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悪役令嬢に転生したはずが、主人公よりも溺愛されてるみたいです[web版]  作者: 菜々@12/15『不可ヒロ』1巻発売
本編

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56 サラが本音をぶちまけてきました


どうしましょう。

誰もいないと思っていた部屋にはサラがいました。


こちらを無言で見つめております……。


この部屋担当のメイドは、私に紅茶を淹れた後ささっといなくなってしまいました。


部屋に2人きりです。無言です。

でもサラからの視線をヒシヒシと感じます。


なんだこの空気。帰っていいですか?



ガタン!!


その時、突然サラが立ち上がった。


無言で俯いたままスタスタとこちらへやって来て、

私の目の前にどすっ!と腰を下ろしました。




しーーーーーーーーん。




あーーもう、なんなのよーー。

来るなら何か言ってよ!!

無言で座ってるなら来るなよ!!


耐えきれないよこの空気ーー。


その時サラが静かに口を開いた。顔は俯いたままだ。



「……ねぇ。あなたも転生者なんでしょ?」



おおっと!直球きたーーーー。

いきなり核心からついてくるのね!


でもね。私もこの質問をされたらどうするか、ちゃんと考えておきましたとも。




「転生者……?なんの事でしょう…?」



そう!!私、知らないフリする事にしました!!

たとえバレバレだとしても、絶対に認めない。


だってお互い転生者だって分かってたら、なんだか気まずいじゃない。

私の処刑エンドを回避するための協力者になってくれそうな雰囲気でもないし。


だったら知らないフリしているのが一番良い気がするわ。



私が知らないフリしたので、サラが顔を上げて思いっきり睨んできた。



「惚けるのはやめて!!もう知ってるんだから!」



今まで見た事のない、素のサラだ。

どうやら、私以外誰もいないこの部屋で猫を被る事はしないらしい。


令嬢風の話し方もやめたのね。

でも、私はあくまでもリディアとして対応するわよ!



「さぁ。なんのお話だか…」


「ウグナ山の事よ!小説を読んで知っていたんでしょ!?

それでカイザ様を救ったのね!」


「ウグナ山の事は、突然神様の声が聞こえてきただけです」


「嘘つき!!リディアにそんな聖女のような力はないはずよ!

それに…それに…何で婚約者が皇子様なのよ!?」



え?そこ?


私がカイザの左腕怪我フラグを折った事を怒っているんじゃなくて、リディアの婚約者が皇子である事が気に入らないの??



「ルイード皇子とは昔から婚約していましたが」



私の言葉を聞いて、サラはまた何か言いかけようとしたが急に力なく項垂れた。



「そんなはず…そんなはずない。

悪役令嬢リディアの婚約者はサイロンだったわ。

……ルイード皇子なんて知らないわよ」



とても低い声で独り言のように喋っている。


なにやらすごくショックを受けているようだけど……ちょっとおかしくない?


私の婚約者が誰だったとしても、サラには関係ないじゃない。

サラはどちらにしろエリックと結婚するんだもの。



なぜこんなに落ち込む必要があるの?



「あの…サラ様?

私の婚約者がルイード皇子であろうと誰であろうと、サラ様とエリックお兄様の結婚には関係ありませんわ」



サラは私の言葉を聞いて、ピクリと反応した。

口を両手で覆い、少しブルブル震え出した。



「関係ない……?

この小説の主人公はこの私よ。

私が誰よりも1番幸せで羨ましがられる存在でないといけないのよ」



真っ青な顔でブツブツと何か言い出した!!

なに!?こわっ!!


私の事を見てもいない。

どうやら1人の世界に入り込んでいるようだ。


とりあえず黙ったままサラの言葉に耳を傾けてみる。



「エリック様は確かに美しく聡明で完璧だわ。

でも侯爵家よ…。

それに比べて、悪役令嬢の婚約者が皇子様ですって?

