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クラスで一番の美少女が俺と一緒に住むことになりました  作者: 紅狐
第一章 月が照らす公園の中で
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同意書

「どうぞ」


 今井さんと俺の父に紅茶を出す姫川。

俺にも同じ紅茶を出してくれた。


 茶菓子には用意した最中を準備してある。


「おかまいなく」


 今井さんは遠慮がちに一言、父はすぐに最中に手を出した。

俺の隣に姫川が座り、正面に父、父の隣に今井さんがそれぞれ座っている。


 なぜか俺も緊張してきた。さっきから俺を睨んでいる父さんの目が怖い。

いや、睨んではいない。これが普通の目つきだ。

分かってはいるが、怖いんです。


「ほぅ。なかなかの最中だな。紅茶もうまい」


 父さんの笑顔は悪魔の微笑みに近い。ドラマに出てくる悪役にぴったりだ。

こんな怖い父と母がどうして結婚したのか、今思い返せば聞いたこともないな……。


「さて、早速なんだけど、この書類を見てもらえるかな?」


 バッグから紙を取り出した今井さんは、俺と姫川の間に見えるようにおいてくれた。

『同意書』『契約書』と書かれた紙が二枚、目の前にある。


「これは?」


 姫川が今井さんに尋ねる。


「これは杏里さんが、自宅を出て一人暮らししても良いと言う保護者の同意書。そして、この下宿に住む為の契約書です。天童さんにも確認してもらい、姫川雄三さんの署名の元、天童さんとの連名でサインももらっています」


 確かに下の方には姫川の父の名前と俺の父さんの名前が書かれている。

いつの間にこの書類を準備したのだろうか?

今井さんは今回の件について、俺達に分かる範囲で色々と話してくれた。


 俺達と別れた後に、書類を準備して姫川の父さんに会い、サインをもらった事。

自宅に姫川一人でいる事よりも、下宿に入って、誰かと一緒にいた方が安全だと判断された為だと、今井さんは言う。


「この下宿は天童さんの名義になっているので、天童さんにも話をして同意してもらったんだよ」


 確かに俺はここに住んではいるが、家の名義は俺ではない。

ばーちゃんが亡くなった時に相続があったけど、俺は詳しくは聞いていない。

両親が色々と書類を書いていたことだけは覚えている。 

きっと、俺が思っているより面倒な事を色々とやっていたのだろう。


「じゃあ、これで私はここに住んでも問題が無いと言う事でしょうか?」


「そうだね。ただ、契約書にある通り、家賃をしっかりと支払うことは必要だけどね。あと、契約は高校を卒業する年度末までにしてあるので、それまではここに居ても大丈夫」


 ホッとした顔つきの姫川。これで、住む場所の確保はできた。

家賃については先日も話したし、バイトもするから何とかなるだろう。

ひとまず安心してもいいかな?


「それから、姫川雄三さんの状況についても簡単に話をしておこう」


 今井さんは紅茶を一口飲み、俺達に見せた書類をまとめ自分の手前に戻した。

俺のお父様は一言も話さず最中を食しながら紅茶を飲みほっこりとしている。

うーん、一応関係者なので話に混ざってほしいものなんですが……。


 今井さんいわく、姫川のお父さんはすでに自宅に戻っているそうだ。

報道では捕まったとなっていたが、実際は任意同行を求められただけらしい。

報道機関が派手に報道しただけっぽい。

そして、任意同行の元になった理由が、社内から公的機関に横領の疑いがある連絡が入ったこと。


「ちなみに、雄三さんが報道された時間に、とある議員の汚職についても報道されたのって記憶はあるかい?」


 俺と姫川は互いに目を合わせる。俺は見たような気もするし、見て無いような気もする。

それよりも姫川産業のニュースが印象に残ってしまっている。


「私は、覚えていません……」


「俺もはっきりとは……」


「実は短い時間だけど流れているんだよね。これ以上は詳しく話せないけど、大人になったら少しは分かると思うよ」


 俺はまだ子供って事か。まだ知らなくてもいいことだって世の中にたくさんあると思う。

そのうちの一つが、今回の事件なのか?


「それと、杏里さんの自宅にいた男性とお手伝いさんは恐らく実刑判決が言い渡されると思う」


 自宅にいた人事部の人と、俺は会っていないが姫川の自宅に通っていたお手伝いさん。

この二人が実刑? あの男はやっぱり今回の事件と何か関係があったんだ。でも、お手伝いさんも実刑?

と、心の中で思いつつ、今井さんの話を聞き続けた。

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