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クラスで一番の美少女が俺と一緒に住むことになりました  作者: 紅狐
第一章 月が照らす公園の中で
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『人』という字


 全員が教壇にいる先生に注目している。

俺は目線だけ姫川に移したが、姫川も先生を見ている。


「姫川の家族について先日ニュースが流れた。恐らくこの件については、皆知っていると思うので省略する。結論から皆に伝える。皆が心配しているような事はない。まだ一般には告知されていないが、近いうちに姫川のお父さんも戻って来る」


 教室内がざわつく。ニュースはきっと全員見ているだろう。

姫川のお父さんが現在どのようになっているのかは真相は分からない、しかし皆それぞれ勝手に想像している事だろう。


「姫川自身、家の方が大変な時期だ。みんな姫川を助けてやってくれ」


 先生が黒板に大きな『人』という字を書く。

まさか、お馴染みのあれをここで言うのか?


「いいかー、人という字はな、支え合って――」


 やっぱり! 人という字は支え合って! ってやつだ。


「――と言うかもしれないが、一画目を見てくれ。今にも倒れそうじゃないか。そして、二画目だ。見事に、一画目を助けている」


 ……まぁ、そう見えなくもないが。


「君たちには二画目のように人を助けられる大人になってほしい。助けてもらってもいい、その分誰かを助けてやってくれ」


 うん、言いたいことは分かった。

ようは、姫川が今大変で困っているから、俺達で姫川を支えてやってくれって事だろ?

クラスの中を見渡すと納得しているのか、わからないのか、皆ぽかんとしている。

恐らく皆理解したのだろう。きっとそうに違いない。


「いいかー、今までと同じように、普通に学校生活を送ってくれ。あー、それからこれは大した話ではないんだが――」



――キーンコーンカーンコーン


 チャイムが鳴った。現国の時間はここまでだ。

きっと先生の話は本当に大したことではないだろう。いつも脱線しまくりだからな。


「……今日はここまでだ。えーっと、天童! プリント回収したら、職員室まで」


 へ、なんでだ? 俺はそんな係りではないぞ?

異議申し立てをしようとしたが、先生はさっさと教室を出て行ってしまった。

何故俺を指名してきた? 疑問に思いつつ、プリントを回収し職員室までダッシュする。




「天童! 廊下は走るな!」


「はい!」


 隣のクラスにいた先生に警告を受け、俺は早歩きで職員室に向かう。

損な役回りだ。まったく今日はついていない……。




――ガララララ


「失礼しまーす」


 先生にプリントを渡し、早々に教室に戻ろうとする。


「天童、手短に話すぞ」


 俺は袖を掴まれ、その歩みを止めた。

振り返り、先生の方を見る。


「今朝、今井という弁護士から学校に電話があった」


 俺は心臓がドクンと脈打ったのがわかった。


「姫川はいま、天童の所にいる。間違ってないか?」


 俺は無言でうなずく。


「そうか……。姫川を、よろしく頼むぞ。この件については、後日詳しく話そう」


 袖を離された俺は、職員室を後に急いで教室に戻る。

今井さんが学校に連絡してきた。何か進展があったんだ。

でも、先生の言っていた『よろしく頼む』の意味が良くわからない。


 教室に戻ると姫川の周りに何人か人が集まっていた。

横を通り過ぎる時に聞こえてきた会話は、たわいもない話。

良かった、これで今まで通りの学校生活が送れそうだ。


 自分の席に座り、次の授業が始まるまでいつもの音楽を聞く。

流れる音楽はいつも同じ。何度も何度も聞いている音楽だ。

俺はこの音楽を聞くとなぜか落ち着く。


――トントン


 俺は肩を叩かれる。

何だ高山か? どうせまた大したことではない話か?


「天童、なぁ天童ー」


 振り返るとやっぱり高山だ。


「何だ? 事件でも起きたか?」


「いや、事件じゃない。なぁ、ナデシコは今傷ついているよな? これってチャンスか!」


 高山の言っている意味が俺には理解不能だ。高山は何を考えている?


「なんのチャンスかわからないが、寝ぼけた事は寝てから言った方がいいと思うぞ」


 俺はいつもより若干きつめに言葉を返す。

くーっと、高山は拳を握りしめている。騒がしい奴だ。


 そんな高山との会話も盛り上がる事無く、あっと言う間に放課後となる。

さて、姫川とバイト先に行かないとな。とりあえず姫川にメッセでも送っておくか。


『とりあえず駅前で待ち合わせでいいか?』


 しばらくすると 返信が来る。


『分かりました。ベンチでいいですか?』


『おっけー』


 手短に用件だけ互いに送り合い、アプリを終了させる。

実に効率的だ。


「天童、誰とメッセしてるんだ?」


「べつに。バイトの件で連絡しただけだ」


 嘘はついていない。ちょっとだけ言葉が少ないだけだ。

そして、帰りのホームルームも終わり、何事もなく学校の正門を潜り抜けた。



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【連載中】 微笑みの天使の恋心 ~コスプレイヤーの彼女は夢を追いかけるカメラマンに恋をした~

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