しかもあんなに美少年だなんて、そんなのずるいわ。

1番目立つのはこの私なのに。

なぜ悪役令嬢の方が目立ってるわけ?」



ブツブツ……



「この小説の男達はみんな私を好きにならなきゃいけないのよ。

私が主人公なのよ。

みんなからチヤホヤされていい男に囲まれながら幸せに暮らせると思っていたのに…。

一体どうなってるのよ…」



ブツブツ……




サラの独り言は止まらない。


あのーーーー。全部声に出してますけど?




でもそうか。うん。わかった。


サラが主人公ポジに期待を乗せすぎたただの拗らせ女だという事がね。



自分が主人公として1番幸せになりたい。

自分より幸せポジの女は許せないって事なのね。



…………ってただのクズじゃねーーか!!


なんっだそれ!!ふざけんなよ!?

リディアにだって幸せになる権利はあるわ!!



「あの!!サラ様。

何をそんなにこだわっているのか分かりませんが、私だって幸せになる権利はあります。

サラ様だって、エリックお兄様と結婚できるだけで十分幸せでしょ!?

それ以上なにを……」



少し強気に発言してみたのだが、どうやらサラの地雷スイッチを押してしまったらしい。


サラは私の言葉を聞いて、一瞬目を見開いたかと思ったら、すーー…と静かに立ち上がった。

顔面蒼白、据わった目で私を上から見下ろしている。



こわぁっ!!

な、な、なに!?顔がイッちゃってますけど!?


サラの無の表情に、ぶわっと鳥肌が立ちガクガク震えてしまう。


これヤバイ人の顔だ!!犯罪者の顔だわ!!

小娘1人くらい簡単に殺せそうな顔だわ!!



サラは感情を押し殺したように小さく低い声で話し始めた。



「私にも幸せになる権利があるですって…?」


「…え?」


「なぜ悪役令嬢のあなたが主人公の私よりも美しいのよ…。

そんな設定なかったはずなのに。

元々の顔が美人?そんなのズルくない?」


「え?え?」


「それに、何でお兄さん達があなたの事を大切にしているの?

嫌われていたはずでしょ。

どうして主人公の私よりも、悪役令嬢の妹を優先させるのよ。

おかしいでしょ?」


「え?え?」



サラは据わった目で私を凝視しながら淡々と話している。

私は肉食動物に狙われた小動物のように、その場から逃げる事もできずに震えているだけだ。



「それもこれも……全部あなたが悪いのよ。

あなたはわざと美少女である事を表に出したり、私より先にエリック様達に会ってうまく自分が好かれるように誘導したりしたんでしょ?」



サラの言葉はだんだんと力強く、大きくなっていく。

こぶしを作っている手は、怒りでプルプルと震えていた。



「あなたは自分だけ幸せになろうとしてるじゃない!!

姑息な手を使って!!卑怯だわ!!

そのくせ『私だって幸せになる権利がある』ですって!?

主人公である私の幸せを奪っておいて!!

よくもそんな事が言えるわね!!この悪魔!!」



大声で叫んだサラは、息切れをしながらもまだ私を睨んでいた。

はぁ…はぁ…というサラの声だけが静かな部屋で聞こえている。



あ……悪魔?

悪役令嬢を通り越して、悪魔にされてしまったわ。


サラの言っている事はただの被害妄想であり、勝手な思い込みだ。



そもそも今は小説の始まりより2年も前なのよ?

今はまだサラは主人公ではない。

すでに主人公パワーなる華やかオーラは出せるみたいだけど……。



何を勘違いしているのか知らないが、上手くいかない事や不満を全部私にぶつけられたって困る!



小説のストーリーが始まる2年後、どうなってしまうのか不安なのは私だって同じなんだから!!

私なんて、下手したら処刑エンドなんだからね!?


多数の男達にチヤホヤされないくらい、なんだって言うのよ!!



処刑エンドよりはマシでしょうが!!



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