表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢に転生したはずが、主人公よりも溺愛されてるみたいです[web版]  作者: 菜々@12/15『不可ヒロ』1巻発売
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

99/128

99 マーデルの正体


「大丈夫かリディア!?」



カイザがすぐに私を引き寄せて、自分の背後に隠した。

目線はマーデルや他の男達から離さないままだ。



「……大丈夫だよ」



カイザが来てくれた安心感で、力が抜けそうになる。

よろけてカイザの背中に少し寄りかかってしまった。



だめ!!まだしっかりしてないと!!

今ここにはマーデルと男2人しかいないけど、この屋敷の中にはまだまだ窃盗団の奴らがいるんだから!!



気づけばマーデルがかなり離れた場所に移動していた。

カイザが若い男を蹴り飛ばし気絶させたのを、間近で見たのだから仕方ないか。



マーデルに気を取られていると、突然カイザが叫んだ。



「イクス!!リディアを頼むぞ!!」



え?



「はい!!」



声とともに、窓からイクスが入ってきた。

イクスを確認してすぐに、カイザは入り口近くに立っていた男2人の元へと走って行く。



「うわぁぁっ」


「逃がすかっ!!」



カイザが猛スピードで近づいて来るのを見て、男達は階段の方へと逃げ出した。

まるで獣のようなカイザを見たら、誰だって逃げ出すだろう。



「リディア様!!」



獣カイザを目で追っているうちに、いつの間にかすぐ近くにイクスが来ていた。



「イ……」



名前を呼ぼうとしたその時、ふいに腰を引き寄せられた。

一瞬でイクスとの距離が0になる。

気づけばイクスに強く抱きしめられていた。



!?



「……無事で良かった……!!」



そう呟いたイクスの声が、耳元で微かに聞こえた。

私の肩に顔をうずめている。



わ、わ、わ。やばい!!!



身体が一気に熱くなったのがわかった。


助けにきてくれた安心感と、心配させていた罪悪感と、急に抱きしめられた戸惑い、恥ずかしさ、嬉しさ、色々な感情がぶわっと溢れてきている。


きっと今顔は真っ赤になっているだろう。



イクスはすぐに顔を上げ、少し離れた場所にいるマーデルに向かって剣を抜いた。


左腕は、私の腰を引き寄せた状態のままだ。

抱きしめられた状態からは解放されたが、まだ密着している状態には変わりない。



「……お前、マーデルだな!?

巫女誘拐の首謀者として、連行するぞ」



マーデルは離れた場所に移動していたが、特に焦っている様子もない。

口元は微かに笑っているように見えるほどだ。



「何をおっしゃっているのですか?

誘拐の首謀者?私が?……まさか。

巫女様を誘拐したのは、そこに転がっている男とその仲間達でしょう。

私は巫女様には指1本たりとも触っておりませんよ」


「なんだと!?」


「貴方!私に言ったじゃない!

自分が首謀者だって。たしかに聞いたわ!!」


「はて?巫女様は何か勘違いをされてらっしゃるみたいですね。

私がそんな事を言ったという証拠はあるのですか?」


「!!」



マーデルの口元がニヤリと横に広がった。



この男!!!

ここにきてシラを切ろうっていうの!?



「私はむしろ巫女様を助けに来たのです。

私の情報網で、巫女様の誘拐の事を直前に知ることができたので。

ですが阻止には間に合わず、申し訳ありませんでした」



マーデルはわざとらしくお辞儀をしてみせる。

イクスの腕が、怒りでプルプル震えているのが伝わってきた。



その時、カイザの「ふーーっ」というため息とともに、部屋の入り口からドサドサッという音がした。


カイザに追いかけられた男2人が、気絶した状態で放り投げられた音だったらしい。

階段で捕まえて、この部屋まで運んできたのだろう。

……男2人を。


本当にどれだけ力が強いのだろうか。

ボロボロの男達を見るだけで、階段でどんな目に遭ったのかがなんとなく想像できる。


カイザは直前の会話を聞いていたらしく、腕を組みながらマーデルをジロッと睨みつけた。



「そんな言い訳が通じると思ってるのか?

