エピローグ
叡弘たちが国王ネイに謁見した曇り空の昼下がり、それは起こった。
スイ城のウナーに、黄金色の戦闘機がものすごい勢いで
垂直着陸してきたのだ。
耳を切り裂かんかの轟音と、爆風がウナーを占める。
ウナーにいた下級のサムレ達は急いで建物内へ避難し、
叡弘達は急いで着陸を済ませたウナーへ向かった。
もちろん、国王のネイも、サンシカン達も一緒だ。
彼らを守る為に近衛たちも集まり始めた。
神聖なウナーへ、どす黒い熱風を放射して駐機が済んだ
戦闘機のコックピットハッチが開く。
中から笑顔で将軍が出てくると、ウラシイ王子が彼を歓迎してくれた。
「……バックナージュニア。この国を守る為に、
守備良く故郷の土地神へ加護を上手く得られたようだの。ありがとう」
笑顔を受け止めた彼は、落ち着いた声で話す。
「キャンペーンはそう長くないぞウラシイ。かの神の生命は、風前の灯だ。
……ジャップ共を攻め潰すなら、なるべく早い方がいい」
将軍は琉装を着た叡弘達の方を見ながら、苦虫を噛み潰すような表情をする。
「……所で、彼らは君らの部下だったのか?
私と同じように、流されてきたようだが」
ウラシイは困った表情を彼に向け、ため息を吐く。
「気に入らん様じゃが、彼らはワシらの「未来の愛し子」じゃ。
お主とは違う形で、この国を守ってもらうの」
「そうかな、ウラシイよ。まったく、まだ私に隠してる事はないよな……?
いいか、この島にいる間、ミズーリの主砲は今この城に向けてある。
ジェネラルウシジマに会う機会の邪魔だけはしてくれるな。
どうしても彼に会って、一発は殴らないと気がすまないんだ……」
「まるで想い人のようだの。ウシジマ将軍がそれほど憎いか」
「ああ……あいつは俺だけの獲物だ。譲る気は無いよ」
彼はどす黒い感情に支配されそうになりながら、友であるウラシイ王子を睨む。
(都合よく転がされているのは解っているさ。だがこれだけは譲れない。
あいつが生きて故郷にいるのであればなおさら……)
◇
「……おじさま方、ちょっとお邪魔しますわね」
将軍の腰から王女殿下の声がする。
刀に収まっていたフミアガリが、笑顔で姿を表した。
「神龍が、とーってもお腹ぺこぺこなんですって。
ちょっとハンティングに出ますわ、お気をつけあそばせ。
スイ城ダンジョンのモンスター肉を屠りにいってきます」
戦闘機の姿から元に戻った神龍は、一目散にスイ城のダンジョンへ向かう。
冒険者が入れない閉鎖されたダンジョンが、激しく振動する。
数分もしない内に、彼はウナーへ戻ってきた。
彼は邪魔にならない大きさにまで縮んで、
早い夕方の陽気に当たってお昼寝を始める。ご機嫌のようだ。
「本当は、フテンマのダンジョンでお腹一杯食べさせてあげたいけれど……
あちらの女神さまに睨まれたら、私の立場がなくなってしまいますの」
彼女は神龍をみて、静かに呟く。
叡弘達は目の前のあんまりな光景に、目を丸くして見ていた。
ここはやはり只の琉球に非ず。……明らかに魔法が混在した異世界なのだ。
【次のお話は……】
7章のあらすじと主要人物紹介になります。
【後書き】
ロータス :GIF画像(仮)の部分、全部消化しました。
長かった。次回から薩摩編だよ☆
サイモン「賑やかな故郷があるって、羨ましいぃぃなぁぁ……(涙目)」
ウシ「やっと交替だね」
エピローグ ここは只の琉球に非ず 了
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【俺だけの獲物】
戦死して3日後に組織としては決着したので、めっちゃ口惜しいだろうね……
後任の将軍たち2人は戦後割とすぐに亡くなっているので
病気もそうだけど身体へのストレス圧も凄そうな。
【只の琉球に非ず】
祭政一致 (政教分離の反対語)の海洋国家。
せっかくなので神々と人々の距離は近い。
「将軍、ファンタジー琉球を往く」みたいなタイトルつくかも?




