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第80話 レインボー

「闇、炎と来て、今度は雷かよ」

 

 俺の背後でぼやいている声のとおり、今度はバチバチと青白い火花を放つ雷の龍だ。

 

「ギリク。そっちは終わったのか?」

「お前程の実力者が気配も探れないとは言わせないぜ? どうせ、全部わかってるんだろ? もう俺とお前たちしかいない」

 

 ギリクの言うとおり、視界の端にあるマップには、シンシアとギリク、そして『イエローリキッドメタルドラゴン』以外一切の光点は映っていない。

 

 どうやら、ディアンダさんとメロもキチンと引き上げたみたいだな。

 

「なら、お前もさっさと引き上げろ」

「おいおい、そんな興ざめするようなこと言うなよ。圧倒的強敵! 低い生存率! 絶体絶命! 結構なことじゃねぇか。冒険者が冒険しなくなったら終わりだろうが?」

 

 あー、こいつはアレか。

 バトルジャンキーとか、冒険バカとかそういう類いの奴か。

 

「つっても、巻き添えで死なれるのは、夢見が悪いだろうが。『雷纏』」

 

 バチィ!

 

「うおおっ!? ビリッときたっ!! お前っ、危ないだろうが!!」

 

 気絶させて強制的に転移させるつもりだったんだけど……

 

「……言っても聞かないならそれでいい。今は恐らく弱点を突いてもまともに攻撃が通らない。【イエローオーラ】が薄まったら仕掛けるから、邪魔だけはするなよ?」

「バッチリ合わせてやるから安心しろ」

 

 まぁ、ちょっと底の見えないところがあるが、ギリクの実力は本物だろうしな。

 

 それに、【真理の魔眼】のレベルが上がったおかげもあって、多少は楽ができそうだ。

 

 ──────────

  魔物名

   イエローリキッドメタルドラゴン

 

  レベル

   289

 

  スキル

   邪龍魔法(レベル3)

   邪龍の威圧(レベル8)

   怨響(おんきょう)(レベル8)

   イエローオーラ(レベル8)

   イエローブレス(レベル11)

   雷魔法(レベル10)

 

  特殊・特性

   千変万化

   腐食ガス

   毒ガス

   マインドブラスト

   流動

 

  弱点

   炎

 

  説明

   液体金属の魔物。

   コアすらも液体金属でできている特殊な個体。

 

 ──────────

 

 なんと、弱点が表示されるようになった。

 これで、全属性分の攻撃を試す必要がなくなったって訳だ。

 

「ん? なんだ? お前、それ魔眼か? 感じからみて、看破系の魔眼か……」

 

 まぁ、バレるよな。

 

 以前こっそり見ようとして失敗しているが、あれから【真理の魔眼】のレベルも上がったし、ギリクのステータスを見ることができるようになったかもしれないな。

 

 などと考えつつ、意趣返しとばかりに【真理の魔眼】を向けるが、何も表示されない。

 

 ちっ、駄目か。

 実力のあるAランク冒険者のスキルなら、収集するだけでもよさげなものがあるだろうし、ギリクが思ったより弱ければ、なんとしてでも帰らせれば良いと思ったんだけどな。

 まぁ、俺の感覚を信じるなら、後者の可能性はほとんど感じないけど。

 

 ギリクの実力は、この場にいたどの冒険者よりも高い。

 今回の戦いには、なぜかSランク冒険者が参加していないため正しく判断することはできないが、Sランクだと言われても驚かない程の実力差があった。

 

 それが証拠に、常に前線に在り続けても全くの無傷なのだ。

 

「ちなみに、俺には魔眼は通じないぜ? 精霊と契約すると、そういう類いのものは通じなくなるんだ。お前も精霊使いなのに知らなかったのか?」

「シンシア、そうなのか?」

「うーん、私も初めて契約したし、そもそも契約できるなんて思ってなかったから、そういう細かいことはよく知らないわ」

 

 あんまり細かくないと思うんだけど。

 うーん。まぁ、いいか。

 

