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クラスで一番の美少女が俺と一緒に住むことになりました  作者: 紅狐
第一章 月が照らす公園の中で
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自分の道


 一度荷物を置きに下宿へ戻り、再び買い物に出かけようとする。

今度は街の方にでも行くか。絶対に商店街では買い物をしないと俺は心に誓っている。


「じゃぁ、足りない物でも買いに行くか」


「お手数おかけしますが、よろしくお願いします」


 玄関を出ようとした時、スマートフォンの呼び出し音が鳴った。

俺のではなく姫川のだ。


「あ、ちょっと待って」


 姫川はその場で話し始めた。


「はい、姫川ですが」


 しばらく話し続ける姫川。何の話だろうか?

さっきから「はい」とか「そうなんですか」とか相槌しかうっていない。


「今すぐですか? 一度折り返してもいいでしょうか?」


 そう話した直後電話を切った姫川は、玄関に座り込み俺の方を見る。

スマホ片手に玄関に座り込んでしまった姫川。

一体どんな内容の電話だったのだろうか?


「天童君。あのね、弁護士の今井さんって方からだったの。すぐに話したいことがあるから会えないかって」


「弁護士? 姫川と話がしたいって? いいんじゃないか?」


「そうだよね、話してもいいよね……」


 どう見ても不安がっている姫川は、折り返すと言っていたにもかかわらず電話をかける気配がない。


「俺もついて行こうか?」


「うん……」


 折り返しの電話をした姫川は俺と一緒に行くことを伝え、これから街の喫茶店で落ち合う事になった。

買い物の予定だったが、まぁしょうがないな。




 さっきの件もあり、商店街を通らず裏道で駅に向かう。

電車に乗り街へ移動する。落ち合う予定の喫茶店に着き、姫川は喫茶店の前で電話をする。

喫茶店の中から出てきたのは姫川の自宅にいた人では無く、メガネをかけた若い男性だった。

俺達は奥の席へ案内され、その人を目の前に俺達は二人並んで座る。


「急に呼び出してすまなかったね。弁護士の今井です」


 そう話した今井さんは俺達に名刺をくれた。


「今井さんは弁護士さんなんですか?」


 姫川はもらった名刺をテーブルに置き、今井さんに話しかける。


「今回の件を担当させてもらっています。姫川雄三さんとも色々と話を進めていますよ」


 今井さんの話を聞く限り、姫川と話をしようと何度か自宅を訪ねたが自宅にいたお手伝いさんに姫川は不在だと言われ、帰ったら連絡を貰うようにしていたが一向に連絡が来ない。

今朝も自宅に行ったがまたも不在で、直接連絡してきたとのこと。

そして、今井さんは今回の件について、色々と話をしてくれた。


「姫川さん。結論から言うと今までの生活にはすぐに戻れますよ」


 俺達は言葉が出ない。すぐに戻れる? それはいい事なんじゃないか?

姫川の方を見ると無表情で今井さんの方を見ている。


「そうなんですか? すぐに戻れるんですか? 自宅にいた人事部の方には帰れないと……」


「変ですね、帰れないなんて事はないんですが……。あのマンションは雄三さんの所有する物件ですよね?」


 何か話がかみ合わない。何かがおかしいな。


「自宅にいた人事部と名乗った男、多分姫川さんの自宅で何か探していると思います。もしかしたら、今回の事件と関係があるかもしれません。念の為、調査してもらえませんか?」


「そうだね。ちょっと気になるから、早めに対応するよ。あとはこっちで責任もって全て対応するよ」


「……良かったじゃないか、姫川。あとは今井さんと一緒に話を進めれば、全て解決じゃないか?」


「そうですね。これからは私が姫川さんの対応を全て進めていきますね」


 今井さんは笑顔で俺達に話しかける。


「え、でも……」


 俺の方を見てくる姫川。良かったじゃないか、元の生活に戻れるんだ。

そして、俺達も何もなかったことになる。元に戻るだけだ。今までと何も変わらない。


「じゃ、俺はそろそろ帰るよ。後の事よろしく頼みます」


 俺は席を立ち、今井さんに頭を下げ出口に向かう。


「ま、待って! 天童君!」


 そんな姫川の声が俺の耳に届いていたが、俺は振り返る事無く喫茶店を後にする。

もともと俺達は何もなかったんだ。それが元に戻るだけ。

そして、無性にこみあげてくる何かがあり走りたくなった。

喫茶店を出て、駅に向かって全速力で走り出した。俺はなぜイライラしている?


 そんな疑問を胸に抱えつつ、自宅に戻ろうと駅前に着き、ふとベンチを見る。

姫川が座っていたベンチだ。あいつは、この前ずっとここに座っていた。ほぼ一日。


 俺は自然と姫川の座っていた場所と同じところに座り、空を見上げる。

駅前では多くの人が行き交い、色々な話声が聞こえてくるが、俺の耳には入ってこない。

呆けているとでもいえばいいのか、この気持ちはどうすればいいんだ?


 しばらくすると俺の目の前に立ち止まった人がいる。

俺に話しかけるな。俺は今、誰とも話したくないんだ……。ほっといてくれ。


「て、天童君。こんな所で何してるの?」


 俺はその声に反応し、すぐに立ち止まった人に目線を向ける。


「ひ、姫川? なんでここに?」


 息を切らして、肩で呼吸をしている。


「追いかけて、きちゃった。足、速いんだね」


 とぎれとぎれな声で俺に話しかけてくる姫川は何を考えて追いかけてきたのだろうか?

今井さんとの話しは終わったのか?


「私は、自分で決めるよ。これからの事を自分で決める!」


 力強く言い放った姫川の目は力強く、真っ直ぐに俺を見ている。


「そっか、自分で決めるのか。いいんじゃないか、自分で自分の道を作って、歩いて、その先に進んでも」 


 そして、姫川は俺に手を差し伸べてくる。

何も考えず、俺は自然とその手を握った。姫川に引っ張られ、立ち上がる。

立ち上がった俺に姫川は強い口調で言い放つ。


「行こう!」


 その手に引かれながら、俺は姫川と一緒に走り始めた。 

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【連載中】 微笑みの天使の恋心 ~コスプレイヤーの彼女は夢を追いかけるカメラマンに恋をした~

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