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悪役令嬢に転生したはずが、主人公よりも溺愛されてるみたいです[web版]  作者: 菜々@12/15『不可ヒロ』1巻発売
本編

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43 Jとの対面


どうも、こんにちは。リディアです。


私は今『(ウサギ)のジャック』に誘拐されて、とあるレストランの控え室におります。

6畳ほどの広さで薄暗く、小さい窓が1つだけ。

長いソファーだけが置いてあり、まるでカラオケの一室のような部屋。



私がここに連れて来られた時には、14〜18歳くらいの娘達がすでに7人ほどいました。

みんな可愛らしくて男性にモテそうな子達ばかり。


全員誘拐されてきたのだろうけど、泣いている子は1人もいません。

むしろ、みんな頬を赤らめて興奮しております…。



「私が選ばれたんだわ!」

「素敵な男性はいるのかしら」

「見初められるように頑張らなきゃ!」



と、ブツブツ何か言っていて、少し怖いくらいです。



兎のジャックに誘拐される事を望んでいる娘が多いというのは、どうやら本当みたいね。

私なんて誘拐されている最中に拍手をもらったもの。

娘達にとってはよほど光栄な事なのね。


誰も怖がっていないので、そこだけは安心する。



ただ、カイザやイクスはかなり驚いていたみたいだけど…大丈夫かしら?


平民の方々から兎のジャックの話を聞けば、安全だとわかるわよね。

暴れたりなんか……してないわよね?



私がいなくなった後の2人を想像すると、少し不安になる。



それにしても、私を誘拐したあの赤い瞳のウサギ仮面……。

きっとあの男がJなのだろうけど、私をここに置いてすぐにまたどこかへ行ってしまったわ。

一体どこへ…?



私も女の子達も放置状態。

実は、逃げようと思えば逃げられるのよね。

誰も逃げようとはしないけど。


それはそうだ。ここにいる女の子達にとって、この場所はシンデレラに出てくるお城のようなものなのだから。

一夜の夢を見せてくれる場所…。


じゃあJは魔法使いのおばあさん…って感じかな?



え?なぜお前は逃げないのかって?


私はクズ貴族との合コン……いえ。食事会なんて全く興味はないけれど、Jと会っておかなきゃいけないからここに居るだけよ?

変な誤解はしないでくださいね。



ガチャッ


突然部屋のドアが開いて、私達をここに連れて来たウサギ仮面が現れた。

口元は隠されていないので、ニッコリ微笑んでいるのがわかる。


ウサギ仮面は開いたままのドアに向かって手を広げ、高らかに言った。



「お待たせしました!

ではお嬢様方、こちらのお部屋へどうぞ!

楽しいひと時をお過ごし下さいませ!」



楽しそうな声だ。


女の子達のテンションが上がり、みんな駆け足で控え室から飛び出して行った。


隣の部屋からは賑やかな音楽や男性の話し声が聞こえてくる。

チラリと見えたが、華やかに飾られた明るい部屋。

テーブルにはたくさんのご馳走が並んでいた。



娘達がみんな飛び出して行った中、私だけが出ていかずにソファに座っていた。

ウサギ仮面…いや。Jはすぐに私に気づき、近づいてきた。



「あれ?君は行かないのかい?

君みたいな可愛い子はすぐに人気者になるよ!」



まるでキャバクラのキャッチね。

…まぁ私はそんなのされた経験ないけど。


一度はされてみたいと思っていたけど…こんな軽口で褒められても、嬉しくはないのね。

キャッチからの声をかけをスルーしている美女の気持ちがわかった気がした。



「私は行かない方がいいと思うわ。

だって、私はコーディアス侯爵家の長女…リディア・コーディアスだもの。

あちらの方々も、仮面越しでもお顔を見られたくはないと思うわ」



私がそう言うと、Jの顔から笑顔が消えた。



「貴族…?しかも、侯爵家だって?」


「ええ」


「あーー……。そうか。それは……やばいな」



Jは大きく息を吐きながら、天井を仰ぐように視線を外した。


ここに参加しているクズ貴族達はみんな底辺の貴族のはず。

そんな男性達に侯爵家の娘を(はべ)らせたと知られたら、底辺貴族など簡単に潰されてしまうだろう。


エリックなら間違いなく潰すな。



仲介人として働いているJにとっても良くない話だ。



Jは丁寧だった態度を変え、どかっ!とソファに座った。



「それで?僕を不敬罪で捕まえるかい?

