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悪役令嬢に転生したはずが、主人公よりも溺愛されてるみたいです[web版]  作者: 菜々@12/15『不可ヒロ』1巻発売
本編

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75 ルイード皇子と夜の密会……ではないですよ!


どうしましょう。

1番選んではいけない部屋を選んでしまったぞ。


突然夜に訪問してきた寝巻き姿の(一応)婚約者に、ルイード皇子も驚きを隠せていませんね。


顔がどんどん赤くなって焦っているようですが、これどうしたらいいですかね。


とりあえず誤解を解く?

間違えましたー!って言って逃げる?



「リ、リディア……。こんな時間にどうし……」



ああーー。

早く誤解解かなきゃいけないのに、焦ってる皇子が可愛すぎてしばらく見ていたいわ。

宝石のようなネイビーの瞳が、ゆらゆらと視線を泳がせていてとんでもなく可愛い!!!


……でも、ダメよね。早く安心させてあげよう。



「あの。突然ごめんなさい。

実は、部屋に入れなくなってしまいまして。

それで、エリ……」


「え!?部屋に入れないって、何かあったの!?」



赤かった顔が急に青くなったと思ったら、ルイード皇子は周りを見回して私の腕をグイッと引っ張った。



え!?



そのままルイード皇子の部屋に入ると、皇子は急いで鍵をかけた。

なにやら先程とは違う意味で焦っているようだ。



「おかしいな。

この階にはこの時間、誰も入れないようにしてあるはずなのに。


部屋に誰かが訪ねてきたとか!?

何もされなかった!?」



ルイード皇子は私の両肩を掴んで、必死に聞いてきた。

こんなに近くでルイード皇子の顔を見たのは初めてかもしれない……というほど、顔が近い。



「あ、あの、違います。

私が絵を見たくて廊下に出ちゃったんです。

そうしたら部屋のドアが開かなくなってて……」


「……何かあって部屋から出てきたんじゃないんだね?」


「は、はい」


「はぁーーーー。良かった……あっ!!

ご、ごめん!!」



顔の近さに驚いたルイード皇子は、勢いよく後ろに反り返っていた。

また真っ赤な顔に戻っている。



忙しないわね、ルイード様……。



思わず噴き出しそうになったが、なんとか堪えた。

部屋で2人きりだというのにこんなに落ち着いていられるのは、ルイード皇子の方が焦りまくっているからだろうか。


片方が慌てていると、もう片方は冷静になれるものなのよね。

……とはいえ、そろそろ誤解を解いた方が良いだろう。



「すみません。エリックお兄様の部屋と間違えてしまったのです。

どの部屋だったか、ちゃんと覚えていなかったので」


「あっ!!そ、そうだよね。

俺の方こそごめん。部屋に入れてしまって……」


「ふふ。大丈夫ですよ」


「…………」



ルイード皇子が気にしないように、笑顔を返したつもりなんだけど……何故だか皇子が固まってしまったわ。



皇子は頬を染めたまま、私を見つめている。

キラッと輝いたネイビーの瞳があまりにもキレイで、つい私もその瞳を見つめ返してしまった。


皇子の右手が、ゆっくりと私の左頬へと近づいてきた。



「……?ルイード様?」


「リディア……」



もう少しで皇子の手が頬に触れようとした瞬間、部屋のドアがノックされた。



コンコンコン


「ルイード様。遅くに申し訳ございません。

エリックですが、今よろしいでしょうか」



エリック!?



バッ!っと勢いよく皇子の手が離れた。

2人ともドアに視線を向けた後、お互いの顔を見た。


夜遅い時間に、若い男女が部屋で2人きり。

お互い寝巻き姿。

一応今は婚約者。



……この状況、もしかしてヤバイ?



見るからに皇子が焦っているのがわかった。

ドアを開けるべきかどうか、私とドアを交互に見ながら困惑している。



うーーーーん。

なんだか、親のいない隙に彼氏を家に呼んだら親が帰ってきた!!みたいな状態なんだけど……。


大丈夫よね?誤解だし、説明すればいいだけよね?



「ルイード様。私が兄に説明しますから、大丈夫ですよ」



笑顔でそう言うと、皇子はすごく不安そうな顔のまま鍵を開けに行った。



「……入ってくれ」



カチャ



「失礼致します」



部屋に入ってきたエリックは、部屋の真ん中に立っている私を見て目を大きく見開いた。

よほど驚いたのか、体もピタッと一時停止したかのように固まっている。



「エリックお兄様……」



声をかけても、エリックは無反応だ。

私を見つめたまま動かない。



……?どうしたの?

