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悪役令嬢に転生したはずが、主人公よりも溺愛されてるみたいです[web版]  作者: 菜々@12/15『不可ヒロ』1巻発売
本編

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32 皇子に婚約解消をお願いしたら、コーヒーこぼしてました


「リディア嬢。この度は本当によくやったぞ。

今日は思う存分食べて行ってくれ」



お呼ばれされた昼食の席で、陛下はにこやかにそう挨拶してくれた。


長いテーブルには、陛下とルイード皇子、私と兄2人の計5人しか座っていない。

しかし、目の前には膨大な量のご馳走がズラッと並んでいる。

10人分はあるのではないか。


たくさん食べているルイード皇子を見て、陛下は嬉しそうに微笑んだ。



「ルイードがこんなにも食べている姿を見たのは、子どもの時以来だな。

いやいや。これもみんなリディア嬢のおかげだ!」


「ルイード皇子が順調に回復されているようで、安心しました」



ご機嫌な陛下はエリックと楽しそうに会話をしている。


エリックの隣に座っているカイザは、会話には一切入らずにご馳走に夢中だ。

お肉を夢中でバクバク食べている。



まったく……呑気なものね。

この食事会の意味を、全くわかっていないわ。


陛下は今ご機嫌だけど、この食事会の意味はきっと婚約解消の話をするためよ!!



ルイード皇子が元気に回復したのだから、もう侯爵家と結婚する理由はない。

違う国の姫なり、力のある公爵家なり、ルイード皇子に相応しい相手はたくさんいる。



なかなかその話を切り出さないのは、陛下がお優しいからよね。

きっと私に罪悪感を感じてくださっているんだわ。

ここは、私から切り出すべきなのかしら?



どうしようか悩みながら食事を進めていると、陛下が突然私に話を振った。



「リディア嬢。なにか望んでいる事はないかね?

今回の功績の褒賞として、できるだけ叶えてやろう」



にこにこ話す陛下。

エリックやカイザも、少し誇らしげな顔で私を見た。


ルイード皇子の視線も私に向けられた。



褒賞……?

はっ!!そうか!これは私から言えっていう事ね!


わかったわ!

今は15歳の美少女だけど、心は元社会人のアラサー女。

上司からの遠回しな命令を察するくらい簡単よ!

任せて!!



私は食事をする手を止め、背筋を伸ばし、堂々たる態度で陛下に言った。



「では…私、リディア・コーディアスは…ルイード皇子との婚約解消を望みますわ」





しーーーーーーーーん。





…………ん?

あれ??

な、なんでこんなに静まり返ってるの?



あらやだ。陛下ったら…口が開いたままになってますけど?



えっ!?ルイード皇子は顔が真っ青!!

食べ過ぎて体調が悪くなったのかしら?


持ってるカップからコーヒーが溢れているけど…ちょっとメイド達!?

早く拭かなくていいの!?


……ってメイド達も石にされたのかってくらい、誰もピクリとも動かない状態で私を見てるわね??


一体みんなどうしたの!?!?



エリックとカイザは、なんとも言えないような複雑そうな顔をして、私とルイード皇子を交互に見ている。

部屋の隅に立っているイクスは肩が震えているように見えるんだけど……まさか笑ってる?



「あ、あの……」


「それは……」



真っ青な顔のルイード皇子がゆっくり立ち上がった。

皇子の前のテーブルはコーヒーでびしょ濡れだが、本人もメイド達もそれに気づいていないようだ。


皇子は可愛い顔でキッと私を見つめて、悲しそうに声をあげた。



「それは、俺の事が嫌だということでしょうか……っ」


「えぇっ!?」


「そうだぞ!!リディア嬢。

ルイードのなにが不満なのだ?」



陛下までもが納得のいかないような顔で訴えてくる。



ええー!?あれ?なんで!?

婚約解消を望んでるのは、そっちじゃないの?


なぜか王宮側の人達から非難の目で見られてるんだけど!?


ルイード皇子は捨てられた子犬みたいな顔してるし、なんなの!?

私、悪者みたいじゃない!!



「あの。ルイード皇子が嫌とか、不満とか、そういう事ではなくて……。

私は侯爵家の娘です。

お元気になったルイード皇子の妻には相応しくありませんわ。

ルイード皇子には他に、他国の姫などがお似合い……」


「そんなの関係ない!

俺の婚約者はリディアです。

他の女性と結婚など……するつもりはありません!!」



キッパリと言うルイード皇子に、メイド達から小さな歓声があがった。



ええーーーー!?

そんな事言ったって、王族なんだから!!

結婚だって政略的な色々うんぬんが必要よね!?


ね!?陛下!?



陛下の方に視線を移す。



「そうだぞ。リディア嬢。家柄なんて関係ない。

そなたは十分に立派なレディであるし、これだけルイードも望んでいるのだ。

反対などするものか」



ええええーーーー!?


陛下、お前もか!!

なんなのこの国!?色々緩くない!?


ていうか、ちょっと待って…。

婚約解消…しないの?

いや。無理無理無理。王宮に嫁ぐなんて嫌ーー!!



暴れまくる心の中は一切表情には出さず、あくまでも冷静な態度のまま話を続ける。

私、こんなにポーカーフェイスが上手かったのね。



「そう言っていただけて、本当に恐縮ですわ。

ですが、私にはやはり荷が重いのです……。

ずっとこんな悲観的な考えを持ったまま、生きたくはないのです」



少し目に涙を浮かべさせ……たいところだが、ちくしょう。涙が出てこないわ。

できるだけ悲しそうな顔でもしておこう。



美少女の悲しそうな顔はかなりポイントが高いらしく、陛下も少し戸惑っていた。

エリックも「本人がこう言っているので…」と私の味方をしてくれている。



よし!!もう少し!!



その時ルイード皇子が口を開いた。



「もう少しだけ……もう少しだけ時間をください!

あなたがそんな心配をしなくても大丈夫なように……俺がなんとかしますから!」



リディアに負けず劣らずの、ウルウル子犬戦法だぁーー!!

ただでさえ可愛いワンコ系男子なのに、瞳ウルウルで訴えてくるなんて卑怯だぞ!!


だめだ可哀想!断れない!!



みんなが私に視線を向ける。



「わ、わかりました……。もう少しだけ……」



負けた。くそぅ。

喜ぶルイード皇子やメイド達の輝かしいことよ……。



私側ときたら、隣にいる兄達からは小さなため息が聞こえてくるし、イクスからは呆れたような視線が突き刺さってくる。



あぁ…とりあえず早く帰りたい。





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― 新着の感想 ―
姉さん、お疲れっす! 「ちくしょう」というセリフがこんなに似合う見た目美少女天使、他にいないよ。
[良い点] 息子の結婚相手の家柄を気にしない王様に好感がもてる [気になる点] >陛下は今ご機嫌だけど、 >この食事会の意味はきっと婚約解消の話をするためよ!! 主人公が勘違いしているのは話の流れと…
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