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第五話 便利なモノって怖いよねって話 上

 

 つらつら考えたり、思い出したりしている内にメンドさんによるカメリア研磨作業も終わり、ただいまとてもいい匂いのする湯船に使っております。香油とか使ってんのかな?


「ア"ア"~良きかな良きかなぁ――」


 いやはや、まさかここまで風呂文化が進んでいるとは思っていませんでした。

 ほら、こういう西洋的な世界観だと、お風呂ってあってないような感じだと思うじゃない?

 実際前世でいた世界には、無かったし。

 全く無かったわけではないが、体を水で拭いたりとか、そのまま水浴びしたりとか簡単なモノだった。


 それに比べ、今世は最高だ。

 ちゃんとした風呂文化がなるんだから。


「いいわぁぁ――風呂は人類の宝! 文化の極みだよ!」


 と某最後の使徒のような事を言ってみる。


 でもこれは、数年前から流行りだしたモノらしく、それまでは湯船に浸かる為にはかなりの重労働で、頻繁に行っているのは大貴族か王族ぐらいだったとのこと。

 簡単に言えば、超贅沢行為の一つ。

 それが今では、とある伯爵令嬢のお陰で気軽に行えるモノへと変わりつつある、らしい。

 今手にしている()()も、その令嬢発案した物の一つなのだ。

 先ほどメイドさんの一人が私の髪を洗っている時に使っていた()()を今マジマジと観察している。


 ……シャワーヘッドじゃん、これ。


 この世界にはシャワーが存在するのだ! これには驚いたね! しかもホースが無い!

 ではどうやって水またはお湯が出るのか。

 なんと魔法で生み出してるらしい。

 なんでも初級魔法とか基礎魔法と呼ばれる簡単な魔法を使用しているので、魔力量が少ないとか魔力操作が苦手な人でも、簡単に扱える、とティティが言ってた。


 このシャワーヘッドを解析してみた結果、『ウォーター』『ヒート』と呼ばれる魔法そして、流動系魔法が組み込まれていた。

 これらの魔法はこの世界では訓練すればだれでも使える魔法で、特に『ウォーター』はシーカーと呼ばれる人や、兵士とか戦う事を職にしている人たちは真っ先に覚える魔法だとか。

 ただ、これさえ覚えれば水の心配はしなくていい、というモノではなく、万が一の時の為――いわいる、保険という意味合いが強いみたいだ。


 ちょっと打線したが、こうした生活を便利する為に、魔法を用意る考えを発表した件の発明令嬢は、同時かなり騒がれたらしい。特に魔法やらを研究している魔導学省と呼ばれる機関が。


 騒いだ理由としては、この世界の住人にとって魔法とは戦う術、武器と言った感じが強いようで、生活の為に用意るという発想は考えもしなかったようだ。


 まぁ、魔法を拳銃だと考えて、それを突きつけられて『これは空気圧縮を利用した指圧マッサージ機です』とか言われても使う気になれないよねぇ。とかあほな事を考えてみる。


 それに……彼女、発明令嬢の作ったモノはこれだけじゃない。

 IHヒーターもどきだとか、ガスコンロもどき、それから女性下着に、いろいろなモノを発案して作っているようだ。

 それらは現代ってまぁ、私がまだ俺だった――前世の転移前――頃を彷彿させるのが多い。


 ここまでくると、思っちゃうよね……。

 この令嬢は――ってここまでにしておこう。

 変なフラグ立てたくないし。

 それに画期的な発想を持った聡明な令嬢かもしれないし……ね?

 と否定してみるがだんだんと不安になってきたところで、ティティの声が聞こえてきた。


「お嬢様。そろそろお上がりになってください。のぼせてしまいますよ?」

「そうね。お風呂に浸かると、いろいろと考え込んで時間を忘れちゃうわ」


 そう言いながら湯船から上がり、手にしていた魔道具をティティに渡す。


「それはこの魔道具の事ですか?」

「ええ。よくわかったわね」

「熱心に観察しているご様子でしたので」

「その……なんだか恥ずかしいわね。一人遊びを見られたようで」


 と可愛らしく照れてみせる令嬢ロールで誤魔化すが……滅茶苦茶恥ずかしいですっ!!

 いやまぁ、今は六歳児だから? 風呂で一人遊びに興じようとも問題ないだろうが……前世から数えたら幾つになんのよ私ってなるじゃない!?

 くっ! 殺せっ! を本気で思うわこれ……。

 捨てたはずの羞恥心が蘇り悶えていると、ティティが質問してきた。


「お嬢様。この魔道具に見て、どんな事をお考えになられたのですか?」

「そうね――」


 とタオルを手にしたメイドさんを眺めながら、とりあえずここは全力で、この失態をうやむやにする為、話す事に集中する。


「先ずは、とても便利なモノだと感心したわ。特に関心したのは、魔晶石を内蔵することで使用者は発動時以外は魔力を使わなくていい、てとこかしら」

「そうですね。それによってこの手の魔道具はだれにでも使用できるわけですから」

「そうでしょう? 魔力の少ない子供でも使う事ができるわ」


 私はここで、それらが内包しうる危険性についても語る事にした。

 ティティなら気付いているでしょうが。


「でもね。それはとても怖いな、て思ったわ」

「怖い、ですか?」

「ええ――とってもね」


 ティティは私の言葉を聞いて不思議そうな顔をする。

 彼女はエルフだし、魔法については人種とは比べようのない知識量を持ってるから、理解できてないわけじゃないだろうけども……もうちょいお付き合い願おうか。


「例えばね。あの魔道具の出力制限を取っちゃたら……どうなると思う?」

「――っ! まさか!?」


 やっぱりティティはすごいよね。

 多分これだけで私が何を怖がってるかわかったようだし。


 でもまぁ、ティティ以外はキョトンとしてるし、これから体を拭かれて服を着るまでに時間かかるから、みんなにも聞いてもらいましょうか。


 ――六歳児の戯言を。




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