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悪役令嬢に転生したはずが、主人公よりも溺愛されてるみたいです[web版]  作者: 菜々@12/15『不可ヒロ』1巻発売
本編

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59 ここ2階のテラスですが、何故あなたがいるの


私の失礼な態度につい真顔になってしまったマレアージュだったけど、なんとか冷静さを取り戻したらしい。


またあの高圧的な笑顔に戻った。

さすが公爵令嬢というべきか。



「おもしろい方ですのね。リディア様って。

もしかして、本当に侯爵家の分際でルイード皇子と結婚なさるおつもりなのですか?」



分際って言っちゃってるし!!

貴族特有の遠回しな嫌味攻撃はどうした!?


堂々と卑下してきたわね!!



「あら、いやですわ。

私とルイード様の事は、マレアージュ様には関係のない事ではありませんか。おほほ」


「……言っておきますが、私が本気でルイード皇子と婚約したいと言えば、私が選ばれるのですよ!?


今貴方が皇子の婚約者でいられるのは、私が何も動いていないからなのです。

勘違いはおやめ下さい!」



またマレアージュの笑顔は消えた。

案外すぐにボロを出すのね。まだまだだわ。


こちとら嫌味な上司からの攻撃をスルーするのは得意なんだから!

笑顔キープだって簡単よ!




「では実際に皇子の婚約者になってからおっしゃってくださいますか?

まだ決まってもいない事でそんな強く言われましても困りますわ。

どちらが勘違いか……あっ」



ヤバ!!さすがに言いすぎたかも!!


パッと口に手を当てて言葉を止めたが、間に合わなかったらしい。


マレアージュは顔を真っ赤にしている。

眉と目がつり上がって、まさに鬼の形相だ。


後ろにいる令嬢達は数歩後退りしている。




やばい……かなり怒らせちゃったみたい……。



そう思った時には、目の前のマレアージュが右手を大きく振りかぶっていた。



えっ!?ウソッ!!

叩かれる!?


ぎゅっと目を瞑ると、パァン!!という大きな音が響いた。



いたっ!!……くない?



痛みを覚悟した左頬からは、全く痛みを感じない。

でも確かに何かを叩いた音が聞こえたのに……。



ゆっくり目を開けて見ると、目の前にいるはずのマレアージュがいなかった。


正確に言うと、私の目の前に体格の良い騎士が立っていた為、マレアージュが見えなかった。


赤褐色の長い髪を1つに縛っている……



「……カイザお兄様!?」


「大丈夫か?リディア」



私の方に振り向いたカイザの左頬は赤くなっている。

どうやら、私の代わりにカイザが平手打ちをされたらしい。


カイザの先に見えるマレアージュは真っ青になっていて、右手を握りしめながら震えていた。



「え…英雄騎士のカイザ様……」



カイザの事を知っているみたいね。

後ろにいる取り巻き令嬢達も、みんな真っ青になって慌てているわ。



……というか、どこから来たの!?

ここ、テラスですけど!?



「リディア様!大丈夫ですか?」



後ろから声がしたので振り返ると、イクスがテラスの柵に掴まって跨いでいるところだった。

柵の奥には高い木が見える。



……ここ、2階ですけど?



もしかして2人とも、その木を登ってここまで来たんじゃないわよね?



呆気にとられていると、カイザがマレアージュに向き直った。

イクスは私の斜め前に立って、令嬢達との間の壁になってくれている。



「俺の妹に何をしようとした?」


「えっ……。あの……私……」



先程までの威勢の良い態度はなくなり、今すぐにも泣きそうになっているマレアージュ。


カイザのひと睨みにすっかり怯えきっている。



……なんだかここまでしたら可哀想に思えてきたわ。

これじゃただの弱い者イジメじゃない。


一応相手は公爵令嬢だし、この辺で止めておいた方が良さそうね。



「カイザお兄様。もう、そのへんで……」


「……ふん!仕方ないな。


だが、もしまたリディアに何かしてみろ。

たとえ公爵家の人間だろうが絶対に許さねぇからな」



カイザの物凄い迫力に、令嬢達は半泣き状態でテラスから出て行った。


ふぅ……。



「カイザ様。大丈夫ですか?」


「ああ。全く痛くはない。

だが、あの強さでリディアを殴ろうとしたのは許せねぇな」


「確か彼女はフランシス公爵家の御令嬢かと」


「フランシス公爵家ね……」



カイザとイクスがなにやらブツブツ言っている。


あまり聞かない方が良さそうな気がするのは、2人の顔が悪巧みをしている悪人にしか見えないからだろうか。



「助けてくれてありがとう。


でも……どうして2人がここに?」



私の質問に、2人がキョトンとした顔で見つめてきた。


そして2人顔を合わせてから、少し気まずそうな顔で答えてくれた。



「あーー…。たまたま、な。このテラスの下でそのーー……休憩?休憩してたんだよ!な!イクス!」


「そうですね。そしたら先程の令嬢やリディア様の声が聞こえて……」


「それで何かヤバそうだと思って、木に登って急いで来たんだよ」



……やっぱり木に登ってきたのか。猿かよ!!



「……というか、それって休憩ではなくてサボっていたのですね?」



私の質問に、カイザはふいっと目を逸らした。

イクスは冷静に「カイザ様に誘われたので仕方なく」とあっさりカイザを裏切っていた。



全く……。どこにも見あたらないと思ったら、この下に隠れてサボっていたのね。

まぁそのおかげで平手打ちされずに済んだから良かったんだけど。



なんの迷いもなく私の前に飛び出して庇ってくれるなんて、ちょっと……いやかなり?

嬉しいかも。



「カイザお兄様。庇ってくれて、ありがとう」



改めて笑顔でお礼を言うと、カイザは嬉しそうに「おう」と答えた。


イクスは「カイザ様は動きが速すぎるんですよ…」となにやらブツブツ言っている。



私の危機に、高い木を登って助けに来てくれた。

私を庇ってくれた。


サラの言う通り、私は今すごく幸せなのかも。


小説のリディアは、こんなに大切にされていなかった。



本当なら2年後にサラが味わうはずだった幸せを、今の私が奪ってしまったのかな……。


それは少し申し訳ないような気持ちにもなるが、ただイケメンにチヤホヤされたいだけっていうサラには賛同できない。



それって、みんなに対しての愛情とかないじゃない。



みんな1人1人心がある人間だ。


小説の登場キャラクターとしか見ていないサラに、みんなからの溺愛ポジを与える必要はなくない!?






…………ん?




……そうだよね。別に与える必要ないよね?




今まで、サラとエリックが結婚した後の事ばかり心配していたけど……結婚、させないとか……あり?



サラが私にとことん反抗してくるなら、私もサラとエリックの結婚を邪魔しちゃおうかな?


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― 新着の感想 ―
[気になる点] サラにきっぱり元々ルイードが婚約者じゃいボケとか 妹が兄二人と前から知り合いなのは当然じゃいとかきっぱり言わず可愛子ぶってるリディア 今度の令嬢たちは自分で撃退するんだろうなとワクワク…
[一言] いいと思います!! その意見に賛同します\( •̀ω•́ )/
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