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クラスで一番の美少女が俺と一緒に住むことになりました  作者: 紅狐
第一章 月が照らす公園の中で
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男子弁当


 朝食を食べながら姫川と少し話をする。

今朝はパンとスープ。そして簡単なサラダだ。


「姫川、今まで昼ってどうしていた? 俺は学食か購買だったけど」


「私はお弁当持参でした。でも、今日からは購買にしようかと」


「弁当、俺が作るか?」


 ふと、姫川の方を見ると俺にきつい目線を向けてくる。


「男子が女子にお弁当ですか?」


 あ、もしかして言わない方が良かったか?


「す、すまん。男の作った弁当とか、嫌だよな」


「違います。そうではありません。しばらくはお昼を買ってから学校に行くか、購買ですませます」


「そ、そうか。まぁ、姫川がそれでいいならそれで」


 ちょっとふくれっ面になった姫川は無言でパンを口に運んでいる。

怒ったかな? 俺もちょっと無神経な発言だったかな?


「ご馳走様でした」


 先に席を立った姫川は、食器を下げ椅子に置いていたバッグを手に持ち台所を出ようとする。


「先に行きますね」


 すっかりご立腹になった姫川。言葉にとげがある。


「あ、今日の放課後時間くれ。バイトの件で店に姫川を連れて行きたいんだが」


 無言でうなずいた姫川は早々に玄関を出ていき、俺は一人自宅に残された。

この後簡単に掃除したり、ごみ出したりするから、別々に出て行っても問題ないしな。

それよりも一緒に登校する方が大問題だ。


 姫川から遅れる事数十分。

休み明けの学校は生徒であふれかえっている。まぁ、学校だから当たり前か。


 教室に入るといつもと同じように自席に座り、イヤフォンを耳に入れる。

目線で姫川を追う。その周りにはやはり誰もおらず、姫川は一人本を読んでいる。


「なぁ、天童。やっぱりナデシコは学校やめるのかな?」


 後ろの席の高山はまだ同じネタを俺に振ってくる。


「さぁな」


 俺は高山の言葉をバッサリと切り、参考書を開く。


「天童って本当に人に対して無関心だよな」


「無関心じゃないさ。ただ、面倒なだけだ」


 関心が無いわけではない。関わったところで俺にメリットが無いだけだ。

むしろ、デメリットが大きいだろう。

姫川に対して手のひらをひっくり返したクラスメイトに若干イライラしている。

きっとこいつらは、どんなことに対しても同じように手のひらを返してくるだろう。

だったら初めから付き合わない方がいい。時間の無駄だ。




――ガラガラガラ


「ホームルーム始めるぞー」


 大きな声で教壇に立ったのは、担任の先生。

三十才手前の女性で、結構な美人だと評判だ。

だが、酒癖が悪いらしく独身で彼氏は現在募集中らしい。

と、後ろの席の高山が言っていた。


「――以上だ。試験の結果を見て、自分の足りないところを補うように。それと一時限目の現国はこのプリントだ。姫川以外全員提出で」


 クラスがざわめく。姫川だけ特別扱いになったからだ。


「姫川はこないだの現国満点だったからな。ただ、姫川はこの後生徒指導室に来るように」


 配られたプリントに目を通す。

こないだのテストとほぼ同じ内容だ。俺も数か所ミスって満点ではなかった。


「うげぇー、俺現国苦手なんだよなぁー」


 後ろから高山の嘆きの声が聞こえてくる。

頑張れ。お前だって苦手分野の底上げができれば、ランクインできるぞ!


 プリントを見ながら、問題を解きつつ、教室から出て行った姫川は何を話しているんだろうか? と頭のどこかで考えている自分がいる。

やっぱり事件の事か、親の事か。それとも、他に何かあるのか。


 しばらく時間が経過し、教室に姫川と先生が戻ってきた。

無言で席に座る姫川。真っ直ぐに黒板の方を見ていて、無表情だ。どんな話をしてきたのだろうか?


「おーし。プリント終わったか? みんなに話がある。全員ちゅうもーく!」


 意味の分からないまま、目線をプリントから先生の方に移す。


「全員今から話す事をしっかりと聞くように! あー、姫川の件についてだが……」


 俺の心臓はドクンという音が聞こえるくらいの音が出たかもしれない。

いつもより鼓動が激しく、恐らく動揺しているだろう。

先生と姫川はいったい何を話してきたんだ……。




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