番外編
サイモン「ヘイ、ロータス!いつになったら軍艦できる?
ミッチーに会いに行けないじゃないか!」
ロータス「……なんなら今会う?」
サイモン「(ゴクリ) いるのか?」
ロータス「将軍が頑張っている間に、向こうも頑張っていたからね。
確か休憩所でタバコ……」
ーーサイモン「ミッチー☆」と叫びながら走っていくーー
◇
撮影スタジオの一角、喫煙所。
付き合いのために紙巻きタバコを手にしたウシと
キセル派のマイチが休憩している。
煙は機械によって外に瞬時に排気されるので、室内は煙くない。
サイモン「マーイチ、ミッチーの居場所知ってるなら、
教えてくれても良いじゃないか」
マイチ「ちょっと薩摩組の作業があっての。
やっぱり手紙だけじゃ足りなかったの。
積もる話がありそうな雰囲気じゃから、失礼するの」と
空気を読んだマイチは退散しようとするが、後ろから肩を掴まれた。
振り返って見てみると、ウシが不安そうな表情でこっちを見ている。
内心めんどくさいマイチだったが、
やっと回復した彼の心がへし折れると色々厄介なので、座り直す。
サイモン、マイチ、ウシの憂鬱な?タバコ休憩タイムが始まった。
サイモン「……物語が始まって以来、会ってないから
生きているか心配だったけど元気そうだね」
ウシ「本編で会えるのはずっと後だからね。
戦後70年といくらか目にして会えるんだ、もう少し待ってくれないか?」
マイチ「節目の年はシマダ殿に取られたからの。ワシらも頑張りたいの」と
言いながら彼はスパスパとキセルを吸う。
彼は何故か島田知事の評判を知っていた。
サイモン「シマダ君は行政マンとしては傑出してるからね。
今の政治家ではできない事をして名前を残した。
我々は君や彼を生かすことができなかったけれど、
状況がそれを許してくれなかった事が大きいよ。なぁミッチー」
彼は葉巻にライターで火をつけ、紫煙を吐き出してこういった。
ウシは静かに頷いている。
生き残る選択肢は、あの時の彼にはすでに無かった。
マイチ「先の大戦が終わって、70年以上経つからの。
サイモン殿が教えてくれた条件なら、そろそろまた、
大きな戦争が起こりうる時代に入ったんじゃ。油断はできんの」
サイモン「……懐かしの経済談議か。戦争は世界中で絶えず起こっているからな」
ウシ「我々が逆らえなかった波に、後輩諸子がどう立ち向かう?
奇跡を起こせるのは小説の中だけだぞ」
マイチ「小説の中か。なんだか悲しいの。
この小説も元々ロータス殿の現実逃避から出発したからの」
サイモン「国が負けるとはそういう事なんだ。我々も必死だったんだぞ」
ウシ「国が負ける、あの戦争は、決着がついただけではないのか?」
マイチ「……軍人のそういうところ、本当に苦手なんだがの。
沖縄本島は米軍の不沈空母にされておる。
ワシの故郷は、すっかり変わってしまったの」
苦い表情でマイチはいう。
かつてのギマ村は、現代で言うところの那覇空港の敷地内にあった。
サイモンとウシはマイチにすまない顔をして頷く。
否、頷く事しかできなかった。
マイチ「……おかげでコーラと紙巻きタバコの配給が早かったの。
良かった事と言えばそのくらいかの。
観光立県と言っても有事の際に来てくれる奇特な観光客もいないしの」
苦笑いしながら彼は精一杯のブラックユーモアを紫煙と共に吐き出す。
マイチ「別に謝って欲しくて言ったのではない。
現状把握はいつでも大事だからの」と笑った。
サイモン「あなたはやっぱり面白い方だな」
ウシ「慶長の役以降、あなたはずっと努力されていた。
私も見習わなくては……」
とその時、タダツネが休憩所にひょっこり入ってくる。
「昼食の差し入れが入ったぞ。
デザートは早い者勝ちだから、無くなっても怒らないでくれよ」
と彼は一言だけ言って立ち去っていった。彼は意外にもタバコを吸わない方だった。
マイチ「……デザートの種類を見たいから、今日のおしゃべりは終わりにせんか?」
最近お気に入りのシークワーサーの入っている焼き菓子が残ってないか、
彼は急に心許ない表情をする。
サイモン「マイチの気持ちが暗くならないように、
よろしくなミッチー☆それじゃ、また会う日まで」
ウシ「うむ。ロータス殿のまとめ方次第だが、万全は尽くすよ。また今度な」
2人は硬い握手をして、それぞれ違う方向へと歩いていく。
マイチはすでに、そこにはいなかったw。
【次のお話は……】
6章へ。
主人公たちからまたまた離れ、
物語は薩摩の国に、戻ってきました。
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