竜な公爵令嬢と……。5
申し訳ない。投稿をミスってしまいました。
「――という流れだ。簡単に言ってしまえば、内乱が起こる。いや『起こす』と言うべきか」
王様が語った内容を大まかに纏めると。
私利私欲に走り腐敗した貴族派閥の粛清。
腐り使い物にならないどころか、国(体)を腐らす毒である左腕(貴族)を、内乱誘発という手段で切り落とし、駆逐する。
そして、王様と右腕という側近たちが選び、育てた時代を新たな左腕として国を立て直す。
「随分思いっきりがいい王様だこと」とお茶で口を潤した後、そう言って王様に微笑みかける。
「そうしなければならぬほど、あいつらは腐っているのだ。そなたにあのような言葉を吐きつけるぐらいな。……あれには本当に肝を冷やされた。走馬灯というものを初めてみたぞ。なあ? セシル」
くたびれた表情で王様は、隣に座るイケメン改め、セシル君に話を振る。
「――全くです。カメリア様が床を砕く程度で済ましてくれて、本当に安堵しましたよ」
とこちらもくたびれた表情。
そんな二人を見ながら思う。
そういう表情も絵になるねぇ。と。
「ん! カメリアちゃん! こんなくたびれたおっさんに興味をもっちゃだめですよ!」
何か察したの急に騒ぎ出すリンティ。
「興味は……そうね。鑑賞するぐらいには持ってるわね。だからそんなに心配しなくてもいいわよ?」
「ほんとですか? ランディのクソガキの件がありますので信用できないんですが」
「あら! リンティ、クソガキなんて言葉使っちゃだめよ?」
そう微笑みながら窘めれると、
「んーぅ。その姿は卑怯です。お姉様オーラが強すぎて全肯定しちゃいそうです」
「ちょっと拗ねるリンティって和んじゃうわ」
けっこう重要なカミグアウト聞いたのにも関わらずリンティと私は和気あいあいとじゃれつく。
だって、ねぇ? なんら脅威にもならないでしょ? あれなら。とオークに似た貴族たちを思い出す。
それから暫く王様、セシル君、ティティにリンティとで雑談に花を咲かせて、優雅なお茶会を楽しんだあと、王様のお願いが語られた。
「――今度は俺個人の話と願いを聞いてはくれないか?」
「いいわよ? 楽しいお話をいっぱい聞かせてもらったし。特にお母様とお祖母様のお話を聞けたのがよかったわ!」
「あの二人の話でよければ、いくらでもあるからな。今度ゆっくり話そう」
「ええ。楽しみしてるわ」
と返したのち、王様が一度咳払いして、またもや覚悟完了な表情になる。
「率直言おう。俺の家族をこの家に住まわ――」
「――いいわよ。王様のご家族。私の翼の中に招いてあげる」と最後まで聞かずに了承する。
「え?」と驚く王様、と何故かセシル君も驚く。
「そんなに驚くことかしら?」
「いや……カメリア嬢は家族に並々ならぬ拘りがあるようだからな。そこに他者迎えろ、というのは逆鱗に触れる事ではないのかと。こちらとしては、いろいろ覚悟を決めていたのだ」
「そうなの? まぁ頭ごなしに言われた、あれだけども。個人でお願いしに来てるんでしょ? しかも家族を守る為に最善を尽くす。好きよ? そういうの」
本当にそう思うし、共感もできる。
私だって家族な為ならなんだってするわ。使えるモノ全て使って。
でも、王様は王という力を一度も使わずに私と対等に交渉しようとしている。
ここに関しては、私は真似できそうもないわね。
だから、私は王様の『お願い』を聞く事にした。
「フフフ――ティティの言った通りになったわね。今日中に何とかなるって」
「ええ。私はグランツがどういった理由でここに来たのかを事前に聞いていました。ですが……やはり」
「納得できない?」
「はい」
「じゃこう考えてみて? 王様の家族を人質に取った、て」
そう言って笑いかけるとティティは盛大に目を見開く。
というか、王様は家族を人身御供にしてフリード家の力を借りたいんじゃないかなって思うよね。
そうすると否応なしに私を、引っ張り出せる。とか、こんな感じかしら?
さっき思った私が真似できない事。
それは家族を差し出す事。
「王様ってすごいわねぇ」と言うと王様は少し疲れたような顔で笑う。
「王よりも父親として在りたいのだがな」
この言葉を聞いて私は、王様の評価を改める事にした。




