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竜な公爵令嬢と……。1


あれから竜である事がバレて数日経過した現在、私は特注ソファベッドの上で文字通り羽を伸ばしてだらんとしている。


「……疲れたわ」


いくら竜が肉体的疲労がない生き物とはいえ、精神的な疲労感というのは感じるのだ。


ざっくりとだが、ここ数日間の出来事を並べると。


先ずあの日、リンティ、ティティに続いてお母様にバレた後、フリード家関係者全員にバレた。

勿論、使用人にも、だ。

そして、なにより驚いたのはみんな「竜? だからどうした?」てな感じでいつもと変わらぬ笑顔を向けられてしまった。

こっちはそれなりに覚悟してたので、肩透かしのようなあっけなさを食らう羽目に……。


いろいろ覚悟してたんだけどね。令嬢生活十日目で終了。のちに野生児美幼女爆誕のお知らせ! みたいな。


「さすが私の実家だわ。勇者がゴロゴロいてびっくりよ」

「そうですよ? カメリアちゃんが竜の転生体であろうが関係ないんです」


そう言って私の独り言に返事をくれながら影から現れたリンティは私が寝ているソファベッドに腰かけ、頭を撫でてきた。

彼女が言うように私は竜の転生体って事にしておいた。まぁ間違えじゃないんだけど……全部言う必要もないかと思ってその流れに乗ったのだ。きっと()()それを望んでるはずだ。


「リンティ? あなた出てきてもいいの?」

「ええ。昨日の使用人会議で、お嬢様から見つからないように隠れる必要がないだろうって。というか隠れても無駄、て話なんですがね」

「それもそうね」

「……しかし。思いっきり伸びちゃってますね」


と私の頭を撫でつつ上の翼をムニムニと揉みながら「ひんやりしてて気持ちがいいですね」と彼女の大らかな声を聞きつつ精神的疲労の主な原因を思い出してイラっとくる。


「そりゃぁ、伸びるわっ。忙し過ぎなのよ! この数日間!」


とぷんすこ怒りつつ、リンティの程よく引き締まった腰にしがみつき顔をぐりぐり押し付ける。


「ありゃ。これはよっぽどお疲れのようですね」と頭を抱えこまれてギュッとされる。

リンティの匂いを嗅ぎながら、この締め付け感と息苦しさを感じるとなんでこうも落ち着くのかしら。


「家族会議に、陛下との謁見。それから主要貴族たちにお披露目且つ交流のパーティー。その後は王家の方々との交流……で最後は昨日のアレですか。私達は傍に控えるだけでしたが、それでもうえっ、て思いましたからね」


彼女が言葉にしたここ数日の内容聞き収まった苛立ちが再燃する。


最初の家族会議になんら問題ない。むしろ、もっとやれって話だ。大事な家族とこれからについての会議だからね。

次の陛下との謁見も、まぁ……わからなくもない。

報告の義務とかあるし。

国のトップには顔見せと「危害は加えませんよ。そちらがなにもしなければ」という意思表示ぐらいしないとね。

よってこれは許容範囲。


だが、それ以降はなんなの? 必要? 


王権国家なんだから、王様に顔見せとけばいいじゃんないの? これからお世話になりますね的な感じで挨拶して終わりでいいじゃんね? ダメなの? 


「カ、カメリ、ヤちゃん……それ以上ギュッとされると上から、あと下、っから。い、ろいろ出ちゃう」


どうやら、いろいろ思い出して彼女の腰を情熱的に抱きしめてしまったようでリンティの苦しそうな、というか苦しんでる声を聞いて我に返る。


「ごめん。リンティ。そのつい、ね。アハハ……」


と言いながら腰から離れて体を起こしてぺたんこ座りをする。あれだ女の子座りってやつ。


「……いろいろ出ちゃいそうになりましたが。これはこれで、カメリアちゃんの愛を強く感じますのから癖になりそうです!」


顔を赤らめてフンスっ、とそんな感想を述べられてもね……どうしろと。

てな感じで彼女の顔を見つめていると、コホンとわざとらしく咳払いをする。


「カメリアちゃんの疑問はよぉーくわかります。ちょっと前まではそれでもよかったでしょうが、今はこの国もそれなりに大きくなり、貴族もそれに合わせる様に増えましたからね。いろいろあるんでしょう……ですが、昨日のアレはいけませんね」


とニコニコと細められていたリンティの目が開く。

開いた先にはなにやらヤバい光を放つ紫色の瞳。


「カメリアちゃんがあの場で猿どもの戯言に怒ったから我々は黙ってはいますが。……我々の怒りが収まったわけではないと、今度ちゃぁぁんと、お教えするべきでしょうねぇ」


私を見ているようで見てないリンティの、フフフとヤバい笑い声を小さく漏れてるのがすんごい怖いんですけど。

でもリンティが怒る姿を見ていると、彼女には悪いがなんだか嬉しい。

私の為に怒ってくれている。そう思うとやっぱほっこりして苛立ちがどっかに行ってしまう。



そんな風にリンティと二人で苛立ったりじゃれあったりしているとコンコンという音が。


「どうぞ」と答えるとすまし顔のリンティではなくティティが部屋に入ってきた。

私達の寝っ転がってるソファベッドまでくるとジト目で妹のリンティを見る。


「リンティ。応対は貴女がやりなさい」

「へ? だって今日はあたしお休みですよ?」


と答えた妹を無表情で見つめだす姉。あ、これティティすんごくイラっとしてるわ。


「うちの愚妹が……申し訳ございません」

「いいのよ。リンティだもの。しょうがないわ。で何かあったの?」


なんとなくだがティティの表情に若干憂いを感じるのよね。こうちょっとめんどくさい事になりました的な? 


「実はお客様がお見えになるので、お支度を、と」


それを聞いて私は確信する。


あー……これ面倒な奴だ。





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