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悪役令嬢に転生したはずが、主人公よりも溺愛されてるみたいです[web版]  作者: 菜々@12/15『不可ヒロ』1巻発売
本編

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48 主人公サラとカイザの出会い


「ぜぇっぜぇっ…はぁはぁ…」


「大丈夫ですか?リディア様」



噴水近くの建物の陰で私は息を整えていた。

いくら身体が15歳でも、運動不足のリディアには堪えるわ…。



「ふーー…」



チラッと噴水の周りを確認すると、石のベンチで横になっているカイザが見えた。

その少し離れた場所にはサラが立っている。



よし!!まだ出会っていないわね!


それにしても、こうも小説の通りになるものなの…?


先程思い出した主人公とカイザの出会い。

それはまさにこの場所。噴水の前だったのだ。



小説のカイザは左腕がほぼ動かない事に絶望し、荒れた毎日を過ごしていた。

唯一落ち着ける場所が、この噴水のベンチだった。


カイザはいつも1人で虚しさと闘っていたが、ある日この大切な場所に主人公が現れる。

最初は鬱陶しく思っていたカイザも、毎日会いに来てくれる主人公にだんだんと心を開いていく…。



そう。カイザの恋は時間がかかるのよね!

イクスと違って一目惚れじゃないから。


だから、今日2人が会ってもすぐに恋に落ちる事はないと思うんだけど…。


それよりも、サラはどうするつもりかしら!?


カイザの左腕は私のおかげで無傷だし!

特に荒れ狂ってもいないカイザを、どう落とすつもりなのかしら…。



1つ言っておきますと、私がここで2人の様子を覗き見……いいえ。観察……も違うな。……見守っているのは、私の未来に関わる可能性があるからよ?


決して、ただ興味があるだけの野次馬根性でいる訳ではないのよ?

ウキウキわくわくなんて、していないからね?



…あっ!!サラが動き出したわ!!

カイザに話しかけるつもりね!



「あれは……サラ様?

なぜカイザ様のところへ…」



建物の陰から覗き見してる私の上から、ひょこっとイクスも顔を出す。



「イクスは見ない方がいいわ!」



小さな声で言いながら、ぐいーーっとイクスを押して2人を見えないようにする。



「何故ですか?」


「だって……やっぱり嫌でしょ?

好きな人が他の男と話しているのを見るのは…」


「…………それは確かに嫌ですが、今はそんな状況にはならないと思いますが」



なに言ってるの!?

今!まさに!サラがカイザに近寄って行ってるじゃないのよ!


どれだけ鈍いのかしら。

思わずため息が出てしまう。



「はぁ…。もういいわ。

鈍いイクスはそのままそこに待機してて」


「……貴方にだけは鈍いとか言われたくないんですけど」



イクスがなにか言っているが、私はサラに集中よ!!

もしかしたら、また私を上手く利用されて悪役の汚名を着せられちゃうかもしれないし!




サラは寝ているカイザに近づき、寝顔をじーーっと見つめている。

ものすごく不気味な顔でふふふふふと笑っているようだ。


まるでストーカーね。

覗き見してる私に言えた事じゃないけど。



サラの手がカイザの顔に触れようとした瞬間、カイザがサラの手を掴みガバッと起き上がった。

2人の距離はすごく近い。

見つめ合う2人…。



うわぁっ!!

2人の周りにピンクの花がたくさん見えるわっ!!(空想)

まさに少女漫画の姫と王子の出会いのよう!!


なぜか私まで照れちゃうわ!!



「あ、あの…カイザ様…」



サラが猫かぶりの甘い声を出す。

きっと、今主人公パワーのキラキラを満遍なく降り注いでいるのだろう。


黙ったままサラを見つめていたカイザは、やっと口を動かした。



「お前、誰だ?」



ズコーーーー!!って!!

古典的なノリをやりそうになっちゃったじゃないのよ!!


知らないのかよっ!!

兄の婚約者の顔くらい覚えておけよっ!!



あーあー。

サラってば目が点になっちゃってるじゃない…。



「サ、サラでございます。

エリック様の婚約者の…」


「ああ。そうか、悪かったな」



カイザは掴んでいたサラの手を離した。



さすがはカイザね!!

ムードをぶち壊す天才だわ!!


先程までのピンク色オーラは全て吹っ飛んでいったわ。



「……で?エリックの婚約者様が俺に何か用ですか?」



カイザは欠伸をしながら聞いた。

昼寝を邪魔されて、少し不機嫌そうだ。


でもそんな不機嫌オーラに負けるようなサラではない。



「私……カイザ様を慰めたくて!」



んん!?

なに言ってんの?

な、なんかそれって……意味が……。



「は?兄貴の婚約者のくせに、俺を誘ってんの?」



それよ!!そういう意味に捉えちゃうわよね!?


途端に真っ赤になって慌てるサラ。

自分の言葉の意味に気づいたようだ。



「ち、違います!!そういう意味ではなくて!

カイザ様が左腕の事で悲しんでいると思って…。

私が支えられたらって…!」



え!?左腕!?


ま、まさか…サラってば……カイザが怪我していない事知らないの!?



「左腕?左腕がどうかしたのか?」



訳の分からなそうなカイザ。それはそうだ。

この世界では、カイザは左腕を怪我していないのだから。


そして、同じように訳が分からなそうなのはサラもだった。



「え?左腕が…ほぼ動かないのですよね…?」


「なに言ってるんだ?動くぞ。ほら」



カイザが左腕をぶんぶん振り回している。

サラは口をポカンと開けてその様子を見ていた。



「ど……どうして……。

ウグナ山での襲撃で、怪我されたのではないのですか?」


「ウグナ山?それって…リディアが敵の策謀を見抜いたやつか?」



ままままずいーーーーーー!!!!



「リディア様が……?」



ど、どうしよう!!

サラはウグナ山の襲撃を回避できた事を知らなかったんだわ!


それを見抜いたのがリディアだなんて言ったら……。

リディアも自分と同じ転生者だって気づかれちゃうじゃない!!


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