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悪役令嬢に転生したはずが、主人公よりも溺愛されてるみたいです[web版]  作者: 菜々@12/15『不可ヒロ』1巻発売
本編

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88 サラの計画


どれくらい馬車に揺られていたのだろうか。


証拠隠滅のためなのか、途中で馬車を乗り換えていた。

その時一瞬だけ外に出たが、民家も建物も何もないただの山道だった。



道理でガタガタが激しかったわけだわ。

身体も痛いし、本当に最悪!



私を誘拐した男達は、最初に乗っていた馬車を崖から落とし、私をまた違う荷馬車へと運んだ。

その際に逃亡できないか企んだが、力強い男の腕からすり抜けることはできなかった。


こんな場所で逃げても、身体を縛られていてはすぐに捕まってしまうだろうが。



新しい荷馬車でさらに先へと進み、30分くらいが経過した頃だろうか。

どこかに到着したらしい。



まさか、ナイタ港湾じゃないわよね!?

このままいきなり船に積まれたら、もう逃げられないわ!!



そんな心配をしていると、ガチャ!と荷台のドアが開いた。

部屋で私を捕まえた男2人と、外で待機していて私を抱えて走った男、その誘拐犯3人が立っている。


男達の背後には家のような建物が見えた。

空がまだ少し明るいので、今は16時くらいだろうか。


私を見張るために一緒に荷台に乗っていたサラが、立ち上がって荷台から降りると、キョロキョロ周りを見回した。



「はーー……。身体が痛いわ。

……ここが例の建物ね?」




例の建物?



とりあえずナイタ港湾ではなさそうなので安心した。

いきなり船に乗せたりせず、一旦この建物に隠れるつもりなのだろうか。



サラが降りた後に、私を抱えて走ったガタイのいい男が、荷台に乗り込んできた。

何か黒い布を持っている……と思ったら、その布をガバッと頭から被せられた。



「んんっ!?」



途端に視界が真っ暗になり、それと同時に身体が宙に浮いた。

また持ち上げられているらしい。

私の腹部に当たっている部分は、男の肩だろう。

腕を縛られ両足を掴まれては、身動きすらとれない。


どこに運ばれているのか全くわからないが、時折ドアを開ける音や数人の男の声が聞こえてきた。

感覚で、階段を下りているのがわかる。



……一体どこに連れて行かれるのかしら。

階段を上がっていないのに下りているってことは、もしかして地下!?


地下に閉じ込められたりしたら、逃げられる可能性がかなり低くなってしまうわ!!

どうしよう!!



男の足がピタリと止まったと思ったら、地面に優しく降ろされた。

黒い布を取られ、視界が明るくなる。

口を塞いでいたモノも腕を拘束していた縄も外された。


だが目の前の男の威圧感に、走って逃げようとは思えなかった。


周りをキョロキョロする。



……ここは、もしかして牢屋ってやつ?



漫画などで見かけた、クロスされている鉄格子が目の前にある。

壁は全て石でできていて、ひんやりとした空気を感じる。


私を運んだ男は、扉から鉄格子の向こう側に出るとガチャン!と音を響かせて鍵をかけた。


サラがニコニコしながら私を見ていた。



「貴女を異国に送るには、色々と手続きが必要なのよ。

それまではこの地下牢に閉じ込めておくわ。

食事もしっかり出すから安心してね?うふふっ」


「ここから出してっ!!お願い!!

今ならまだエリックお兄様にも貴女のことは黙ってるから!!」



私は鉄格子を掴み、サラに懇願した。

やっと喋られるようになったのだ。


サラだって殺人はできないと言っていたんだから、まだ完全に悪女になったわけではないはず。

直接懇願すればサラの良心だって痛むかもしれない。



そんな期待をしてみたが、サラは鼻で笑っただけだった。



「ふふっ。それは無理よ。

私には貴女は邪魔で邪魔で邪魔で、いらない存在だもの。

ぜひこの国からいなくなって欲しいわ」


「でも、私がこのまま行方不明になればずっと捜索されるわ!!

いつか見つかるかもしれないわよ!?

そうなったら、サラ様はおしまいじゃない!!

エリックお兄様にもきっと許してもらえないわ!!」



……そう、だよね?エリック……。

そこまで自分が大切にされているのか、正直自信はないけど今はこう言うしかない!


もし私が見つかれば、巫女の誘拐犯としてサラは重罪になるはず。



そんなリスクがあるにも関わらず、サラは相変わらず余裕そうに笑っている。



「大丈夫よ。貴女は死んだことにするもの」


「え?」


「途中で馬車を崖から落としたでしょ?

あの馬車に貴女が乗っていたという事にするのよ」


「なんですって……?」


「シナリオはこうよ。

神殿で、私と貴女は誘拐された。

ところが途中で私だけが森に捨てられた。

巫女を殺害する事が目的だった男達は、巫女を乗せた馬車を崖から転落させて逃亡した……」


「…………」


「私は一部始終の目撃者として、しばらくしてからエリック様の前に現れる予定よ」



開いた口が塞がらない。

なんて都合のいい話なのだろうか。


サラは上手くいく自信しかないという顔で、得意気に話している。



「そんな……上手くいくわけ……」


「上手くいかせるわよ!!

完璧な演技をしてみせるわ!!」



いや。あなたの演技、めっちゃ下手くそだからね!?



……でも、待てよ?

サラの演技は下手だし、こんな都合のいい話をエリックがすんなり信じるかしら?


絶対怪しむわよね?

もし少しでもおかしいと思ったら、きっと尋問するはず……。

エリックに尋問されたら、きっとサラは嘘をつき続ける事はできないんじゃない!?



つまり、私がまだ生きてることや他国に売り飛ばされた事が知られて、助けてもらえる可能性がある!!

これだわ!!

もう私にはこのチャンスしかない!!



「じゃあ、私はもう行くわね!!

こんな地下になんて、ずっと居られないわ!」



サラは私に手を振り背中を向けた。



「待って!!行かないで!!」



一応焦ってるっぽく声をかけてみたが、予想通り無視された。



よしよし。

頼むわよ!!サラ!!

私の未来は、貴女の演技力のなさにかかってるわ!!



サラは私を振り返る事もなく、誘拐犯の男に声をかけていた。



「それで?私の部屋はどこなの?案内して!」


「ああ。じゃあ、こっちへ」



声をかけられた男は、何故か私のいる牢の鍵を開けた。


カチャン。



「……ちょっと!!何開けてるのよ!!

逃げられないように、ちゃんと閉めて……って、え!?」



男は、文句を言っているサラの腕を掴み、やや強引に開けた牢の中へと押し込んだ。

サラがよろけて地面にペタリと座り込む。



…………え?



男はすぐに牢の扉を閉めて施錠した。


私のすぐ近くに、サラが座り込んでいる。

私と一緒に牢に閉じ込められている。



…………え?

なに?これ。どうなってるの?



サラも何が起きたのかわかっていない様子で、ポカンと口を開けたまま男を見つめていた。

その後、ゆっくりと首を動かし隣にいる私を見た。


きっと、今サラと私は同じ顔をしていると思う。


目を見開いて、お互いが横にいることに驚いている間抜けな顔……。

そんな2人はお互いを見つめたまま、同時に口を開いた。



「…………は?」


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― 新着の感想 ―
[一言] まあ、 大神官からすれば 用済みになれば サラは消すよね
[一言] 今回の件が終わったらサラとサヨナラできると思ったのに、 これじゃサラも被害者みたいになって、罰せられない可能性ができてたんだけど つまり悪役として、まだ物語から退場させられないってことか
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