんの少しだけ、たとえ短い時間となってしまっても。




――


「では、先に出ますね」


「あぁ。気を付けてな」


 今日も同じ様に姫川が先に出ていく。

お決まりのパターンになりそうだ。


「あ、今日は学校帰りにバイトがあるので、少し帰宅が遅くなります」


「あぁ、そういえば今日と明日はバイトだったな。わかった、初めは覚える事が多いと思うけど、すぐに馴れると思うから」


「はい! 頑張りますねっ」


 玄関を出ていく姫川。

見送る俺。さて、俺も学校に行く準備をしますかね。





――キーンコーンカーンコーン


 昼休み。自席で購買のパンをかじりながら牛乳を片手にランチタイムを楽しむ。

そして、俺に不幸がやってくる。おなじみの高山だ。

なぜか俺の目の前に来て、頭を下げている。


「どうした、ボス。珍しいな」


 頭を上げたボスは俺の両肩をつかみ、半泣きの状態でその口を開く。


「た、頼む! 俺が休んだ時の授業があるだろ、その時のノート貸してくれ! 天童の事だからこまめにまとめているだろ! 試験範囲が結構あるんだよ!」


「休んだ分のツケだな。貸す分にはいいが……」


 すると高山はお俺の目の前に紙袋を一つ置く。


「分かっている、安心したまえ。俺は天童の事を良く知っている……」


 そっと紙袋を開けるとそこには焼きそばパンが。

購買で人気の焼きそばパンが二つも入っている。


 昼休みと同時に販売されるこの焼きそばパンは人気があり、すぐに売り切れてしまう。

昼休み早々高山が消えたのはこれの為か。


「まぁ、何もなくともノート位貸すんだけどな」


「まぁまぁ、そんな事言わずに収めてくれ」


「そっか。じゃぁ、ありがたくいただくな」


 俺は早速ひとつ袋を開け、焼きそばパンを一口。

う、うまい。濃厚なソースに、パリッとしたパン。

噂には聞いていたが、ここまでうまいとは……。


「て、天童。焼きそばパンもいいけど、ノートを……」


 お、忘れていた。すっかり焼きそばパンに夢中になってしまった。

俺は机からノートを数冊取り、そのまま高山に渡す。


 しかし、この焼きそばパンうまいな……。

牛乳ともマッチするし、良い昼休みになった。


 後ろの席でひたすらノートを写す高山。

もしかしたら今回の試験、結構やる気になっているのか。

いいことだ。もしかしたら今回のテストで俺よりもいい点を取るのかもしれない。


 そして二個目の焼きそばパンに手を伸ばした時、高山から衝撃の一言が告げられる。


「なぁ、天童。もしかして、女の家庭教師でもつけたのか?」


 焼きそばパンを持った手が、袋をあける途中で止まる。

女の家庭教師? そんなのつける訳無い、じゃ、ないか?


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