41 イケメンの薄着は破壊力すごいです
フェスティバル当日。
今回のフェスティバルは、平民のためのものだ。
仕事も家事もせずに朝から歌ったり踊ったり……とにかくお祭りを楽しむ。
年に一度の自由な日だ。
もちろん売上が爆上がりになる事から、喜んでお店や屋台をしている人もいるが。
そこに平民と貴族の差別があってはいけない。
貴族が介入する事で、平民の楽しみを奪ってはいけない。
貴族が参加したいのであれば、貴族という身分を隠して平民として参加しなければいけないのだ。
平民の平民による平民のためのフェスティバル…って感じね。
という訳で、リディアも平民に見えるような衣装を着ております!
髪の毛はポニーテール、足元はブーツです。
それでも可愛い!!!
やばい!!リディアってば、どんな格好でも似合いすぎるわ!!天使!!
平民の格好をしていても隠しきれないこの高貴な美少女オーラは大丈夫なのかしら?
「リディア様が着ると、質素なワンピースが華やかに見えてしまいますね。
とっても素敵です!」
私の支度を整えたメイが、満足そうに言った。
やっぱり?そうよね。
これほど平民の服を輝かせてしまうような人は、なかなかいないわよね。
はぁ〜。美少女も大変だわ〜。
コンコン。
「リディア、入るぞ」
ガチャ。
部屋にカイザが入ってくる。
だーーかーーらーー、返事を聞いてからドアを開けろよ!!
ノックとセリフとドアを開けるのが、ほぼ同時なんだよ!
ジロッと睨みつけようとして、固まってしまった。
カイザも平民の格好をしている。
薄い布で作られた、なんのこだわりもなさそうな無地の服。
普段よりだいぶ薄着になっているため、身体つきの良さが目立ちまくりだ。
逞しいその胸と腕に抱かれたいと思う女性が、今日だけで一体何人現れるだろうか。
さらにはその身体に付いている顔面があれだ。
少し意地悪そうではあるが、キリッとした男らしい目に高い鼻。
赤褐色の長い髪を1つに縛っている。
整いすぎたその顔を見れば、誰もが顔を赤くする事だろう。
目立つ。とっても目立つわ。
こんな男性が街にいたら、女性陣からキャーキャー言われるに決まってる。
……ん?
カイザの後ろにいるのは……イクス!?
イクスもカイザと同じ、シンプルな薄い服を着ている。
まだ17歳のイクスはカイザほどの筋肉はついていないが、細い身体についた適度な筋肉がまた良い!!
痩せマッチョってこういう身体の事を言うの?
焦げ茶色の短髪が、まるでスポーツ少年って感じ!
学校にいたらめちゃくちゃモテるタイプ!!
さらにイクスもカイザやエリックに負けないくらいのイケメンだもの。
こちらも女性陣が放っておく訳がないわ。
ちょっと……男キャラの薄着姿やばくない!?
破壊力すごいんだけど!!
普段からカイザやイクスの顔面に慣れていなかったら、鼻血出していたかもしれないわ!
2人は私を見て一瞬にこっと笑ったけど、ハッとしてすぐに真顔になった。
「お前。もう少し地味にできないのか?
それじゃ男共がどんどん近寄ってくるだろ」
「全然平民っぽさが出ていませんね。
これでは街に出た途端に視線を集めてしまうでしょう」
なにやら2人でブツブツ言っている。
私の姿がお気に召さないらしい。
言っておくけど!
あなた達、自分自身も十分目立ってるんですからね!?
リディアももちろん超絶美少女ですけど、この2人と一緒にいたら間違いなく女性からの視線がすごいはずよ。
「いいか?男に声をかけられても、ついて行ったらダメだぞ?
お菓子くれるとか言われても貰っちゃダメだ!」
「ちょっと!何歳だと思ってるのよ!」
まるで幼稚園児に言い聞かせるかのようなセリフに、思わず反発してしまう。
冗談であって欲しかったが、カイザの顔は真剣そのものだった。
「フェスティバルには人攫いが出ると言われていますからね。
俺達から絶対に離れないようにしてくださいよ。
歩く時はしっかり前を見て……」
「だから何歳なのよ私は!」
もう!イクスまで!
2人とも私を心配してくれるのはありがたいけど、子ども扱いはしないで欲しいわ。
中身はあなた達より年上なんだからね!?
……って、人攫い…?
あれ……?どこかで……。
その時、また頭の中に小説の一部が入ってきた。
『フェスティバルに現れる人攫い兎のジャック』
人攫い兎のジャック……。
それだわ!!
この5日間全く思い出せなかったのに、まさかこんなタイミングで思い出すなんて!
小説の中で、過去の出来事としてチラッと書いてあったわ。
『リディアはフェスティバルで兎のジャックに誘拐された』
それが今日なの?
今日のフェスティバルでの出来事なのかしら?
私、誘拐されちゃうかもしれない!?




