私と、私の愛する人のサバイバル
なろうラジオ大賞参加作品第九弾。
私は愛する人と引き裂かれた。
私をここ……どこか分からない島に置き去りにした男によって。
そして、私の愛する人もまたこの島のどこかにいる。
置き去りにした男が残したメモにはそう書いてある。
嘘か本当か分からない……けど私は、
「クソが! 絶対生き延びてやる!」
この島は地獄だ。
危険な動植物がある。
メモによればそうだ。
下手に動いたら死ぬ。
だけど私は立ち止まるワケにはいかない。
私と、私の愛する人をこんな目に遭わすヤツに地獄を見せるまではッ!
どれを飲食すれば死なないか。
それは分からないから目を覚ましてから何も飲食してない。
そのせいで今にも死にそう。
でもあの男への復讐心が私を動かす。
ダァンと音がした。
どこかで危険な動物――ハンターが獲物を殺したのだ。
その瞬間、私は不安に駆られる。
まさか私の愛する人が殺されたんじゃないかと。
でもその不安を振り払う。
また会えると信じ……遠くの森に、全身ボロボロのあの人の姿が!
「エ――」
私は名前を呼ぼうとした。
でも次の瞬間。
私の愛する人の頭に血の花が咲き。
さらにその数秒後。
怒りを覚える間もなく私の頭に赤い光が当たり――。
「やっぱお前……怒りで頭いかれちまっただろ」
俺の隣で弾を装填する、俺の友人兼今大会の主催者兼参加者な男に俺は言った。
「いや、気持ちは分からないでもないぞ? でもよ、さすがにマンハントの大会に出すほどじゃねえだろ」
俺達は貴族だ。
そして恵まれてるが故にそれに相応しい言動を心がけねばならず……その反動でマンハントのような、背徳的で残虐でスリリングな大会を嗜む。
でもまさか、今大会に友人の元奥様とその不倫相手が獲物として出るとは夢にも思わなかった。
元奥様とは何回か話した事があったが、まさか友人をATM扱いして不倫相手に貢いだりしてたとは。
とんだアバズレだぜ。
なのでさっきも言ったが友人がキレるのも分かる。
友人は、ありのままの自分を見て欲しくて、貴族である事を隠した上で、元奥様と結婚し溺愛してたからな……可愛さ余って憎さ百倍とはこの事か。
でもだからって二人に前後の記憶をあやふやにする薬を飲ませた上で眠らせ軽装にしてこの島のほぼ中心部に置き去りにするとは。そしてたくさんいる獲物の内の二人は自分の獲物だと他の参加者に釘を刺すとは。もはや私刑だろこれ。
俺も結婚するとこうなるのかね。
なんて、激しい怒りのあまり今にも頭痛を覚えそうな友人を横目に見つつ、俺は思うのだった。