 ステータスを一切見ることができなければ、精霊使いだと疑えって事だな。

 理解した。

 

 そういえば以前【真理の魔眼】のレベルが上がったおかげで、もう一つ見えるようになったものがあったな。

 

 ギリクの身体を包むマント。

 普段はそこで隠れている()()を見ながら、ギリクの言葉が半ば真実であることを改めて理解する。

 

 つまり、こいつも精霊と契約した精霊使いなのだと。

 

 ギリクの契約精霊は、炎のトカゲらしい。

 大きさは、猫くらい。

 そんなトカゲが、のそのそとマントから這い出している。

 

 まぁ、おあつらえ向きに、イエローリキッドメタルドラゴンの弱点は炎だしな。

 放っておこう。

 

「シンシア、待たせたな。アイツの弱点は炎だ。ようやく調べられるようになった」

「わかったわ。さっきの分も合わせてボコボコにしてあげる」

 

 シンシアはそう言いながら、腕をぐるぐるさせている。

 やる気も十分だな。

 

「(そういえば、精霊同士なんかあったりするのか? シンシアって実は偉いんだろ?)」

「(まぁ、あの冒険者が敵対してこない限りは大丈夫よ)」

 

 シンシアも顕現している状態なので、互いに念話だ。

 

「(そうなのか。ならちょっと安心した。

 ――ちなみに、敵対してきたらどうなるんだ?)」

「(……知りたい?)」

「(うーん、やっぱり今はいいや)」

 

 シンシアの神々しいまでの美貌に似合わない、童女の笑み。それだけで敵対者の未来が想像できるというものだった。

 

「さて、そろそろ来るぞ」

 

 イエローリキッドメタルドラゴンの【イエローオーラ】が、体内に吸い込まれていく。

 

 それにあわせて、こちらも牙を研ぎ澄ませていく。

 

 右手には炎の刃を出した霞の合口を。

 そして、もう左手には、炎を纏った新月を。

 

 双方とも、紅から白へ、更に青白い炎へと姿を変えていく。

 

《スキル【魔法剣・炎】習得しました》

 

「シンシアっ! ギリクっ! 今だっ!!」

「はーい」

「おうよっ!! 『ホワイトフレアバースト』! ――『ブースト』!!」

「『ブルーフレアバースト』!」

 

「『ギュアアアアァァァァ!!』」

 

 すべて直撃。

 裂帛の悲鳴が上がる。

 

 そして――

 

 両の手の刀を振るい、炎の斬撃を飛ばして追い打ちをかける。

 

《刀術技EX(エクストラ)【飛刀:炎】を習得しました》

《二刀流技【飛刀・双重(ふたがさ)ね】を習得しました》

 

「『ギィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!!』」

 

「トドメは、私ねっ!」

 

 真っ赤な炎の鞭が蛇のように伸びていき、イエローリキッドメタルドラゴンを縛る。

 

 そして、突如として炎の滝が現れる。

 こちらは、水の特性をもった流れる炎のようだ。

 

 当然ながら、炎の鞭・炎の滝、そのどちらも自然界には存在しない。

 

 本物の滝のように囂々と音を立てて落ちる炎の水は、地面にたどり着くと見えない壁に遮られるようにしてどんどん嵩を増していく。

 身体を縛られ身動きの取れないイエローリキッドメタルドラゴンは、その炎のプールの中で溺れていく。

 何とか顔だけを外に出そうとしても、そこには炎の滝が存在しているため、落下による追加ダメージがあるだけだ。

 

 

「『ギュィィィィィ……!!』」

 

 イエローリキッドメタルドラゴンの叫びもどんどん小さくなっていく。

 

 勝利を確信する俺たちだったが、それは敵のしぶとさを見誤っていたといえる。

 

 ザパァン!!

 

 と、海からイルカでも飛び出したような音とともに、虹色に輝く()()の龍が飛び出した。

 

 恐らく、こいつは先ほどまでイエローリキッドメタルドラゴンだったものだろう。

 但しその体長は、既に4分の1程にまで縮まっている。

 

 小さくなったおかげで束縛から逃れることができたのか……?