お前が首謀者だと、リディア本人が聞いたと言っているぞ」


「ええ。でもそれは何も証拠のない事でございます」


「さっきから証拠って言ってるけど、巫女である私が聞いたと言っているのだからそれが立派な証拠でしょう!?」


「ふっ」



カイザとマーデルの会話に割り込むと、マーデルが鼻で笑った。

イクスが殴りかかりそうな動きをしたので、慌てて止める。



「な、何がおかしいのよ!!」


「裁判において、公爵家以上の貴族と争いをする場合、16歳以下の子どもの意見はさほど重要視されないのですよ」



マーデルの言葉に、私とイクス、そしてカイザも目を丸くした。



今……なんて言った?コイツ。

『公爵家以上の貴族』ですって?



マーデルはため息をつきながら、顔半分につけていた仮面を外した。

キレ長の目が印象的な顔で、微笑みながら改めて挨拶をしてきた。



「私はマーデラス・リクトール。

リクトール公爵家はもちろんご存知だろう?」



リクトール公爵家……ですって!?



…………知らないわ!!!

知ってる訳ないじゃない!私が!

小説に出てきてない設定なんて、知らないわよ!



けれど、カイザやイクスの反応を見る限り、かなり権力のある公爵家なのだということは伝わってきた。

2人から不穏な空気が流れてくる。


マーデル……いえ。リクトール公爵に冷たい視線を浴びせたまま、カイザが口を開いた。



「なるほどな。

王宮の裏切り者、リクトール公爵家の者か」


「裏切り者だなんて人聞きの悪い。

王宮に支持できる者がいないので、支持していないだけですよ。

王宮の協力には毎度お断りをしていますが、別に邪魔をしたり被害を出させたりはしていません。

やるべき事はしっかりやっているからこそ、リクトール公爵家はずっと存続しているのです」


「邪魔していない?

はっ!!今回の誘拐……もし巫女の誘拐が成功していたら、王宮にとっては十分損害がでるぞ?」


「ですから、私は巫女の誘拐には一切関わっておりません」



カイザとリクトール公爵のやり取りを、私はただ聞いているだけだった。

相手が公爵家となれば、力任せに捕まえる事はできない。

万が一それが誤解だったとなれば大事になるからだ。


それがわかっているので、カイザもイクスもリクトール公爵を睨むだけでまだ動けずにいる。



「先程は申し上げませんでしたが、此度の誘拐を企てたのはサラ・ヴィクトル侯爵令嬢です。

彼女と窃盗団を捕まえて、処罰いたしましょう」


「!!」



この男……!!

サラを利用する気ね!!

全ての罪をサラに着せる気なんだわ!!



何か言い返してやろうと思った時、部屋に変な音が響いた。



カサカサカサ……



「!?なんの音だ!?」



カイザが周りをキョロキョロ見回す。

イクスは私を抱き寄せていた左腕により力を込めて、私を守るように周りを警戒している。



ガサッガサッ……



な、なんの音なの!?



全員の視線が、音のするクローゼットに向けられた。

開けっ放しのクローゼットの中に、ガサガサ動いている大きな箱があった。



………………あ。

そういえば、いたんだった。本人。



私以外の3人は、動いている箱を見て驚愕していた。



「あの箱、動いているぞ!?」


「蓋が開きそうです!リディア様!!

俺の後ろに!!」



カイザとイクスのプチパニックに、1人気まずい私。

だって、()()出てくるのかわかっているから。



バッと蓋が開き、女性の手が見えた。

そして、髪がボサボサになった女が、ゆら〜……とゆっくり立ち上がって姿を現した。


カイザが「ひぃっ!!」と小さな悲鳴をあげた。

幽霊系は苦手なのか、めずらしく真っ青な顔をしている。



「サラ!!」



私がそう言うと、サラは髪をかき上げてこっちを見た。

箱の中が暑かったのか、苦しかったのか、この登場が恥ずかしいのか……真っ赤な顔をしている。



なんだかすごく文句言いたそうな顔で睨んでくるわ!!



きっと今隣にイクスがいなければ、キャンキャン言われていた事だろう。

サラは結局私には何も言わず、リクトール公爵に向き直った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] うっかりでもなんでもいいから殺してしまえばいいのではないでしょうか。要人の誘拐犯ですし、仮面をつけさせれば知らなかったことに出来ます。 時代背景や罪状の割りに味方が妙に人道的な展開は気…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