貴族誘拐となったらそれはそれは重い罪を負うんだろうなぁ〜」



言葉とは裏腹に、Jは少し半笑いしている。

どんな罰則が待っているのか怯えている様子はない。

いざとなったら逃げる気満々といった感じだ。



確かに貴族誘拐は軽い罰則では済まないだろう。

下手をしたら牢獄に入れられて処刑コースだってあり得るのだ。


それなのに、なぜこんな余裕そうなの?



「残念だけど、私はあなたを訴える気はないわ。

むしろここに連れて来てくれて感謝しているくらいよ」



私の言葉を聞いて、Jは目を見開いていた。

想像していなかったのだろう。

まさか誘拐してくれてありがとうと言われるとは。



「……どういう事?」


「あなたに会いたかったのよ」


「……なにそれ。もしかして、口説いてる?」


「違うわ」



ははっとJが笑った。


顔の上半分にウサギの仮面を付けているから?

赤い瞳が本当にウサギみたいだから?


なぜか少年のように笑うJを可愛いと思ってしまった。



「…友達になりたかったのよ。

もし私が……その、家から追放されるような事になったら、助けてもらいたいの」


「追放?なにかイケナイ事でもしてるの?」



Jはニヤニヤしながら話を続ける。

なにがそんなに楽しいの?って聞きたくなるくらい、彼は楽しそうだった。



「してないわよ!

してないけど、もしかしたら…っていう保険みたいなものよ」


「ふーーーーん?」


「……なんでそんなにニヤニヤしてるの?」


「いや?べーつにー?君っておもしろいね」



おもしろい?私が?可愛いの間違いではなくて?



「いいよ!何かおもしろそうだし!

もし君が平民になったら、助けてあげましょう」


「……随分上から目線ね」


「とんでもない!」



Jは両手を広げて降参のポーズをしている。


ふざけているのか本気なのか……。



でも、助けてくれるという言葉はきっと本気だと思う。

それがたとえ『楽しそうだから』という理由だとしても。



「ありがとう。

ところで…あなたのお名前は?」



小説にはJとしか書いていなかったが、本当の名前は……



「僕はJだよ!」



……教えてくれる訳ないか。



「まぁ、なかなか会う事もないだろうけど、よろしくね!リディ!」



Jが笑顔で手を差し出してくる。



この手は……握手を求めてる…のよね?


よく大学の飲み会で、意見が合った相手に握手を求める男がいた事を思い出した。


こういうノリ、喪女にはちょっと苦手だわ…。でもやった方がいいのよね。

ていうかリディってなによ。


私はJに握手をしながら口を尖らせた。



「私の名前はリディアよ!」


「僕だけの愛称さ!可愛いだろ?リディって!」



なんて明るくて人懐っこいのかしら。

私の周りにはいないタイプね。まぁ調子がいい…とも言えるけどね。



とにかくJと知り合いになれたのは良かったわ。

これでいつ追放されても、なんとかなりそう…。



窓の外を見て、ここに来てどれくらい時間がたったのか気になった。

目的は達成したし、そろそろ帰った方がいいかな。



「J、私そろそろ…」



ビーッ!ビーッ!ビーッ!ビーッ!


突然大音量の警報が鳴った。


ななな、なに!?


Jがすぐに窓の外を覗き、ハハッ!と笑った。



「どうやら向こうから来てしまったみたいだね。

お姫様の奪還に」


「え?」



まさか……カイザ達!?





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