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悪役令嬢に転生したはずが、主人公よりも溺愛されてるみたいです[web版]  作者: 菜々@12/15『不可ヒロ』1巻発売
本編

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45 そこの悪役顔ヒーロー様、止まってくれますか


ビーッ!ビーッ!となる警報の中、レストランの支配人っぽいおじさんが走ってきた。



「大変です!!英雄騎士のカイザ様が……!

出入り口が全て塞がれております!!」



隣の部屋でクズ貴族達が騒ぎ出している。

みんな慌てて立ち上がり、部屋の中をうろうろ歩き回っているようだ。



「なぜあのカイザ様が!?」


「コーディアス侯爵家が出てきたら…」



すぐにでも逃げ出したいだろうが、出入り口が塞がれたと言われてしまったらどうする事もできない。

ここは3階だから、窓からの脱出も不可能だろう。


1番罪の重い誘拐実行犯であるくせに、Jだけはなぜか余裕そうに笑っている。


この場を逃げ切る自信でもあるのかしら?

  



……いえ。違うわ。

きっと、私がどう行動するのかがわかっているから落ち着いていられるんだわ。


私は仕方なくJに言った。



「……お店の入り口まで案内して」


「勇敢なお兄様を止めてくれるのかい?」



Jはニヤニヤしたまま尋ねてきた。


そうするしかないって分かってるくせに!

Jって結構意地悪なのね。



「今ここで貴方が捕まったら私が困るのよ」



そういう事だ。

せっかくいざという時のためにJと協定を結んだのに、ここで捕まってしまっては意味がない。



「僕が無事だとしても、取引相手である貴族達が捕まってしまったら困るんだけどな〜。

僕にも生活があるし?」


「捕まえさせないわ」


「え?貴族達も?」



予想していない返答だったのか、Jは少し驚いていた。


私がクズ貴族達の事を良く思っていないのは伝わっていたみたいね。

もちろん本音を言ったら捕まえてやりたいところだけど。



「言っておくけど、彼らのためじゃないわ!!

年に一度、ここに連れて来られるのを楽しみにしている女の子達のためよ!!」



私の言葉を聞いて、Jの赤い瞳が大きく開いたと思ったら突然笑い出した。



「はははっ!なるほどね!女の子の為かぁ〜!

それは有り難いね!」



よくわからないが、なぜかJは上機嫌だ。

壁に寄りかかり腕を組んでいたが、突然こちらへ走ってきて私の手を取った。



「よし!!じゃあ恐いお兄様の所へ行きますか!」



Jに引っ張られて部屋を飛び出した。

廊下を走り、階段を下りて行く。


速い!速い!


アラサー喪女の私なら全くついて行けないところだが、リディアの若い身体はなんとか走れていた。

1階まで下りると、カイザの怒鳴り声が聞こえる。



「全ての部屋を探せ!!

リディアと一緒にいる男共は全員捕まえろ!!」



ひぃぃ。めちゃくちゃ怒ってるわね!!



どうやら、イクスだけではなく街の警備隊まで呼んで来ているようだ。


カイザの前に出て行くのを少し躊躇ってしまう。

Jはそんなカイザの台詞を聞いても、余裕そうな笑顔を絶やさない。



「お〜こわ!」



と小さな声で私に言ってきた。


この人……恐怖心というものはないのかしら?

小説でもリディアに軽く殺人示唆していたし…。

変な人……。



Jはカイザからは見えない位置で止まり、私だけ行くように促してきた。


一緒にカイザの前まで行くのかと思ったけど、それはさすがにないか。

私だって、実行犯を前にしたカイザを止められる自信はないわ。



仕方なく1人でカイザの前に飛び出して行った。



「待って!!私はここよ!!」



カイザ達や警備隊の動きが止まり、みんなが私に注目する。



「リディア!!」


「リディア様!!」



カイザとイクスの2人が私に向かって走って来た。

安堵の表情で私を見つめた後、カイザに強く抱きしめられた。



「リディア!!良かった…」


「い…いた……。ちょっ…力……強…」


「あ。悪い」



はぁーー。全く!自分の力強さをちゃんとわかって欲しいわ!

