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クラスで一番の美少女が俺と一緒に住むことになりました  作者: 紅狐
第一章 月が照らす公園の中で
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遅めのランチ


 ベンチから二人で今井さんの所まで戻り、話の続きをした。

今井さんは、急に姫川が外に走って行ってしまったので、どうしたらいいかわからず、ずっと喫茶店にいたらしい。

姫川はもし可能であればタワーを出て下宿し、そこから学校に通いたいと今井さんに希望を出した。


 今井さんも姫川の考えを尊重し、出来るだけ希望に沿うよう手配してくれるらしい。

どちらにせよ、姫川のお父さんに話を通さないといけないらしく、この場では一度保留になってしまった。


 下宿先が俺の家と言う事もあり、今井さんに俺の父の電話番号を教えてほしいと言われ伝えた。

今井さんが今後どのように対応するか、俺には全く分からないが、結果が出るまで俺の下宿にいていい事になった。


 今井さんと話も終わり、喫茶店で解散した俺達はそのまま街で買い物をすることにした。





「なんか、色々とありすぎて頭が混乱するな……」


 姫川と街のアーケードを歩きながら話し始める。


「そうですね。父の仕事については私も知らないことが多いので……」


「まぁ、今井さんがこれからいろいろと対応してくれるらしいから、そんなに考え込まなくてもいいんじゃないか?」


「今井さんは信用できる方なんでしょうか?」


「どういうことだ?」


「家にいた方も、お手伝いさんも、大人って信用できないんじゃないかって……」


 まぁ、世の中いろいろな人間がいるからな。いい人も、悪い人も。

誰でも信用していいわけではないし、それを見極めるのは自分の目だ。経験を積んでいかないといけないな。


「まぁ、そうだな。でも、今回の件とか、絶対に俺達だけでは何ともできないだろ? やっぱり大人に任せるしかないと俺は思うぞ?」


 少し元気がなくなった姫川は、歩く速さも次第にゆっくりになっていき、そして止まってしまった。

俺は止まった姫川の所まで戻り、姫川の顔を覗き込む。


 泣いているのか?


「どうしてこんなことになったのでしょうか? 私はただ、普通に学校に行って、普通に生活したかっただけなのに」


「その普通ってなんだ? 普通って多分、姫川が思っているより難しいと俺は思うぞ」


 父と母がいる。家族がいる。家がある。祖父母がいる。学校に通える。三食食事ができる。

温かい布団で寝ることができる。スマホを持っている。これが普通か?


 両親はいない。家が無い。親族もいない。三食食べることができない。

今、俺達は食事もできるし、布団で寝ることも出来る。


「そんなに悩むなよ。きっと、何とかなるって。姫川のお父さんだって、すぐに帰って来るって言っていたじゃないか」


「確かに今井さんはそのように話していましたが……」


 ここで話していてもきっと結論は出ないだろう。

悩むことが悪い事ではない。しかし、悩んでも結果が出ない問題だって山のようにある。


「所で、腹減らないか? ちょっと遅くなったけど何か食べよっか」


 俺は無理やり話題を変え、姫川をランチに誘う。

アーケードは色々な店があり、ファーストフードから丼もの専門店、洋食和食中華に食べ放題。

結構なんでもそろっている。


「何食べたい?」


 しばらく無言だった姫川は少し考えた後に口を開く。


「パスタ。サラダ付きで」


「よし来た。メニューが豊富で、安くてうまい所がある」


「それは楽しみですね」


 元気なく答える姫川を横目に、俺は一緒にパスタ屋さんを目指してアーケードを進んで行った。





「いらっしゃいませー! 二名様ですか?」


 店内に入ると、昼を過ぎたにもかかわらず、店内はそれなりに混んでいる。

案内された二人用の席に座り、メニューを開く。

チェーン店ではなく、個人が営業している店で、アーケードのメインストリートからは少し離れる。

店内もおしゃれな造りになっており、流れているジャズも店の雰囲気に合っている。


「天童君って、普段からこんな店に?」


「来ない来ない。バイト先の先輩に連れてきてもらった事があってさ」


 スタッフにオーダーし、来るのを待つ。


「これからどうなるんでしょうか……」


「今井さんからの連絡待ちじゃないか? 進展あったら連絡くれるんだろ? 明日から学校も始まるし、連絡が来るまでは普通に過ごしていていいんじゃないか?」


「そうですね。連絡が来るまでは引き続きお世話になりますね」


「あまり世話はしないと思うが、好きにしてくれ」


 頼んだオーダーが届き、俺達は少し遅めのランチを食べた。


「な、結構うまいだろ?」


「おいしいですね。それでこの価格は……。良いお店を教えてもらいました」



 食事も終え、本格的に姫川の買い物ターンになる。

女子の買い物は長い。買うのか、買わないのか。欲しいのか欲しくないのか分からない。

手にとっては元の場所に戻し、同じ店を何回か回ったり。


「姫川、この店さっきも来なかったか?」


「え? 来ましたけど」


 即答されてしまった。本人も同じ店と気が付いていると言う事は、確信犯だ。

意図的に同じ店に戻ってきている。何の為に? 俺はそろそろ歩き疲れたぞ?


「あのさ、買うもの決めてる?」


 俺は姫川に問いかける。


「き、決めてますよ。さっき見たやつと、こっち。どっちがいいか少しだけ悩んでいるだけです」


 俺から見たらどっちでもいいじゃないか! と、思う事でも姫川にとっては大事な事らしい。

しょうがない、しばらく付き合ってやるか。


 こうして、アーケード内の店を行ったり来たり、姫川の買い物ターンは続くのであった……。


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【連載中】 微笑みの天使の恋心 ~コスプレイヤーの彼女は夢を追いかけるカメラマンに恋をした~

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