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異世界単騎行 The Battle of Okinawa 1609 ⇄1945  作者: ロータス
第6章 薩摩組は全員集合★ 1604年 霜月
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第47話

挿絵(By みてみん)

 タエを中心とした使者を組織する手筈を、小姓たちで整え、

 日が高くなってから出発の予定となった。


 その日の夜眠れなかったウシは、僅かな時間、居心地の良い自室の

 机の前で居眠りを始める。だいぶ気持ちが良さそうだ。



 ぼんやりとした夢の中で、彼は久し振りの再会を果たす。

 ……八原博道少佐と、長勇中将が、少し離れて硝煙の中に立っている。

挿絵(By みてみん)

 

 「……沖縄作戦は計画の空回りで何事も後手に回り過ぎ、

 初動さえ上手く回らず必要以上の犠牲者を、出し過ぎてしまいましたね……」

 と八原。


 「閣下。我らの犠牲は、果たして御国の為になり得たのだろうか」と長勇。


 「初動の計画段階で、既に我らは敗けていたかもしれない。

 しかし沖縄県民と共にできうる限りの努力はした。

 たとえ結果を伴わなずとも、それは変わらぬよ」

 軍服の礼装を着たウシは苦い汁を飲み込むかのように2人に応える。


 遠くの闇から、声が聞こえてきた。姿は見えない。


 「僕らはあの戦場で生き残れなかった。それは変えられない事実さ。

 状況がそれを許してくれなかった事が大きいよ。

 気負い過ぎだぞジェネラルウシジマ。フフ」

挿絵(By みてみん)

 「……バックナー?貴方(あなた)なのか?」

 闇からの答えを聞いた驚きにウシの声が掠れてしまう。


 「ああ。タイミングよく両軍膠着したから、「沖縄作戦」としては君たちの

 勝ちなのかもしれないね。……本当よくやったよな、俺たち」


 「……他の者が何を言おうと、戦局は此処で全てが決まったんだ。

 たとえ台湾で決戦が行われていたとしても、沖縄は不沈の橋頭堡として

 必ず確保すべき土地だ。祖国皇土を護る……

 最後の防衛線だったんだ」


 「ハハッ。僕らは君らから奪った土地の恩恵を、存分に使い潰してやる。

 かつて僕らから奪おうとしたようにな」


 「……やめてくれ!バックナー将軍、あんなに惨たらしい出来事は、

 私たちだけでもう、充分じゃないか!」

挿絵(By みてみん)



 「……ウシ先生、大丈夫ですか?珍しくうなされていましたよ。

 バックナー将軍とは、どなたですか?」


 ユウノシンは心配そうに、彼へお湯で絞った手縫いを渡す。

 悪夢から目覚めたばかりで顔が涙と汗でぐちゃぐちゃだ。

 2、3度じっくり拭ってやっと、彼は落ち着きを取り戻した。

 「……ここからはかなり遠い琉球の地にいる、

 かけがえのない我らの盟友だ。

 戦を無駄だと言い切ってくれる稀有な武将と言えば、

 わかりやすいかもしれないな」と自嘲気味に小さく呟く。


 (そう、彼は降伏を求めた。

 降伏など、認められる我らではないと言うのに……)

挿絵(By みてみん)



 やがて旅支度が整った彼らは、殿様たちとカゴシマ城に暇乞いを告げた。

 旅の仲間は、タエ、ジュウアン、ウシ……

 そして無理矢理付いて来たユウノシンの4人であった。


 城門でタエとジュウアンはともに鹿毛の馬に騎乗し、

 ユウノシンとウシはそれぞれシマヅ家から拝領済みの

 栗毛と黒鹿毛の馬に騎乗する。


 ウシの乗る馬は普段は毛色から「クロ」と呼んでいた頭のいい、

 日頃大人しい牡馬だったが、「今日はいつもと様子が違う」と言うように、

 彼は荒ぶっていた。


 「……クロ、今日から少し皆で遠出する。お主が1番年嵩の馬なんだが。

 落ち着いてはくれないか?」

 彼の頸を撫でて、なんとか落ち着かせようとする。


 クロはなにやら物言いたそうに南の空に顔を向ける。

 その切実な表情は、主人の心へ訴えかけるようだった。


 「摩文仁の方角……?」掠れた小さな呟きを拾ったその瞬間のクロは、

 何かに取り憑かれたように、涙を流す。


 「……摩文仁は、そなたの真名か?

 お主の本当の名前は、そう言うのか……」


 大きく頷くクロを、彼が真名で呼ぶことにしたのは、

 成り行きだった。北の空ではゆっくりと、

 暗い雪雲が垂れ込め始めていた。

挿絵(By みてみん)



  【次のお話は……】

   クロダさん家の兄弟昔話


  【「旅の場所」鹿児島県 鹿児島市 鹿児島城跡】

挿絵(By みてみん)


   第47話 居眠り運転 (騎乗)、ダメ絶対 了


   ▼二巻カラーイメージPOP▼挿絵(By みてみん)

   作品および画像の無断引用・転載を禁止します。©️ロータス2018

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「異世界単騎行」小ネタ帳
(活動報告ページへ移動)
【序章】
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北谷町 桑江宜野湾市 普天間/宜野湾
マイチ浦添沖縄戦
【2章】
バックナー中将と糸満市 名城
首里城跡那覇市 泉崎/国際通り/
久米村 謝名利山
勝連城跡

読谷村 野國 野國総管

【3章】
オリンピック作戦/伝染病について

【4章】
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鹿児島県 旧喜入町と牛島滿中将
鹿児島城跡と島津忠恒
作中救貧作物ビッグレッド冠と簪
【5章】
中城村 当間地域と現地仕様なメイドさん
国王と聞得大君
ウシデーク百十踏揚
うるま市 海中道路
【6章】
加藤清正と黒田長政薩摩焼酎
熊本城跡博多港
徳川家康と近世日本の幕開け

【7章】
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アメリカ合衆国 ケンタッキー 州戦艦ミズーリ
地産地消とンムクジアンダーギー海邦養秀
【8章】
【9章】
ジュゴン
ジュリ売り/糸満売り沖縄戦の戦没者数
【10章】
千姫

【11章】
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島田叡 沖縄県知事



「小説家になろう」投稿分では
こんな感じでイラストを描いたり、

たまぁ〜にAIイラストを作成しています。
 ※AIイラストについては作品掲載は無し、
 活動報告ページで使用感を述べる感じです。
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画像をクリックで関連ページ   (「小説家になろう」活動報告、みてみんブログページへ) に移動します。

※ナシロ村の画像だけ本編エピソードへご案内☆




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