 

 だが、確実にダメージを与えることができている。

 

 このままいけば倒せるはずだが――

 

 ──────────

  魔物名

   リキッドメタルドラゴン・レインボー

 

  レベル

   289

 

  スキル

   邪龍魔法(レベル3)

   邪龍の威圧(レベル8)

   怨響(おんきょう)(レベル8)

   レインボーオーラ(レベル8)

   レインボーブレス(レベル11)

   雷魔法(レベル10)

 

  特殊・特性

   千変万化

   腐食ガス

   毒ガス

   マインドブラスト

   流動

 弱点変動

 

  弱点

   水

 

  説明

   液体金属の魔物。

   コアすらも液体金属でできている特殊な個体。

 

   一定時間毎に、ランダムで弱点が変動する。

 

 ──────────

 

 おいおい。

 せっかく弱点が見ただけでわかるようになったって言うのに、“一定時間毎に、ランダムで弱点が変動する”だって? そいつはないだろう。

 

 しかも、一定時間というのがまた面倒で、一秒おきにコロコロ弱点が変わっている。

 

「『グゥオオオオオ!!』」

 

 リキッドメタルドラゴン・レインボーは雄叫びをあげながら、オーラを纏ったままこちらへと突っ込んでくる。

 今までは、オーラを体内に取り込んでから魔術攻撃というのが、一貫した行動パターンだったが、ここに来て行動パターンも変えてきたようだ。

 

 しかも身体が小さくなったおかげか、速度が上がっている。

 

「恭弥っ! 次の弱点は何っ!?」

「1つ数えるごとにコロコロ切り替わるらしい! 伝えてる間に、弱点が切り替わってしまう」

 

 攻撃を躱しながら声を張り上げる。

 

「おいおい、本当かよ……」

「っていうか、ギリク、お前、炎属性以外の属性攻撃できるのか?」

「背中の剣があれば、雷と氷属性は使えるぜ。それに、ボウガンの矢と投げナイフは全属性分の弾が揃ってる」

 

 なんつーか、武器庫みたいな奴だな。

 

「相手の弱点を知ることは?」

「魔道具があるが、短時間じゃあ無理だ」

 

「じゃあ、俺がやる! そこで見てろ!」

 

 言い捨てながら、霞の合口をアイテムボックスにしまい込み、手早く新月を納刀する。

 

「『雷纏』」

 

 雷を纏い。静かに佇む。

 

 そして、攻撃を――

 躱す。

 躱す。

 躱す。

 

 体当たり、邪龍魔法、そして、初めて使ったブレス攻撃。

 

 それらすべてを、最小限の動きだけで躱していく。

 

「おっおい、確かに凄いが躱してるだけじゃあ……」

「ちょっとあなた、黙ってなさい」

「むぐぐぐ」

 

 背後で()()が行われた気がするが、気にすることはなく、ただひたすら攻撃を躱し続ける。

 

 そして、時は来た。

 

 リキッドメタルドラゴン・レインボーが体当たりを仕掛けてくると同時に、弱点が雷へと変わる。

 チャンスはわずか1秒間。

 その僅かな間に20回斬り込む。それらすべてが、『飛刀』を混ぜた二段斬りだ。

 

 5回目で身体とは明らかに異なる魔石らしきものを発見したので、特にそれを念入りに刻んでやった。

 

 

 そして、残心――――

 

 

 細切れになったリキッドメタルドラゴン・レインボーの魔石を『雷纏』の雷が消し炭に変えた。

 

 

《スキル【魔法剣・雷】習得しました》

《刀術技EX(エクストラ)【飛刀:雷】を習得しました》

《レベルが上がりました》

《スキル【刀術】のレベルが上がりました》

《スキル【炎魔法】のレベルが上がりました》

《スキル【体術】のレベルが上がりました》

 

 

 

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