エピローグ
叡弘は眠りから目覚めた時、ふかふかで綺麗な布団がかけられていた。
大変心地よい伸びをして、あたりを見回す。
自分の部屋に帰った記憶がない。時間は昼前のようだ。
少し離れた所におじさん2人が転がる。
マイチから魔力干渉されているのか、
よくわからないが山口さんは布団をかけられて惰眠を貪っている。
いつもは物質が透けていってしまうのだ。
ようやく目覚めた彼は欠伸を噛み殺す。
「おはようさん。昨日は一番先に眠っておったぞ。
結局、山口と夜明けまで呑んでいたの。
ワシは今日ここを引き払って次の宿へ向かわねばならん。
おぬしらは南へ向かうと言っておった。寂しいがここでお別れだの」
「昨日はどうも山口さんが楽しかったみたいで良かった。
ナーファへ行って届出を済ませられたら、
ギマ村へ寄ってみるつもりです」
叡弘は寂しそうな表情を浮かべる彼を元気付けようとする。
それから山口さんを起こして部屋を退室した後、
身支度を済ませて宿屋の受付を済ませた。
「先程発たれたお役人のお客様からお渡しするようにと、
封書を預かっていまして。伝言が多いので
書き記した紙を預かっています」と渡された。
小さな紙にはぎっしりと書かれており、目的地の場所や書類、
封書は届出先に渡す彼の推薦状が添えられていた。
手早く手続きができること、
ナーファは範囲が広いので一泊するのがおススメであること、
……などなどが事細かく書かれている。
しっかりナーファのバンショからギマ村の地図も書き込まれていた。
仕事が早い……
受付の店員にナーファまでは歩いて1日の距離で、
その間に大きな街のニーノシマがあるため宿泊はそこを勧められる。
ウラシイも大きな街なのだが、ナーファに近いためか
サムレ専用の設備が充実しており、
一般の宿泊宿は少ないと教えてくれたのだ。
「ウラシイからは街道の石畳が整備され始め、
車道と歩道が分けられていて交通の便も良く、
乗り物にも優しいですから頑張ってください 」と励まされた。
宿からの道すがら、洗濯場の係員にバイク用のヘルメットの相談へ向かう。
彼女は嬉しそうに彼らを出迎えてくれ、相談に乗ってくれる。
「乗り物用の帽子を被っていないことで捕まることはありませんが、
夏は日差しがとても強いので、お造りいたしましょう。
アイテムボックスと同じようにして作るので、私が誘導しますね」
叡弘は欲しいヘルメットを思い描く。
スポーツバイクのヘルメットより小型のもので、開閉式のバイザー付きだ。
何よりかさばらない。かぶり心地も快適で良い物に仕上がる。
「これもまた面白い形をしてます。
叡弘様は魔法使いの織工部門が合っているかも知れませんね」
笑顔で、彼女は作品の出来栄えを見て満足気に微笑む。
◇
洗濯場を後にすると、彼らは3日ぶりにバイクに乗ることにした。
動きは問題なく、人を避けてバイクを進める。
やっとの事でフテンマの街境いまで着くと、
クワエ村の通り道と同じようなのどかな道が現れる。
それまで彼の背中で小さく寝転んでいた
山口さんが目を覚まして感慨にふける。
「ここが国道58号線になる旧道か。そう考えると面白いなー。
車だと北谷〜那覇間は混雑してても3時間くらいで着くけど、
徒歩で1日か。大変だなぁ」
「バイクなら1日くらいに短縮できるかもだけど、
道は整備されていないから、ナビよろしくね」
と叡弘は2人に頼むが、
「街に着くまで基本的に一本道ですよ」
バイクのすかさずツッコミを入れる声は明るい。
跨った2人の「じゃあ次の街へ行きますか」
掛け声とともに、彼らを載せたバイクは南へ向かった。
【次のお話は……】
作品舞台の紹介コラムになります。
【「旅の場所」沖縄県 宜野湾市 普天間】
エピローグ それぞれの旅立ち 了
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