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悪役令嬢に転生したはずが、主人公よりも溺愛されてるみたいです[web版]  作者: 菜々@12/15『不可ヒロ』1巻発売
本編

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97 ブチギレ巫女と花畑令嬢


牢を抜け出し、階段とは反対側にあった細い通路をサラと走る。

少しすると、螺旋状になった階段が見えた。

ここは地下なので、地上へ出るためには1階へ上がらなければいけない。


出口は近い!!と喜んだのも束の間、階段を上がっている途中で違和感に襲われた。



「な、なんだか長くない……?」


「……あんたも思った?実は私もそう思ってたんだけど」



後からついてくるサラが、不安そうに言った。



思った以上に階段が長い気がする。

これって、2階くらいまで行ってるんじゃ……。



「あっ!!扉だわ!!」



階段の先は、1つの扉しかなかった。

他の通路も何もない。ただ木の扉があるだけだ。



「……鍵、開いてる?」



サラが心配そうに覗き込んでくる。

もしここで鍵がかかっていたら、来た道を戻らなくてはいけないのだから心配もするだろう。



「Jが来たはずだから、きっと開いてるはずよ」



ドアノブに手を伸ばし、ひねってみる。


カチャ…



「開いたわ!!」



元々開いていたのか、Jが開けたのかはわからないが助かった!!



中を覗くと、部屋が1つあるだけだった。

学校の教室くらいの広さだろうか。


質素なテーブルが1つに、椅子が1つ。

窓が2つあり、わりと大きなクローゼットもある。

残りの壁は全て本棚で埋め尽くされていた。



「なに……?この部屋……」



本に囲まれていて、まるで図書館のようだ。

全く予想していなかった部屋に気を取られていると、サラが声を上げた。



「あぁっ!!やっぱり!!

ここ2階だわ!!外に出られないじゃない!!」



来た時すでに開いていた窓から、外を覗いたらしい。


サラの声にハッとして、私も窓へと駆け寄る。

窓の近くには大きな木があるだけで、外階段もはしごもロープもない。



この窓が開いていたという事は、Jはここから出たのよね!?

この木をつかって降りたのかしら……。


さすがに私やサラには無理だわ!!



「どうしよう!?ここから出られない!!」


「今さら戻れないわよ!?

他に出口はないの!?」



サラに言われて部屋中を見回すが、入ってきたドアと窓しかない。

あと、あるとすれば……。


2人でクローゼットの前に立つ。



「小説や漫画なら、こういう場所に隠し扉があったりするのよ」



得意気にサラが言う。



「あとは本棚が動くとか!?隠し部屋があったりするわよね!」


「それはないわよ。

本棚に囲まれてて、動かしようがないもの」


「そっか……。なら、怪しいのはココだけね」



クローゼットをゆっくり開けてみる。

中は、奥行きもほぼないただの物置きだった。


大きい箱もいくつかあるが、中身は空だったり本が入っていたりとバラバラだ。


クローゼットの壁に隠された扉などは一切ない。



「はぁーー……。ダメね。ただの物置きよこれ」



期待外れだったので、気力がなくなってしまった。

令嬢らしからぬ……とは思うけど、床にペタンと尻もちをついてしまう。



「ロープとかそういう物もないし、ここからの脱出は無理だわ!!

おとなしく牢に戻って、助けを待った方がいいんじゃないの!?」



サラがキャンキャン吠えてくる。



たしかにJは待っててと言っていたけど。


でも、牢に捕まっている以上私達は人質だ。

私達を傷つける!と言われたら、カイザ達が動けなくなる可能性だってある。


私達は絶対に、マーデルや窃盗団から離れておかなきゃいけないのよ!!



「……カイザや王宮騎士団がここに到着したら、まずはこの屋敷の周りを取り囲むと思うの。

どこからも逃げられないように。

そうじゃない?」


「まぁ……そうでしょうね」


「そうよね!?なら、この窓から外を見てれば誰かに気づいてもらえると思わない!?」



私の言葉に、サラの顔がぱぁっと明るくなった。

お祈りのポーズをして、キラキラしながら語りだす。



「そうね!!騎士団の方に見つけてもらえたら、ここから出られるわ!!

『俺を信じてそこから飛び降りるんだ!』の展開ね!

『怖いわっ……』と言いながらも、騎士様の逞しい腕をめがけて窓から飛び降りるのよ……」


「…………」



あの、今の状況わかってんのか?

どんな時でも主人公展開を妄想するその頭の回転だけは、本当にすごいと思うわ。




その時、下の方からガヤガヤした声が聞こえてきた。

階段の奥の方から聞こえてくるから、地下にいる人達の声だろうか。


どうやら巫女と侍女の脱走に気づき、大騒ぎしているようだ。



「2人がいないぞ!!」

「まずい!!早く探せ!!」



バタバタと走り回る音も聞こえてくる。

何人かは、ここへ繋がる細い通路を走っているようで、どんどん音が大きくなってきた。



「や、やばい!!ここに奴らが来るわ!!」



一瞬の足止めにしかならないとしても、とりあえず扉の鍵を閉めた。

振り向いてサラを見ると、かなり慌てている。



「どうするの!?ダメ元で飛び降りてみる!?」


「バカ!!死ぬか骨折するかで、どちらにしろ逃げられないわよ!!

それよりこっちに来て!!」



私はクローゼットの方にサラを呼び、空の大きな箱を取り出した。



「この箱の中に入って!!隠れるのよ!!」


「はぁ!?でもそれ、1人しか入れないじゃない!」


「サラだけ入るのよ!

私は巫女だから、酷い目には遭わされないわ!」


「でも……そこに入ったら、騎士様に抱きとめてもらう作戦が……」



この期に及んでもバカな事を言っているサラに、思わず本気でキレてしまった。



「こんな時に何言ってんのよーー!!!

いい加減、その頭に咲き乱れた花畑を枯らせ!!」



ブチギレした私を見て、サラは慌てて箱の中に入った。

それを力いっぱいクローゼットに押し込んで、扉を閉めた。



はぁ……はぁ……。

箱は密封じゃなかったし、大丈夫よね?


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― 新着の感想 ―
[一言] 2階から飛び降りて死ぬか骨折って・・・ 建築様式の違いかな
[一言] 毎日更新ありがとうございます!! 毎朝楽しみにしています! イクス推しですが皇子もいいですよね♪ リディア的にはイクスの方が男性として見てる気がしますが、皇子絶対離さないでしょうねw そ…
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