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竜公嬢と新たな家族


あの後、リンティの妖精魔法でお母様と連絡を取り、転生前の私の家族と暮らしたいと相談。


「あら! 竜時代の? もちろんいいわよっ! カメリアの家族なら私の家族よ」と可愛らしいお声で了承頂けた。なので、早速呼ぶ事になったけど、なるべく広い場所がいいのではと思い、場を我が家の鍛錬場へと移した。


彼女たちに会うので私は装いを、鱗と同じ黒に見える濃い赤色の軍服にしてみた。

彼女たちと会うならやっぱりこれよね、と自分の軍服姿を眺める。


旧式の軍服にファンタジー要素を取り入れた私と彼女たちの軍服……懐かしいわ。

ちなみに今の私は幼女の姿だったりする。


「なんとも凛々しいお姿ですね?」とティティが私の出で立ちを見てそう言う。


「でしょ? ああ、やっぱりスカートよりこっちの方が落ち着くわ」

「そうなんです? アタシはカメリアちゃんの素足が見れなくて残念なんですが」というのは……言わなくてもいいわね。


「ふむ……軍国の装いに似ているな」と王様が呟き、それに答えるのがイケメンのセシルさん。


「ええ。かの国に赴いた際に見た物と似ていますが……あちらは着飾っている、と感じました。ですがカメリア様の纏っている服装には、配色や装飾に明確な意思のようなものを感じますね」


私はその答えを聞いてびっくりする。

彼女たちが私に対する思いや意志なんかを表すためにこういったデザインになってて、それをセシルさんは読み取れるとは思ってもいなかったからだ。


……見た目が爽やかなイケメンでも戦う事の出来る人間なんでしょうね。




みんなにも軍服姿をお披露目した事だし、さっそく彼女たちを呼ぶ。


「先ずは、タナトス! 聞こえたら返事してちょうだい!?」と声を張り上げれると、しゃがれたお爺さん声が鍛錬場に響く。


「おぉ! 珍しいのぅ。()()()()()ではないか? なんぞようか?」

「ええ。実はあなたに預けている子たちと――」と事情説明。

「――ほう。そうか、人に転生するとは、やはりおぬしは面白いのぅ。よいよい。あの者たちもそれがよかろうて。しばし待て」


そういうとタナトスの気配が遠のいた。

その代わりに懐かしい気配を感じ出す。


黒い霧のような、靄のようなものが集まり大きな渦になる。

そして、その渦か一定のリズム刻む足音。

革靴特有のコツコツという不思議と気持ちのいい音。


ややあって、姿を現す三人女性たち。

左から金髪の少女、赤髪の女性、青髪の女性。

三人とも私と同じではあるが、みんなそれぞれ自分の髪の色を意識した装飾が施されている。


赤黒い軍服を纏った女性たち。

ああ、みんな元気そうでよかった。

そう心から思える凛々しい顔。


私と向かい合う形で三人は横に並び、中央の赤髪の女性――ビスマルクが一歩前に出る。



「冥界維持軍、師団団長、ビスマルク! 召集命令に従い、参上致しました!」

「同じく、冥界維持軍、殲滅師団団長、マリー! お呼びとあり、推して参りました!」

「同じく、冥界維持軍、高機動遊撃師団団長、グラーフ。閣下はあまり堅苦しいのはお好きではない事をお詫びしつつ、御身の前に」


「総員! 敬礼!!」とビスマルクの凛とし鋭い声が響く。

一糸乱れぬその動きはほんといつ見ても惚れ惚れするわね。


「尚! 現時刻を以て、閣下よりお預かりしている権限をお返しすると同時に、我等三人は階級を大佐に戻し、閣下の指揮に全身全霊でお応え致します!」


そうビスマルクは誇らしげに笑うと――


「待ってましたよ。ティア様」


とても先ほどまでも凛々しい顔から凄く優しい笑顔を私に向けてくれた。

その顔を見た私は嬉し過ぎて、いつかみたいに空を見上げそうになる。

でも、それをグッと我慢して私は声を張り上げた!


「ただいまっ!! みんな!」


叫んだ所為か知らないけど……また涙が出てしまった。




それから、三人に飛びつかれてもみくちゃにされたけど……嬉し過ぎてそれどこじゃなかったわ。


「みんな。ごめんね? 私のわがままにつき合わせて。でもこれからはずっと一緒よ!」


「ティア様と一緒なんて! 気を抜いたら昇天しそうです!!」と、とんでもない事言ってるのはマリーちゃん。 


「もう。マリー姉さん? はしたないですよ?」と微笑みながら窘めてるのがグラーフ。


で、「そうですよ。マリー。貴女は少し言葉遣いを改めるべきです」と小言お言ってるのがビスマルク。


以上この三人が私の家族――の代表。


軍って言ってる時点で察しはついてると思うけど、私の家族はあと三十万程いる。

どれくらい昔だったか思い出すのが大変なぐらい昔に、神を名乗って調子にのってた連中からぶんどったのが彼女たち。その時の名称は神罰軍『メギド』


それから……暫く一緒にいたはずなんだけど。この辺の記憶が曖昧なのよね。

まぁどうでもいいわ。こうして会えたんですもの!


「あ! そうだわ! 私あなた達に上げる名前を考えてたの!!」といえば三人と驚きの表情。


「え!? 名前をいただけるんですか!!」と代表して声を上げたのはマリーちゃん。


「ええ! じゃ発表するわね! あなた達は今日から『アハトマト』よ! ミドルネームでもファミリーネームでも好きに使ってちょうだい!」


と、ぺったんこなお胸を逸らして、ドヤ顔で私はそう宣言した!



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