なんで何も反応しないのかしら?



「あの、エリックお兄様?」



エリックに小走りに近寄って行くと、突然右手でガシッと頭を鷲掴みにされた。



!?!?



「エ、エリックお兄様……?」


「お前は……何で……こんな時間に……ここに……いるんだ……?」



ギギギギギ……


ギューーーーっと強く頭を掴まれる。



ぎゃあぁぁぁ!!痛い痛い!!

やばいっ!!めっちゃ怒ってる!!痛い!!



「ちょっ……違っ……いたぁーーーーい!!」


「あのっ!!ご、誤解ですっ!!」



私の悲痛な叫びを聞いて、慌ててルイード皇子がフォローしてくれる。

エリックは私の頭を掴んだまま、ルイード皇子の方に振り返った。


エリックがどんな顔をしているのかは見えないが、皇子が怯えている様子からしてきっと恐ろしいオーラを放っているのだろう。


皇子の顔を見て少し冷静になったのか、エリックは私の頭から手を離してくれた。

だがそれと同時に腕を引っ張られて、エリックの後ろへと隠されたような状態になった。


私とルイード皇子の間にエリックが割り込んできたような形だ。

エリックは皇子にむけて言葉を放つ。



「……誤解ですか?」



エリックの声がいつもより低く、ゾーーッと鳥肌が立った。

ルイード皇子はその迫力に負けじと口を開こうとしたが、私がエリックの服を引っ張り、エリックの顔をこちらに向けさせた。



なんとなく、ここは私が説明した方がいい気がするわ!!



「エリックお兄様の部屋と間違えてしまったんです!!」


「……どういう事だ?」


「私が廊下に飾ってあった絵を見たくて、部屋から出ちゃったんです!

そうしたら鍵が掛かって入れなくなってしまって……。


エリックお兄様を訪ねようとして、間違えてルイード様の部屋を訪ねてしまったのです!!」



嘘偽りのない事実なので、堂々と澄んだ瞳で訴える。

エリックは少し疑うような目で私を見ていたが、どうやら嘘ではないと信じてくれたようだ。



「なるほどな……。

お前が間違えてこの部屋を訪ねてしまったのは、わかった」



ほっ……。良かった。



「だが!!ならば、何故部屋の中にいるんだ?

すぐに俺の部屋へ来れば良かっただろう」



安心したのもつかの間、エリックはまたギラリとした瞳で問いただしてきた。



たしかにーーーーーーーー!!!

言われてみればそうだわ!!

エリックにしてみれば、()()()()()()()()()()何していたんだ!?って部分が気になってるのよね!?


部屋を間違えた……は言い訳になってないわ!



なんと答えようか迷っていると、またルイード皇子がフォローしてくれた。



「それは俺の勘違いなのです!

リディア様に何かあったのかと、慌てて部屋に入れてしまったのです!」


「…………」



エリックは無言のまま皇子を見た。



皇子……私の身の危険を案じて部屋に入れただけだから、何もやましい事はない!って伝えてくれているのね。



でも、それ、言い訳になるかしら!?

こんな厳重なホテルで、私の身に何か起こる心配なんてないでしょ!?

エリックだって、その理由は不自然だと思うんじゃ……。



エリックを見てみると、ルイード皇子を見つめながら何か考えている様子だった。

気のせいか、エリックとルイード皇子が意味深なアイコンタクトを取っているように見える。



……ん??なんだ、この空気?

さっきとはまた違う、微妙な空気が流れたぞ。



「……わかりました。

今日はもう遅くなってしまったので、また明日の朝お伺いします。


リディア、行くぞ」


「あ、はい」



あれ?なんだか急にあっさり納得したぞ?

なんで??


今の2人のアイコンタクトは何!?



よく考えたら、私が部屋に入れなくなったと言っただけで、あんなに皇子が慌てるのもおかしいし。

エリックが急に納得したのも、おかしいし。


そもそも、エリックがこんな時間に皇子を訪ねるなんて……何か重要な話でもあるの?

ただグリモールに向かってるだけなのに?



なんだか……2人ともちょっと変じゃないかしら。

なにか私に隠してる気がするわ。



急に湧いていたエリックと皇子への不信感を抱えながら、私はエリックと共に部屋を出た。




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