肋骨折れるかと思った……。



「リディア様!!どこかお怪我はありませんか!?」


「大丈夫よ。イクス」



むしろ今さっき実の兄に骨折られそうになりましたけど。


イクスは私の何も変わらない姿を見て、心底安心したみたいだった。

カイザも笑顔になっている。



温かく優しい空気が3人を包む……と思ったら、突然カイザとイクスの顔がガラッと変わった。



口元は笑っているが、目が笑っていない。

ドス黒いオーラが身体中から溢れ出ているかのような、なんとも言えない悪人顔だ。



ど、どうしたの2人とも!?

正義のヒーローとは思えない顔になってるけど大丈夫!?



「よし。クソ貴族を捕まえに行くか」


「そうですね」



普段より何オクターブも低い声で言う。

そのくせダークな顔でうっすら笑い合っている。



こわっ!!

な、なに!?2人とも怖いから!!


というか、止めなきゃ!!

貴族達を捕まえられたら色々と困るのよ!



「ダ、ダメ!!」



私は両手を広げて2人の前に出た。


2人ともチラリと私を見ては、子どもを抱き上げるかのように私を持ち上げてひょいっと横にズラす。

そして何事もなかったかのようにスタスタ歩き出した。



無視かよ!!

ちょっと待てーーーーい!!



「捕まえないで!お願い!」



後ろからカイザに抱きついて止め……ようとしたが、カイザはそのままスタスタ進む。


私なんて全く錘になっていないようだ。

ズルズルと簡単に引きずられて行く…。



えーー!?なんで止まらないの!?

もう!!この筋肉バカ!!

どうしたら止められるのよーー!?



「と、と、止まらないと、嫌いになるからねーー!!」



ピタッ。


えっ!?止まった!?



はっ!……ていうか、私ってば何言ってんの!?

嫌いになるって……幼児かよ!!


急に恥ずかしくなって、カイザから離れる。



どうしよう。

あまりにもバカな事を言ったから、カイザも呆れてつい止まっちゃったんだわ。



反応が怖い。カイザの後頭部を見つめる私。

イクスはカイザの様子を窺っていた。


くる〜り…とゆっくり顔だけ振り返るカイザ。



ぎゃ!!目が据わってる!!

お、お怒りMAX!?



「嫌いになるだと…?

お前……元々俺の事が嫌いじゃなかったか?」



え!?気になるの、そこ!?

ちょっ……これ何て答えるのが正解なの…?


カイザは単純だから、好きとか言ったら喜ぶのかしら?



「嫌いじゃないわ……その、す、好きに決まってるじゃない。

お兄様なんだし!

でも、ここで貴族達を捕まえたら嫌いになるから!!」



こんなのでカイザが言う事聞いてくれるかしら…。

なにか他の言い訳も考えないと…!

えーーーーと、えーーーーとぉ……



「わかった!!捕まえない!!」



堂々とした態度でカイザがキッパリ言い切った。



「カイザ様!?」



聞いたぁーーーー!?

え!?単細胞すぎませんか!?



その時、レストランの柱の陰から笑顔のJがひょこっと顔を出した。

カイザとイクスは背を向けているので気づいていない。


Jは私に向かってピースサインをして、そのまま手を振っていなくなってしまった。



行っちゃった…。

Jとは知り合いになれたけど……結局顔も本名もわからないままだわ。



まぁそれはいいとして。


とりあえず私は、不満そうなイクスに納得のいく説明をしないとな。

なぜか妙にご機嫌なカイザは放っておいていいかしら。



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― 新着の感想 ―
[一言] とりあえず良かったε-(´∀`;)ホッ
[一言] なんかツンデレとか意地っ張りとか、 そういう不純物一切なしに、直球でモテまくってるな主人公
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