第12話
ニーノシマの温泉は大変良く、浴場の係員に身体を解してもらう。
その後は美味しい夕食を、宿の客室でゆっくり食べられ
寛げて御の字だったのだ。
山口さんは特殊な手袋をはめたマッサージを受ける。
他にもニーノシマは温泉宿が8軒あり
観光の他にも湯治場としての評判が高く、
病人も珍しくない客だと係員から教わる。
ナーファやウラシイでサムレ用に卸している食材の残りが
ここまで流れて来ているので、
各宿では洗練された料理を温泉と共に楽しむことができるのが
ここニーノシマの「ウリ」なのだそうだ。
どちらかといえばシンプルな雑穀と野菜や鶏肉中心であった食事の
フテンマに比べて、豪華とも言える豚や山羊の肉料理が供される。
油も多く使われた野菜炒めからは、ジューシーな香りが食欲を誘う。
ご飯もピカピカで甘い味の銀シャリだ。
海が近いせいか海藻入りのお吸い物やお造りまで添えられていた。
店員にダンジョン産の食材はとても高価で卸されておらず、
ナーファ以外では食べられないと教えてもらう。
旅のささやかな楽しみが増える。
モグモグと咀嚼しながら、
叡弘はふと机の奥に配膳されていたどんぶりの一つに目が行く。
器には肉の入った汁物が入っており、
手を伸ばそうとすると山口さんに手で遮られる。
「叡弘、これはヤギ汁で夕飯に食べるとマジで夜眠く無くなる。
これは俺が責任持って食べるからな?」
見た目子どもの彼は驚いていたが、心配をよそに
山口さんはヤギ汁を2杯、するりと食べてしまった。
◇
食事が終わり、山口さんはヤギ汁を食べ過ぎたせいか汗が止まらない。
布団の上で既にくつろいでいた叡弘に「お湯浴びてくる。もう休んでな」
と彼は1人浴場へ向かう。
もうまぶたが重いので、叡弘も言われるままに休む事にした。
病人担当の係員が担当してくれ、遅い時間でも問題なく
浴場へ入ることができた。
さっきは露天風呂しか目に入らなかったが、見渡すといくつか種類がある。
足湯や砂に埋もれて温まる蒸し風呂、奥には打たせ湯がある。
どれも気持ち良さそうだが、やはり露天風呂に落ち着く。
汗を流してさっと調子を整えたら、彼は早く部屋に帰って眠りたかったのだ。
(ヤギ汁食べ過ぎた……眠いのに体が元気過ぎる。
お子様にはまだダメだな……)
昔夜遊びした時に飲み屋のおねいさんから無理やりに
食べさせられた事のある物より匂いが上手く処理され、
上品な味で大変食べやすいヤギ汁……
お代わりも問題なく食べれたが、「滋養食」の効果は相変わらずだった。
なんだか落ち着かない。
妖しい誘惑が頭にチラつくが、今は普通の身体じゃないので無理は禁物だ。
ゆっくりと汗をかいて行く。
(ムラムラする。危ない危ない)
やっとスッキリした山口さんは、ヨロヨロと部屋に戻る。
……今日はいい夢見れるゼ☆と
フカフカの布団に倒れたところで意識が消えてしまう。
彼の夜もとっぷりと更けて行った。
【次のお話は……】
ニーノシマから古都、ウラシイへ向かう主人公達。
そろそろ地面も石畳になってくるから、
バイクも走りやすいはず……?
【「旅の場所」沖縄県 宜野湾市 宜野湾】
第12話 裸の王様 了
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