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悪役令嬢に転生したはずが、主人公よりも溺愛されてるみたいです[web版]  作者: 菜々@12/15『不可ヒロ』1巻発売
本編

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92 ぶりっこしてる場合かよ、サラさん


「Jなの……?」


「そうさ!……ああ、素顔を見せるのは初めてだったね!

でもこの赤い瞳でわかっただろう?」



呆然としている私に対して、笑顔を絶やさないJ。

何も変わらない。

私の知っているJそのものだ。



「Jが、私を誘拐させたの?」


「まさか!僕はただの雇われの身さ!

リディを知っているから、本物かどうか確認に来ただけだよ」



Jは悪びれた様子もなく、ケロッと答えている。



頭がついていかない……。

Jは誘拐犯に雇われた?……という事は、今は私の敵っていうこと?



「いやぁ〜ビックリしたよ!

巫女がこの国に現れたって噂が広まったあとに、それがコーディアス侯爵家の長女だって言うんだから!


なんで教えてくれなかったのさ!」


「何でって……」



Jは、小さい子を優しく咎めるような言い方をしてきた。

いつもの私なら、「わざわざ言う必要ないでしょ」なんて答えていただろうけど、何故か今日は言葉が出てこない。



私が巫女だと教えていたら、その場で捕まえていたの?



……ダメだ!!

勝手に悪い方向に考えちゃう!!


私、今すごくショック受けてるみたい……。


Jの事、私を助けてくれる仲間だと思ってた!!

でもJは、依頼されれば簡単に私の敵にもなってしまうんだわ。



私が頭の中でグルグル葛藤していると、サラが口を挟んできた。



「J?Jってもしかして、兎のジャックのJ?」


「そうだよ!はじめまして。

君がリディのお兄さんの婚約者、サラかい?」



Jはにこやかに答えた。



あっそっか!!

Jは小説に出てきたから、サラも知っているんだわ。

でも、たしか小説の中ではサラとJは会う事はなかったはず……。


というか、Jはサラを殺せば?とリディアをけしかけた張本人なのよね。

サラにとっては、自分を殺させようとした相手って事になるんだけど……。


サラ……Jに何を言う気なの!?



サラは私の背後に周り、私の背中をバシン!と叩いた。

一度強く叩いた後は、バシバシ!と小刻みに叩いてくる。



痛っ!?な、なに!?



そして私に聞こえるくらいの声で、興奮しながら囁いてきた。



「ちょっと!!Jもかなりのイケメンじゃない!!

ウサギの仮面つけてる変な男ってイメージしかなかったけど、こんなに爽やかな人だったのね!!」


「…………」



この女。さっき私によくこんな時にニヤついてられるわね!とか言っていたくせに、自分はそれかよ!!


ほんっっとイケメン大好きなんだから!!


敵かもしれないって葛藤してた、私のシリアスモードをどうしてくれる!!



サラはいつものぶりっこモードに突入したらしく、Jの近くの鉄格子に掴まりながら一生懸命話しかけていた。



「そうなんです〜!サラって名前まで知っててくれてるなんて、嬉しいな……」


「今日は侍女としてリディと神殿に入ったと聞いたよ。

あのリディの髪の毛はキミがやったのかい?」


「はいっ!私、髪の毛いじるのとか得意なんです〜」


「へぇ〜!すごいね!」



ここが地下牢で、会話しているのが捕まえた側と捕まった側だとは思えないほどの明るさだ。

キャッキャッと楽しんでいる空気に、私はどんどん遠い目になっていく。


同じく呆れ果てた様子の若い男が、「先に戻ってるぞ」と言って地下から出て行った。



サラの本性を知ってる若い男は、この空気が耐えられなかったらしい。

私だってサラと同じ牢の中でなければ、すぐに離れたいくらいだ。



若い男が完全にいなくなった後、Jの雰囲気が少しだけ変わった。



「それで?大切な婚約者の妹を、他国に売り飛ばそうとしたのは何故なんだい?」



空気が一瞬ピリッとした。

Jは笑顔のままだが、あきらかに目が笑っていない。



「え……?」



Jの変化に、さすがのサラも気づいたらしい。

上目遣いでニヤついていた顔から、真顔に変わった。


Jの赤い瞳が真っ直ぐにサラを見つめている。

質問をしているくせに、すでに答えはわかっているかのような瞳だ。



「キミがこの計画を最初にたてたんだろ?

そんな事がリディのお兄さん達に知られたら、キミは結婚どころではなくなるんじゃない?」



Jはあくまでも笑顔のままだ。

だが、先程までは爽やかだった笑顔が、今は悪魔のようなダークな笑顔に見える。


サラの顔は真っ青だ。



「……エリック様に言う気なの!?」


「それはまだ決めてないよ。僕の気分次第さ」



……これは、Jはサラを責めているの?

もしJが誘拐の首謀者に味方しているなら、こんな風にサラを脅すようなことを言うかしら?


Jの考えていることがわからない……。



「でも、万が一キミ達が助かったら、僕が何も言わなくてもキミはおしまいだよね!

リディが全部喋るからね!」


「!!」


「!?」



ちょっ!?な、なに言ってんの!?

そんな事を言ったりしたら……



「なによそれ。

口封じのために、この女を殺せとでも言ってるの?」



サラさぁーーん!?

なに恐ろしいこと言ってるんですかぁ!?!?


でも、その発想になっちゃいますよねぇ!?

Jってば何言ってんのよーーーー!!



ニヤニヤしているJと、それを睨みつけてるサラと、2人を交互に見ては怯えている私。



「まさか。そんな事をしたら、もっと大変だよ?

だって、最高級の売り物である巫女を殺したとなったら……キミも()()()だろ。

キミも彼らに殺されちゃうよ?」


「……っ!!」


「だからね?キミは今の自分の立場をよーーく考えた方がいいのさ。

売られずに助かりたいのであれば、リディの許しを請わないといけない……って事に気づくべきなんだ。

そうでないと、万が一助かってもキミに未来はない」


「…………」



サラは爆弾でも見るかのような目で私を見てきた。

もう何も言い返せなくなっている。


そんなサラに、Jはニコッと微笑みキッパリと言った。



「という事で、キミは慌てず騒がず。

リディに攻撃したり裏切ったりする事なく。


おとなしーーくしている事をオススメするよ!」



そう言われたサラは、ギュッと拳を握りしめてJから離れ、牢の1番奥までスタスタ歩いて行った。



な、なんなの……?



状況についていけていない私を、Jが呼んだ。

さっきサラに向けていた悪魔のような笑顔ではなく、私の知っているJの笑顔だ。



「リディ!こっちへ」


「…………」



正直まだ半信半疑だが、Jの近くに行った。



「……何?」


「騎士くんは、どこにいるんだい?」


「!?な……何故?」


「リディの状況を伝えるために決まってるだろ?

騎士くんが神殿に行っていない事はわかっているんだ。

……この屋敷の近くにいるんじゃないのかい?」


「!!」



Jが、イクスに今のこの状況を伝えてくれる!?


そうすれば、私が助かる可能性が高くなるわ。

もうすでにイクスがカイザの元へ向かっていればいいけど、もしまだ屋敷の周りにいるなら……。


でも、Jのその言葉を素直に信じていいの?


もし罠で、イクスが捕まったら!?



どうしよう!!

Jを信じていいのか、わからない!!


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