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クラスで一番の美少女が俺と一緒に住むことになりました  作者: 紅狐
第一章 月が照らす公園の中で
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話の終着地点


 部屋に響き渡る秒針の音。

互いに向き合い、時間だけが過ぎていく。

ずっと考え込んでいる雄三さん。答えは出るのだろうか……。


「いいだろう。私は杏里を信じている。だが、君の全てを信頼するわけではない」


 なぜ、上から目線で言われなければならない? 俺は雄三さんに対して下に見られているのか?

確かに年齢、経験、社会的地位、貯蓄など俺が下かもしれない。


 しかし、この場においては対等だと俺は思っていた。

だが、雄三さんはそうでもないようだ。きっといつでも上からの目線でしか物事が見れないし、判断もできないのだろう。

それが良い方向で回っていればいいが、間違った方向に回った場合、今回のような事件が起きるのではないのだろうか?


「大丈夫です。何かあったら姫川さんからすぐに連絡が行くと思いますし」


 やっと話の終着点が見えた。

長かった。非常に長かった。すぐにでもベッドに横になってゴロゴロしたい気持ちがわいてくる。

だが、ここで緊張の糸を切らすわけにはいかない、もう少し頑張ろう。


「そうか……。もし、何かあった場合、全ての責任を取れるのか?」


 責任って……。俺も腹をくくって、責任を持って姫川を下宿させよう。

今まで持っていなかった管理人としての責任を持ち、下宿する方々のサポートをする。

そして、将来部屋が満室になった時に備え、今から経験を積んでいかなければならない。


「分かりました。俺も責任をとります」


「その言葉、今だけは信じてやる。それと、一つ頼みたいことが」


「何でしょうか?」


「その……、杏里にできれば実家に少しでも顔を出すように、話してもらえないか?」


 それは『たまにでいいから顔を見せに来い』と言う事だよな。

家に不在と言ってもたまには娘の顔を見たいんだろう。


「それは、直接彼女に伝えてあげて下さい。きっと喜びますよ。それに、たまにはこちらにも来られた方が良いと思います。どんな生活をしているのか、見に来てもいいと思いますよ」


 俺、ナイスアドバイス。生活の様子を見に来るという建前にの裏に、顔を見たいという本音を隠す。

素晴らしいサポートだ。自画自賛しておこう。


「そうだな、たまには様子を見に来る必要があるな」


「一つ、俺からもお願いがあります」


「なんだね?」


「先ほど言われた『こんな所に下宿、ありえない』の一言。撤回してもらえませんか? 俺にとっては自分の人生をかけても良いと思っている道です。それを何も知らないあなたに、難癖付けられる覚えはありません」


 再びヒートアップの予感。

俺個人に対して誰に、何を言われようがそこまで気にしない。


 見た目だってボサっとしているし、友人も少ないし、明るい奴でもない。

そこはこれからの課題としても下宿をバカにされるのは腹が立つ。

普段からあまり怒りを出さないように、自分の中で理由をつけて処理をしているが、さっきの一言は許すことができない。


「撤回か? 今はその必要はないだろう? どう見ても昭和の建物。防犯設備はあるのか? マンションと比べたら……」


「ちょっと待ってください! そこまで言われたくはありません! 確かに防犯設備はマンションと比べたら無いに等しいですが、それ以外も見てください!」


 防犯設備。無いに等しい。むしろ鍵一個あるだけで何もない?

……。確かにちょっと不安かもしれない。


「これから見るさ。だから『今は』と言っただろ? 現状は昭和の下宿感丸出しだ。それがいいのか、悪いのか、申し訳ないが下宿経験の無い私には判断できかねる。撤回するかはいずれ分かるだろう。いずれな」


「それは、今は撤回しないが、今後撤回するという意味ですか?」


「撤回するかは君次第だ。どうしても撤回してほしければ、精進する事だな」


 腑に落ちない言い方だ。これは俺を試すという事か?

今はまだ信用できない、昭和の微妙な下宿だが、俺の頑張りで撤回すると?

良いだろう。その言葉俺は信じるぞ。


「分かりました。いずれ、撤回の言葉を聞きます。この件、絶対に忘れないでください」


「心配するな。杏里がここに居る限り、忘れることはないだろう」


 俺は管理人として責任を持ち、姫川をここに下宿させ、雄三さんに撤回してもらう。

絶対に撤回の言葉、聞かせてもらうぜ!



 随分と時間が経過したのか。

数時間話をしたような感覚に陥るが、実際は三十分も話していない。

確認したかった話が終わったのか、しばし無言の時間が流れる。


「……すまないが、そろそろ杏里を呼んできてくれるかい?」


「分かりました」


 俺はすぐに席を立ち、扉を開ける。

ダイニングを出て恐らく部屋にいると思われる姫川の部屋に行こうとしたが、階段の所に座っている姫川がいた。


 うん。これは絶対に全部聞いていたよね?

このまま姫川と戻っても平気なのか?


 俺はそんな事を考えながら、姫川の正面に向かって歩き始めた。


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