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悪役令嬢に転生したはずが、主人公よりも溺愛されてるみたいです[web版]  作者: 菜々@12/15『不可ヒロ』1巻発売
本編

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46 エリックお兄様がお怒りです


「だーかーらー、私は何もされていないし、なにより女の子達はみんな楽しんでたのよ!?

ここで貴族達を捕まえたら、もう彼女達の年に一度の夢はなくなってしまうわ!

だから捕まえなくていいのよ!」


「でも、リディア様を肩に担いで行ったんですよ!?

十分罰する理由はあります!」


「貴族達はお前に触ったりはしなかったのか?」



イクスとカイザから質問が止まらない。


捕まえないで!という私の意思を尊重してくれようとは思っているみたいだけど、何もお咎めなしなのも気に入らないのだろう。



「触られてないわよ。

だって私、ずっと隣の部屋にいて貴族達には会っていないもの」



本音を言うと、私だって若い娘をキャバ嬢扱いしているようなクズ貴族は殴ってやりたいわよ。

自分の地位を利用して、最低だわ!


それでも彼女達は美味しい食事に満足しているし、喜んでるなら問題はない。



それに、貴族達に手を出さないのはJとの約束だ。

これを守らないと、私との約束も破られてしまうかもしれないわ。



「とにかく!

この件はこれでおしまいっ!!ねっ!!」



無理矢理話を終わらせて馬車に乗り込んだ。


2人ともまだどこか不貞腐れていたが、先程の『嫌いになる』発言が効いているのか渋々馬車に乗り込んできた。


よし!!約束は守ったわよ!J!



馬車に揺られながら、屋敷に帰る。


結局クレープ食べられなかったな…。残念。

レストランで何か食べれば良かったかしら?


それにしても今日は疲れたな。

早くお風呂に入ってゆっくりしたい…。



その時ふとエリックの顔が浮かんだ。



「あっ!!今回の事、エリックお兄様には言わないでね!?」



誘拐されたなんて知られたら、また外出禁止にされちゃうわ!

2人にしっかり口止めしておかなくちゃ。


エリックという名を聞いて、カイザとイクスの顔が真っ青になった。



「……言う訳ないだろ。

そんなのバレたら俺の方がヤバい…」


「エリック様に知られたら…」



2人の顔色がどんどん悪くなる。


どうしたのかしら?

そんなに怯える事??


よくわからないけど、とにかく2人からエリックに話す事はなさそうね。

それならいいんだけど…。



気づけばいつの間にか屋敷に到着していた。

イクスが1番に馬車から降りようとして、ピタリと動きが止まった。



「……?イクス?降りないの?」


「エ、エリック様……」


「!?」



イクスの言葉を聞き、外を見ると……馬車の前に無表情で佇むエリックがいた。


睨んでいる訳ではないのだが、イクスは蛇に睨まれた蛙のように固まっている。

それは私の前に座るカイザも同じだった。


微かに震えているような気もする。



なぜ2人が怯えているのか……その気持ちはわかる。


だって、私だってなんか怖いもん!!

エリックから漂ってくる黒いオーラが怖い!!



「何しているんだ?

3人とも、早く降りてきなさい」



エリックの声はあくまで冷静で落ち着いているけど、いつもよりだいぶ低くないですかね!?

どう見ても怒っていらっしゃいますよね。はい。


私達は黙ったまま馬車から降りて、エリックの前に並ぶ。



なによこの状況!?

学校か!?先生に叱られてる生徒かよ!!



「リディアが誘拐されたというのは本当か?」



知ってるしーーーー!!!!

何で知ってるの!?


ちょっと!誰か否定してよ……ってカイザもイクスも真っ青な顔で俯いちゃってるし!!


それじゃ肯定してるようなものじゃない!


でも……。



チラッとエリックの顔を見る。

凍りついたような表情のまま、私達を見ている。



うん。無理だ。

ウソついてもすぐバレるな、これ。


きっと2人も同じ考えだから黙っているんだろう。


ここは正直に謝るのが1番じゃない?



「ごめんなさいっ!!エリックお兄様!

でも、普通の誘拐ではないのです!

平民の娘達もみんな楽しみにしてるくらいの『兎のジャック』っていう…」


「リディア」


「は、はい!?」



エリックは私の説明を途中で止めて、こちらを見た。

私を見つめる瞳にはもう怖さは感じない。



「どこも怪我はないのか?」


「は、はい…」



エリックは少し切なそうな顔をして、私の頬をなでた。


誰から聞いたのかは知らないが、きっとすごく心配していたんだわ…。

内緒にしようとしてた事に少し罪悪感…。



「心配かけてごめんなさい」


「お前が無事で良かった」



エリックはいつものように、私の頭をポンと軽く叩いた。


良かった…もう怒ってはいないみたい。



そう安心したのも束の間。

エリックからは再度黒いオーラが出て、カイザとイクスに向かった。



「それで?お前達は一体なにをしていたんだ?」



カイザとイクスがビクッと身体を震わせる。

わざとらしく明るい調子でカイザが答えた。



「いや!その……平民達の間で、絶対安全って言われているウサギ仮面だったから…」


「相手は関係ない」



ピシャリとぶった斬られて、カイザが黙った。

イクスに至っては、ずっと無言で何かを覚悟してしているような顔だ。



「相手が安全とかの話ではない。

リディアが誘拐された事が問題なのだ。

お前達はなんの為に付いていたんだ?なぁ?」



ひ、ひぃぃーーーー!!

怒られてるのは私じゃないけど、私まで震えるほどこわいっ!!


まるでエリックの周りに吹雪が吹いているようだわ!!

漫画だったら絶対吹いてる!!



チラッとエリックが私を見た。



「リディアはもう部屋に戻って休みなさい。

……お前達2人は俺の部屋に来るように」


「……はい」



3人ともそれしか言えない。

私達は無言のまま屋敷の中に入って行った。


カイザとイクスは、まるで死刑宣告を受けに行く囚人のような顔をしてエリックの部屋へ向かった。



……ファイト!!

心の中で応援しておくわね!!


2人を見送り、私は1人自分の部屋へ戻った。


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[一言] ・・・・・・・・・どんまい
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